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IASB、共通支配下の企業結合に関するディスカッション・ペーパーを公表  

IAS Plus 2020.11.30

2020年11月30日、IASBは、ディスカッション・ペーパーDP/2020/2「共通支配下の企業結合」を公表した。本ディスカッション・ペーパーに対するコメントは、2021年9月1日まで募集される。

2020年11月30日、国際会計基準審議会(IASB)は、ディスカッション・ペーパーDP/2020/2「共通支配下の企業結合」を公表した。当初のリサーチ・プロジェクトがその当時の金融危機のため2019年に当面の間延期された後、IASBは、2012年にこのトピックをリサーチ・プロジェクトとして再開した。本ディスカッション・ペーパーに対するコメントは、2021年9月1日まで募集される。


背景

共通支配下の企業結合は、企業結合に関する現在のIFRSの要求事項の適用から除外されている。IFRSでは、親会社の連結財務諸表及び売却元企業についての要求事項は存在するが、取得企業についてのルールは存在しない。その結果、取得企業の財務諸表の作成者は、そのような取引を会計処理するために、会計方針を策定しなければならない。方法の選択及び過去の期間についての比較情報の表示の双方について、会計方針の選択が存在する。 

実務において、適切な会計処理方法の策定の必要性は、同じ事実と状況の異なる表示をもたらす可能性がある。特にそのような取引はリストラクチャリングまたは新しい企業の創設の間、またIPOでもしばしば発生する。そのような理由のため、IASBは、長期にわたりリサーチ・プロジェクトを進めてきた。プロジェクトは、しばらく中断していたが、集中的な検討の後、公開草案の開発に進むためのプロセスである、ディスカッション・ペーパーとなった。

 

予備的見解の要約

範囲 
要求事項案は、共通支配下のすべての取引に適用されることとなる。したがって、当該取引に経済的実質があるかどうか(すなわち、純粋な資本の再構成を形成するかどうか)による違いはなくなる。 

非支配持分の存在に応じた会計処理の方法
分析を受け、IASBは、すべての取引に対する単一の方法がすべての利害関係者にとって最善ではないという予備的な結論に至った。取引を取得法を用いて会計処理しなければならない場合を決定する客観的な要件は、取得企業またはサブ・グループの場合より高いレベルに非支配持分が存在することである。そのため、簿価法は、非支配持分が存在しない場合にすべての取得企業が適用しなければならない。唯一の例外は、取得企業の株式が公開市場で取引されておらず、すべての非支配持分株主が簿価法の使用の提案を通知され、反対しないことを条件とするものである。すべての非支配持分がIAS第24号の範囲に含まれる関連当事者により所有されている場合、簿価法の使用が強制される。 

取得法の適用
取得法が適用される場合、IFRS第3号に従って適用しなければならない。ただし、移転した対価が受け取った資産及び負債の公正価値を下回る場合、当該金額は純損益に認識せず資本に認識する。

簿価法の適用
IASBは、非移転企業のIFRS帳簿価額を将来に向かって(すなわち、取得日から)適用することを提案している。資産である対価は取得企業の帳簿価額で算定し、発生する負債である対価は当初認識で適用される基準を用いて算定する。受け取った資産及び負債の帳簿価額と移転した対価の差額は、資本に認識する。取引コストは、発生した期間に純損益に認識しなければならない。これに対する唯一の例外は、追加の資本性金融商品または負債性金融商品の発行コストについてであり、IAS第32号の規定に従って認識しなければならない。

開示
取得法を適用する場合、ディスカッション・ペーパーDP/2020/1「企業結合―開示、のれん及び減損」(デロイト トーマツのWebサイト-※1)で提案されている改善を考慮した、IFRS第3号の開示要求により開示しなければならない。しかし、作成者を支援する目的でIAS第24号に関する追加の要求事項がある。

簿価法を使用して会計処理しなければならない取得については、IFRS第3号により要求される開示を基礎とする、修正された報告義務が提案される。これは、利用者が、取得の性質、財務上の影響及び便益を評価することを可能とするものでなければならない。しかし、取得日より前の財務情報を開示することは明示的に要求されない。同様に、移転した対価の公正価値は、開示または追加的に算定されない。しかし、受け取った資産及び負債の帳簿価額と移転した対価の差額として資本に認識された金額は、開示しなければならない。

ディスカッション・ペーパーに対するコメント期間は、2021年9月1日までである。

 

 さらなる情報
下記リンクをクリックしてください:

IASBのプレスリリースの日本語訳(ASBJのWebサイト)
》ディスカッション・ペーパーDP/2020/2「共通支配下の企業結合」(PDF:674KB- IASBのWebサイト-英語)
》DPを紹介するIASB Snapshot (PDF:321KB-IASBのWebサイト-英語)
》IASBの予備的見解を説明するファクト・シート(PDF:140KB-IASBのWebサイト-英語)
「IFRS in Focus-IASBが、ディスカッション・ペーパー『共通支配下の企業結合」を公表」(IAS Plus-英語版)
》IAS Plusのプロジェクト・ページ共通支配下の取引(IAS Plus-英語版)


※1》「IFRS in Focus-IASB が、ディスカッション・ペーパー『企業結合-開示、のれんおよび減損』を公表」(デロイト トーマツのWebサイト)

 

 

 

 

 

 

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