IASB、経営者による説明に関する改訂実務記述書の公開草案を公表 ブックマークが追加されました
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IASB、経営者による説明に関する改訂実務記述書の公開草案を公表
IAS Plus 2021.05.27
IASBは、2010年のIFRS実務記述書第1号「経営者による説明」を更新する取組みとして、公開草案「経営者による説明」を公表した。コメントの提出期限は、2021年11月23日である。
国際会計基準審議会(IASB)は、2010年のIFRS実務記述書第1号「経営者による説明」を更新する取組みとして、公開草案「経営者による説明」を公表した。コメントの提出期限は、2021年11月23日である。
背景
2017年3月の会議でIASBは、より幅広い企業報告(wider corporate reporting)におけるより積極的な役割を果たすべきであることに全般的に合意した。2017年11月の会議で、ボードメンバーは、財務報告の専門家として、彼らが財務情報と非財務情報の連携を提供するのに最も適切な立場であり、進める最善の方法は経営者による説明の実務記述書を改訂し、他のフレームワークに対する基準点としての果たすことができるようにすることであることを予備的に決定した。取り扱う重要な点の1つは、企業が開示する財務情報と「他の」情報との調整の促進である。
実務記述書を改訂するIASBの決定から、サステナビリティ及びESGの側面についての報告の弾みがついており、投資者及び債権者の情報ニーズは発展している。経営者による説明についてのIASBの作業とは独立して、IFRS財団の評議員会は、サステナビリティ報告についてのイニシアチブに着手しており、IFRSサステナビリティ基準を設定する審議会を設立することを現在検討している。経営者による説明についてのIASBのプロジェクトとIFRS財団のイニシアチブは、改訂実務記述書に準拠する必要がある情報を識別することに役立つように、企業が新しいサステナビリティ基準審議会により公表された基準を使用することが可能になるようにつながっている。
主要な提案
公開草案ED/2021/6「経営者による説明」は、3つのパートに分かれており、それぞれいくつかのサブセクションに分かれている。
- パートA-全般的な要求事項
本パートは、経営者による説明及び関連する財務諸表を識別し、経営者による説明を承認し、準拠の記述を含めるための要求事項を特定している。また、経営者による説明の目的を示している。主要な提案は以下のとおりである。
・経営者による説明は、関連する財務諸表を識別する。関連する財務諸表がIFRSに従って作成されていない場合、経営者による説明は、財務諸表が作成されている基礎を開示することとなる。
・本実務記述書のすべての要求事項に準拠している経営者による説明は、明示的かつ無限定の準拠の記述を含める。
・本実務記述書のいくつかの要求事項に準拠しているが、すべては準拠していない経営者による説明は、本実務記述書の要求事項からの離脱を識別する限定的な準拠の記述を含めることができ、当該離脱についての理由を提供する。
・経営者による説明の目的は、企業の財務諸表において報告される企業の財務業績及び財政状態についての投資者及び債権者の理解を促進し、長期間を含むすべての期間において、価値を創造しキャッシュ・フローを生じさせる企業の能力に影響を及ぼす可能性のある要因についての洞察を提供する情報を提供することである。
- パートB-コンテンツの領域(Areas of content)
本パートでは、経営者による説明の6つのコンテンツの領域を特定し、それぞれの内容の分野ごとに開示目的を満たす情報を適用する経営者による説明を要求している。経営者による説明は主要な事項(key matters)に焦点を当てなければならないという、要求事項も含まれている。主要な提案は以下のとおりである。
・6つのコンテンツの領域案は以下の通り
-企業の事業モデル
-企業の事業モデルを維持し開発するための経営者の戦略
-企業の資源及び関係
-企業がさらされているリスク
-企業の外部環境
-企業の財務業績及び財政状態
・コンテンツの領域に対する開示目的案は以下の通り
-コンテンツの領域に対する投資者及び債権者の全般的な情報ニーズを記述する目的の見出し
-コンテンツの領域に対して提供される情報に依存する評価を記述する目的の評価
-コンテンツの領域に対する投資者及び債権者の詳細な情報ニーズを記述する具体的な目的
・経営者による説明が焦点を当てるべきである主要な事項は以下の通り
-企業の事業モデルの主要な特徴
-経営者の戦略の主要な側面
-主要な資源及び関係
-主要なリスク
-外部環境における主要な要因及び趨勢
-財務業績及び財政状態の主要な側面
・全般的に、企業は、企業の長期的な見通しに影響を与える可能性のある項目、無形の資源及び関係、及び環境及び社会的項目を報告することとなる。
- パートC-情報の選択及び表示
本パートには、経営者による説明に含める情報の選択及び当該情報の表示についてのガイダンスが含まれる。主要な提案は以下の通り。
・経営者による説明において、情報を省略したり、誤表示したり覆い隠したりしたときに、投資者及び債権者がその経営者による説明及び関連する財務諸表に基づいて行う意思決定に影響を与えると合理的に予想し得る場合には、当該情報は重要性がある。
・重要性のある情報の識別は、経営者による判断の適用が要求される。
・項目についての情報は、当該項目の性質若しくは規模、またはその組合せのために重要性がある可能性がある。
・企業の財務業績または財政状態に未だ影響していない可能性のある将来事象についての情報は、企業の将来キャッシュ・フローの金額及び時期についての当該事象の影響の可能性により、重要性がある可能性がある。
・重要性についての判断は、各報告期間に再評価する必要がある。
・経営者による説明において提供される情報は、完全で、バランスがとれており、正確であるとともに明瞭かつ簡潔でなければならない。
・比較可能性があり、検証可能性があり、一貫性がある場合、経営者による説明における情報はより有用である。
・重要性のある情報を記述するために使用される指標は、主要な事項をモニターし、当該事項を管理する際に進捗を測定するために経営者が使用する指標から派生したものでなければならない。
本提案に対するコメント提出の期限は、2021年11月21日である。
発効日及び実務記述書のステータス
本公開草案は、本実務記述書が、その公表日以後に開始する事業年度に、IFRS実務記述書第1号「経営者による説明」に置き換わることを提案している。本実務記述書はIFRSではなく、その適用は強制されない。財務諸表に経営者による説明が付属していなくとも、または本実務記述書に準拠していない経営者による説明が付属していても、財務諸表はIFRSに準拠することが可能である。
さらなる情報
下記リンクをクリックしてください:
》IASBのプレス・リリースの日本語訳(ASBJのWebサイト-英語)
》公開草案へのアクセス(IASBのWebサイト-英語)
》結論の根拠へのアクセス(IASBのWebサイト-英語)
》IASBのSnapshotドキュメント提案の要約(IASBのWebサイト-英語)
》「IFRS in Focus — IASBは、経営者による説明に関する実務記述書の改訂を提案する」(デロイト トーマツのWebサイト)
》IAS Plusのプロジェクト・ページ経営者による説明(より幅広い企業報告)(IAS Plus-英語版)