お知らせ

『ERMは進化する ~不確実性への挑戦』の書評が中央経済社発行『旬刊 経理情報』に掲載

保険ERM

リスク管理戦略センターの後藤茂之が執筆した書籍『ERMは進化する ~不確実性への挑戦』について、日本保険学会 理事長・明治大学 商学部 教授 中林真理子氏による書評が、中央経済社発行『旬刊 経理情報(2019年2月10日増大号』に掲載されました。

書評の内容紹介

『旬刊 経理情報(2019年2月10日増大号』に紹介された書評を以下にて紹介します。

 

ERMは進化する-不確実性への挑戦

金融・保険業におけるリスク管理は、十数年前まではリスクを定量化して資本の範囲内にコントロールすることが最大の課題であったが、現在では、あらゆるリスクを対象とした全社的取組みとして戦略的に取り組まれるようになっている。本書ではこのことを、「リスク管理をマネジメントの中核に据えた統合的リスク管理(Enterprise Risk Management)は『リスクへの挑戦』を旗印に発展してきた。」と表現する。そのうえで、「不確実性の急拡大にERMの発展が追い付かず、ERMが大きな壁にぶつかっている」ことへの問題提起をしている。そして、このような次世代の課題に対して実効性を発揮できるERMへと進化させるにはマインドセットを変化させることが重要で、それは、いかに「不確実性に挑戦」できるかにかかっていると強調している。

本書における最重要なキーワードは「不確実性」である。「関連する情報、データ、経験知が十分でないため、リスク構造を十分把握するに至っていない状態」として使用され、「予想と結果の差異」であるリスクとは峻別し、「不確実性を将来の経済価値の状況」として合理的に理解し、経営判断に活用できることを「リスク化」すると定義づけている。

そして、デジタル革命と同時並行で進行するサイバー脅威と気候変動による自然災害リスクを例に、不確実性が高まるほど、過去の環境前提におけるパターンの繰り返しで将来を予測する従来の静態的なERMでは対処できなくなり、これらの前提の変化を積極的に受け入れた動態的なERMを求める変化が始まっていることを指摘する。

本書は、リスク管理の枠組みや技術的な解説書ではない。日常の企業活動のさまざまな局面で直面する不確実性に対し合理的な意思決定や行動をとるためにマインドセットを変え、「新次元のERMを構築し組織に浸透させるチャレンジのための啓蒙書」ともいえるだろう。

本書では1~4章がそれぞれ「起」「承」「転」「結」の4部構成になっている。第1章ではERMの発展の歴史を振り返る。第2章では不確実性とリスクの違いを整理し、不確実性の「リスク化」の意味を検討する。第3章では当時としては不確実性の要素が高く適切な意思決定ができなかったために発生した企業の失敗事例を検討し、適切なアプローチの糸口と対処のための視点を洗い出す。そして第4章で、これまでの整理を踏まえ、「リスクへの挑戦」から「不確実性への挑戦」に転換させるためのマインドセットの変化と、現行のERMに組み込むべきしくみについて検討する。この際、AI等の最新技術をERMのなかで活用することにも触れ、不確実性をマネージするためにわれわれの潜在能力をいかに拡大できるかにまで議論は拡がる。

本書では、リスクと不確実性について詳細な概念整理を行ったうえで、誰もが関心のある事例を用いて、わかりやすく高度な論理展開をしている。これは筆者の損害保険会社でのキャリアや現職でのコンサルとしての経験、さらに研究教育業績がなせる技ともいえるだろう。


中林真理子(明治大学商学部教授)

 

 

>『旬刊 経理情報(2019年2月10日増大号』のページを見る(外部Web)

 

『ERMは進化する ~不確実性への挑戦』の紹介

『ERMは進化する ~不確実性への挑戦』の詳細は、以下のページにて紹介しております。
 

>『ERMは進化する ~不確実性への挑戦』の詳細を見る

保険ERM態勢の高度化支援サービス

デロイト トーマツ グループでは、保険ERM態勢に関し、基礎的な情報提供から、各社固有の問題解決まで幅広く関わり、Deloitte Touche Tohmatsu Limited(DTTL)のグローバルネットワークを駆使し、最新の情報と豊富なアドバイザリーサービスを提供します。

保険ERM態勢高度化支援サービス
(ブロシュア、PDF、384KB)

保険業界における支援サービス

保険インダストリー関連サービス
(ブロシュア、PDF、212KB)

お役に立ちましたか?