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保険ERMの進化

(2015.6)

保険会社の直面するリスクに関して、規制や経営環境が刻一刻と変化しています。この変化に対応したERM(Enterprise Risk Management)の見直しと強化がより一層必要になってきています。

保険ERM構築の歴史

保険会社のリスク管理の実務も保険会社を監督する規制も、リスクの想定外の発現やリスク管理の失敗のたびに検証され、改善されてきた。
  • 保険会社は、リスクを引受けて、それを管理し、収益を生み出すことを業としている。リスクを大数の法則の下で管理するための技術 (リスク管理) は、その保険事業の本質として発展してきた。
  • しかし、昨今「リスクベース経営」や、「ERM(Enterprise Risk Management)経営」といわれるように、従来の財務健全性を重視した防御的要素が強いリスク管理から、リターンの源泉としてのリスクに着目し、経営戦略と連動させたリスク管理の論議が主流になってきた。
  • 保険取引は、保険契約者と保険会社との間での直接のキャッシュフロー取引であるため、各国の保険市場単位で規制とビジネスプラクティスが発展してきた。その結果、各国単位の規制・監督が中心で、銀行におけるバーゼルのような財務健全性を判断する国際基準はこれまで存在しなかった。 
  • 保険会社のグローバル展開が活発化する中で、効果的でグローバルに整合的な保険監督を促進することを目的として、1994年に保険監督者国際機構(IAIS:International Association of Insurance Supervisors)が設立された。金融危機においては、一部の保険会社によって引き受けられた非伝統的保険リスク(実質金融リスク)が本危機発生に直接関与したこともあり、金融システム安定化に係る規制改革の動きとも連動する形で、保険ERMが論議されている。 

規制の変化とリスクポートフォリオを踏まえた検討

直近の監督規制の変化と保険ERM構築

直近の監督規制の変化を踏まえて、保険ERMが検討されている。

金融危機後の変化
  • 従来の「後追い的」規制強化対応(金融機関の手足を縛る ex. 資本規制の強化等)の反省
  • 今後生じうる新たなタイプのリスクへの対応の模索=金融機関がリスクを取るインセンティブ(意欲: Risk Appetite:RA)への対応、金融機関の行動を踏まえた対応(好ましいリスク文化とそれを逸脱した場合のコンダクト・リスク管理の重視)
リスクアペタイト・フレームワーク (RAF)の構造
  • リスクアペタイトが構築・伝達・モニタリングされる体系全体をRAFと呼んでいる。金融危機後の監督規制の変化を踏まえると、下図の特徴が読み取れる。

     

RAF(Risk Appetite Framework)の構造

フォワードルッキングなリスク評価と検討

保険ERM態勢高度化支援サービス

デロイト トーマツ グループでは、保険ERM態勢に関し、基礎的な情報提供から、各社固有の問題解決まで幅広く関わり、Deloitte Touche Tohmatsu Limited(DTTL)のグローバルネットワークを駆使し、最新の情報と豊富なアドバイザリーサービスを提供します。

保険ERM態勢高度化支援サービス
(ブロシュア、PDF、384KB)

保険業界における支援サービス

保険セクター関連サービス
(ブロシュア、PDF、316KB)

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