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保険ERMとグローバルな金融環境変化への対応

「グローバルリスクマネジメントサーベイ第9版」より(2015.10)

金融危機以降、金融サービス業界全体において、規制要件の範囲が拡大し、その内容が厳格なものとなっています。そしてまた、保険ERMも即応する必要があります。

【ニューノーマル(=規制が絶え間なく変化し、期待される水準がますます高くなる環境)の直面】

デロイトのファイナンシャル・サービス・インダストリーグループは、2014年下半期にサーベイを実施し、その結果をまとめた。
そして、保険ERMに関する項目を列挙すると次のとおりである。

● 取締役会がリスクマネジメントをより重視

● CRO職位の導入の広がり

・最高リスク責任者(CRO)の職位は、個のグローバルリスクマネジメントサーベイの回を重ねるうちに、一般的な存在と言えるまでになった
・CROを取締役会の直属とすることがリーディングプラクティスとみなされているものの、これが当てはまるとした回答者は46%にとどまり、CROがCEOの直属となっているとする回答が68%を占めた

●ERMが標準的な実務になりつつあること

・大規模な金融機関においてはエンタープライズリスクマネジメント(ERM)プログラムを設置することが規制上の期待となっている

●コンダクトリスクとリスクカルチャー

・コンダクトリスクを管理し、従業員に倫理的な実務の遵守と適切な水準のリスクの引き受けを促すリスクカルチャーを構築するために金融機関が講じることのできる措置に対する注目が高まっている

●規制要件の重要性の高まりとコストの増大

・今後2年間で自社にとっての重要性が最も高まると思われるリスクの種類はどれかを尋ねたところ、上位3位に挙げられることが最も多かったのが規制/コンプライアンスリスクであり、79%は規制上の要求と期待の増大が最大の課題と考えている

●リスクデータおよびテクノロジーシステム

・2014年の調査結果も、リスクデータおよび情報システムの継続的改善の必要性を示している。回答者の62%は、リスク情報システムおよび技術インフラが極めて困難、またはかなり困難な問題を抱えていると答えた

(PDF76ページ、1,548KB)

【保険規制改革対応コストの増大とグループ規制の強化】

デロイトの分析によれば、欧州の保険業界は2012年から2015年に段階的に導入された新たな規則を遵守するために、2012年に57億~66億ドルを費やしており、その前の2年間においても同様の額が費やされている。欧州の保険会社にとって、こうしたコストは、株主資本利益率(ROE)に対する1.01%の影響に等しい金額に上る。
欧州における規制が連結グループベースで保険会社を規制するのに対し、米国の保険規制は各州の管轄となっており、各州がその州内で事業を行う法的主体を規制している。そのような中で現在、米国やその他地域において、グループベースの監督を増やそうとする動きがある。
米FRBはシステム上重要である保険会社3社を指定し、FRBとNAICは、保険グループの資本基準に係るアプローチを検討している。
グループベースの監督に向けた動きに加え、規制当局は保険会社に対し、バランスシート全体からリスクを把握して、全体的に全てのリスクを評価するERMプログラムの導入も要求している。
(事業的なグローバルリスクマネジメントサーベイ第9版参照)

【国際的規制動向を踏まえた着実なERM整備】

デロイトのサーベイ結果が示すとおり、金融危機以降の保険規制は従来にもまして各セクター共通のグローバル規制の方向性に沿って、保険の特性を踏まえた対応を要請している。
統合的リスク管理(ERM)は、保険経営管理のコアを構成するツールとして、その効果発揮を期待されている。そして、期待される水準がますます高くなるニューノーマルにおいて、計画的で着実なERMの高度化を実現していく必要がある。

 

「グローバルリスクマネジメントサーベイ第9版-ニューノーマルの中での事業経営:増大する規制と高まる期待」

英語原文:Global risk management survey, ninth edition - Operating in the new normal: Increased regulation and heightened expectations (PDF)

体系的な保険ERM

ニューノーマルに的確に対応するためには、保険ERMの本質と要請されている環境についての適切な理解が不可欠になっている。
金融危機以降の保険規制論議は、契約者保護を主眼にしたミクロプルーデンスに加え、金融システムの安定化に関するマクロプルーデンスの視点が色濃く反映されている。最近の保険ERMを巡る環境は、上記のとおり整理される。

保険ERM態勢高度化支援サービス

デロイト トーマツ グループでは、保険ERM態勢に関し、基礎的な情報提供から、各社固有の問題解決まで幅広く関わり、Deloitte Touche Tohmatsu Limited(DTTL)のグローバルネットワークを駆使し、最新の情報と豊富なアドバイザリーサービスを提供します。

保険ERM態勢高度化支援サービス
(ブロシュア、PDF、384KB)

保険業界における支援サービス

保険セクター関連サービス
(ブロシュア、PDF、316KB)

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