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保険規制の一環としてORSAがはじまります

各国で始まったリスク及びソルベンシーの自己評価(2015.7)

各国で始まったリスク及びソルベンシーの自己評価(ORSA:Own Risk and Solvency Assessment)の導入が、日本でも始まります。

日本でもORSAが導入される

リスク及びソルベンシーの自己評価(ORSA:Own Risk and Solvency Assessment)の導入が各国で始まる。

ORSAは、たとえば欧州ソルベンシ-Ⅱの中の3つの柱の内、第2の柱に位置づけられている。ちなみに、第1の柱は、規制資本である。規制資本が、将来1年後を想定した時の必要資本であるのに対し、ORSAでは、今後3~5年という中期的視点で分析することが求められている点にも特徴がある。
銀行規制においても同様の枠組みがあり、バーゼルⅡの第2の柱には、ICAAP(Internal Capital Adequacy Assessment Process)があり、類似の枠組みとなっている。

ORSAは自己規律だが、実施は規制で強制されている

  • ORSAは、保険会社がリスクと資本等を比較し、資本十分性の評価を自らが行うとともに、リスクテイク戦略等の妥当性を総合的に検証するプロセスである。規制でも、ORSA態勢整備が求められ、監督当局のガイドラインに従った報告書の提出が要求されている。
  • 欧州では、2009年9月に採択されたソルベンシー枠組指令45条において、ORSAの実施が規定された。欧州ソルベンシーⅡは、2016年1月より導入される。
  • 米国では、2012年9月にORSAモデル法が全米保険監督当局協会(National Association of Insurance Commissioners, NAIC)により制定され、ORSA報告書の作成のためのORSAガイダンス・マニュアル最終版が2013年3月に公表された。2015年から適用されている。現在、各州の採択手続きの過程にある。
  • 日本では、2012年9月にERMヒアリング結果が公表され、2014年保険会社向け総合的な監督指針の改定にはORSAに関する規定が持ち込まれた。金融庁はORSAに関するプロセスを文書化し、監督当局に報告する制度の導入が今年度実施される予定である。
  • 国際監督者国際機構(International Association of Insurance Supervisors, IAIS)は、2003年に保険の監督規制に係る保険基本原則(Insurance Core Principle, ICP)を定め、2011年10月に全面的に改訂した。現在もICPの改訂が検討されており、最終的に2019年に導入予定である。このICPはIMF等による金融セクター評価プログラム(Financial Sector Assessment Program, FSAP)の評価基準として使用されており、FSAPは、G20首脳会合で合意されたプログラムとして拘束力がある。ICPにおけるORSAの規定は、次の通りである。

ORSAは、国際的に評価基準として使用される枠組である

ERMとORSAは密接な関係にあり、保険経営の重要なツールとなっている

必ずしも両者を厳密に区別して定義したものはない。しかし、ERM(Enterprise Risk Management)とORSA(ソルベンシーの自己評価:Own Risk and Solvency Assessment)で対象とする領域は、基本的には同じである。ERMは戦略や経営目標達成(企業価値向上)との関係で使われることが多いのに対し、ORSAは、リスクと資本の健全性を意識して使われることが多い、と整理しておくことができよう。

(参考) ORSAの実施における留意点

  • ORSAは経営陣が実施し、管轄当局にもそのレポートが提出されるものである。従って、当局に提出するレポートが対象とする事業ポートフォリオによって、3類型程度に分類されよう:

  1. グローバル・グループORSA
  2. ローカル・グループORSA
  3. ローカル・エンティティーORSA 

  • ポートフォリオが異なれば、統合リスク量計測における分散効果や、対応する資本の範囲も異なる。有限責任監査法人トーマツ後藤茂之ディレクターがモデレートしたリスクジャパン2015(2015年6月11日開催)のインシュランス・パネルで出た事柄を一つの参考として挙げておきたい。
  • グローバルとローカルではその対象の粒度や立ち位置が違うため、レポートの内容も違ってくる。当局の考え方は、各国の保険市場の事情があるものの目線は同じである。ローカルの情報がグローバルORSAにどのように反映されるのかを意識しつつ、子会社あるいは支店でまとめる際にグローバル本社とも調整しながら対応している。
  • 細部に至ると個別の地域のアサンプションとグローバル・モデルのアサンプションとをどう調整するのか、方向性は同じになっているが、細部の調整はさらに進めていく必要がある。
  • 保険事業には、各地域のビジネスモデル、リスク、保険契約者の行動、各国の規制が反映されるので、ローカルORSAには、それぞれの地域の特性が反映されている。
  • ORSAのOwnは、Risk、Solvency、及び、Assessmentのそれぞれに掛かっている。リスクはもとより多面的であり標準化されるものではない。各社のリスクプロファイルが異なるため、ORSAの内容も異なるものとなる。

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(ブロシュア、PDF、384KB)

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