【保険ERM】 機動的な保険会社-事業環境の変化への対応- ブックマークが追加されました
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【保険ERM】 機動的な保険会社-事業環境の変化への対応-
The nimble insurer(2017.06)
経営環境に不確実性が高まれば高まる程、ERMの強化が必要です。 ERM強化の視点は多々ありますが、機動性の向上も重要な要素といえます。リスクを早く特定し、先んじて戦略を打つことにより、リスクポートフォリオ自体を機動的に変えていく必要があります。
<機動性向上の必要性>
- 環境激変下、各保険会社が持続可能な収入や利益の成長のための方策を探し求めている中で、より迅速に市場の変化を捉え機動的にポートフォリオ管理を実施する必要性が高まっている。
- ポートフォリオ理論に従うならば、リスク・リターンの変化に応じ、ポートフォリオを改善する資本配賦の変更、すなわち特定の領域の資源を削減してある領域へ資源を集中するといった戦略的意思決定のスピードアップが考えられる。
- このような戦略の推進が可能となるよう内部モデルの構築を進めてきた保険会社ではあるが、今後は、環境変化のスピードと意思決定・行動のスピードの整合性を図り実践のステージに移ってきたものと考える。
<企業価値とリスクポートフォリオ>
- 変化の速い環境下において企業価値を高めるためには、前述した粒度の細かいスピーディなポートフォリオマネジメントが要求される。
- また、リスク・リターンの変化を戦略に反映しうるためには、戦略推進能力が要求される。例えば、戦略論のポジショニング理論における、「どこでプレーすべきか」「どのように勝利すべきか」を明確にする能力である。加えて、当該戦略を迅速に実行に移す組織態勢が必要である。
<課題の認識>
- 多様な危険を取り扱う損害保険会社の現行ビジネスモデルをレビューすると、顧客層や商品種目、地域によって分割された複数事業部制から成る分散型構造の特徴を有している。
- この構造は、個別危険に焦点をあて深く対応していくための利点はあるが、変化に対して機動的に対応していく際には縦割り型の業務構造が持つ部門横断的協力や全社的な柔軟性を妨げる恐れを内在している。リスク面を抽出すると、下図のような特徴を持っている。
<柔軟性確保のための検討>
ビジネスモデルの柔軟性を検討するにあたって、他業界やスペシャルティ保険の例に見られる下記の事例は参考になるだろう。
- 流行に大きく左右されるファッション小売業において、顧客の好みやうわさ(buzz)に着目するオポチュニティ・プル型のコミュニケーションを実施している事例
- 自動車業界が顧客の選好に対応するため、組立ラインに柔軟性を導入することにより、従来の非効率を改善した事例
- スペシャリティ保険が、会社内の「スタートアップ」ベンチャーに資金投入する仕組みを導入して、特定の市場の変化による収益性のセグメント分析によりセグメント選択の意思決定を迅速にする工夫をしている事例
<柔軟性に関する枠組み>
デロイト トーマツ グループでは、損害保険会社が変革を成し遂げて機動性を向上させるために、重視すべき5つの要素を抽出して下図の通り整理している。
詳細は、レポート「機動的な保険会社―市場機会を捉えるための組織の柔軟性を高める」を参照。
原題 : The nimble insurer (PDF)
<ERMにおける留意点>
不確実性の高まりはERMの実効性を要求する。外的ハザードと内的ハザードへの対応を強化しなければならない。
- 外的ハザードとしては、例えば、デジタルを中心とした技術革新や気候変動の影響、人口動態の変化等、保険会社をめぐる不確実性の高まりの把握とその影響の評価の強化を意味する。内的ハザードとしては、例えば、今回提示しているような、外的要因によるビジネスモデルへの影響に対する迅速な対応力への障害があてはまる。
- 各国の監督当局も保険会社のビジネスモデルの的確性を、動態的モニタリングの対象として重視している。
- 保険会社にとっては、変化への対応の遅れが企業価値を毀損させる。その原因が構造的なものであればある程、その影響は足元にとどまらず、中期的な競争力に影響するものとなる。
保険ERM態勢の高度化支援サービス
デロイト トーマツ グループでは、保険ERM態勢に関し、基礎的な情報提供から、各社固有の問題解決まで幅広く関わり、Deloitte Touche Tohmatsu Limited(DTTL)のグローバルネットワークを駆使し、最新の情報と豊富なアドバイザリーサービスを提供します。
保険ERM態勢高度化支援サービス
(ブロシュア、PDF、384KB)