調査レポート

企業不祥事における内部通報制度の実効性に関する調査報告書

消費者庁からの委託を受けて内部通報制度の実効的な運用を阻害する要因を整理・分析

本調査報告書は、DT弁護士法人が、消費者庁の委託を受け、近年の企業不祥事に関する調査報告書を収集し、内部通報制度の実効的な運用を阻害する要因を整理・分析し、事業者に対する提言をまとめたものです。

調査の背景・目的

公益通報者保護法やコーポレートガバナンス・コード等により、企業は内部通報に係る適切な体制整備を行うよう要請されています。事業者による実効性ある内部通報制度の整備および運用は、公益通報者の保護の徹底と法令遵守の推進を通じて、従業員の組織に対する信頼および満足度の向上に寄与し、人的資本経営の推進にも資するものであり、組織の自浄作用の向上を通じて企業価値の毀損の回避に寄与し、ステークホルダーや国民からの信頼の獲得にも資するものです。

他方で、近年の不祥事に関する各事業者の第三者委員会調査報告書では、内部通報制度がその役割を十分に発揮せず、不祥事事案の発見が遅れ、違法行為の継続・拡大と、これに伴う企業価値の毀損やステークホルダーへの負の影響の増大をもたらしている例が散見されています。こうした事例において内部通報制度がその役割を十分に発揮できなかった原因を把握・分析することは、内部通報制度を含めた内部統制のあり方を検証しその機能の確保・向上を図る上で有用な視座をもたらすと期待されます。他方で、これまで内部通報制度の実効性という視点から第三者委員会調査報告書を網羅的に整理・分析した調査・研究は見当たりませんでした。

そこで、2024年1月、消費者庁の委託を受けたデロイト トーマツ グループのDT弁護士法人が、近年の企業不祥事に関する調査報告書を収集し、内部通報制度の実効的な運用を阻害する要因を整理・分析し、事業者に対する提言を行うことを目的とした本調査報告書を作成し、この度公表しました。

調査・分析のアプローチ

2019年以降に公表された不祥事に関する調査報告書 265 本を収集・分析し、内部通報制度の実効的な運用にあたって主要な課題であると考えられる項目(主要課題項目)を設定し、分析対象の調査報告書 41 本を絞り込みました。

① オンラインで公開されている調査報告の収集

② 内部通報制度に関する問題点の指摘のある調査報告書の選定

③ 主要課題項目の設定

  • 適切に不正が発見されていない
  • 窓口への通報を阻害する要因がある
  • 通報後の対応に問題がある
  • 内部通報性体制の評価・見直しが十分でない

④ 分析対象の調査報告の絞り込み

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調査結果の概要

抽出した報告書の分析により、以下4つの主要課題項目と7つの主な指摘事項に分類し、発見事項・課題を整理した上、それぞれに対する提言を取りまとめました。

主要課題項目

主要指摘事項

適切に不正が発見されていない

規範意識の鈍麻

窓口への通報を阻害する要因がある

内部通報制度の窓口の問題

内部通報制度に対する認識の欠如

通報を妨げる心理的な要因

通報後の対応に問題がある

通報後の不適切な対応

内部通報体制の評価・見直しが十分でない

定期的な評価・点検が不十分

調査報告書における内部通報制度への言及の不足

 

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<本調査・分析業務の報告書>

■企業不祥事における内部通報制度の実効性に関する調査・分析業務調査報告書(右よりダウンロードできます)

■消費者庁のウェブサイトにも詳しい情報が掲載されています。

調査・研究「国内調査」
「企業不祥事における内部通報制度の実効性に関する調査・分析-不正の早期発見・是正に向けた経営トップに対する提言」(PDF)

(PDF, 1.4MB)

終わりに

内部通報制度は、不祥事の早期発見と対処を可能とすると共に、役職員が不祥事に及ぶことを思い留まらせることを通じて、企業の法令遵守および企業価値の向上にも貢献します。また、不幸にして重大な不祥事が発生し、役員の責任が問題視された場合において、平時から役員が適切な内部統制を構築していたと判断される上での考慮要素ともなり得ます。

本調査報告書の結果を踏まえ、こうした内部通報制度の意義と役割が我が国の事業者によって再認識され、内部通報制度の整備・運用状況の点検・見直しと、制度の機能発揮へ向けた取組が推進されていくことが期待されます。

本調査研究に関するお問合せ先

DT弁護士法人

浜田 宰 パートナー

大滝 則和 マネージングディレクター

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