調査レポート

諸外国における児童手当の実施状況に関する調査研究報告

本調査研究は、子ども・子育て支援法及び児童手当法の一部を改正する法律における児童手当の在り方の検討規定に資するため、調査対象国12か国(日本、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデン、イタリア、スペイン、アメリカ、カナダ、中国、韓国、シンガポール)の児童手当及び子育てに関する税制度等を調査し、報告書を作成した。 *本調査研究は、内閣府令和4年度子ども・子育て支援調査研究事業として実施した。

調査研究の背景及び目的

【背景】

令和3年の出生数は84万2897人(6年連続過去最少を記録)、合計特殊出生率は1.34で少子化に歯止めがかからない状況である。国は『少子化社会対策大綱』(令和2年5月閣議決定)において、基本的な目標として「希望出生率1.8」の実現を掲げ、そのための具体的な道筋として、多子世帯への支援を含む経済的支援等、ライフステージに応じた総合的な少子化対策に大胆に取り組むこととしている。その一つに、「児童手当の支給・在り方の検討」の支援があり、児童手当について、多子世帯や子どもの年齢に応じた給付の拡充・重点化の必要性等が明記されている。また、子ども・子育て支援法及び児童手当法の一部を改正する法律において、「政府は、子ども・子育て支援に関する施策の実施状況等を踏まえ、少子化の進展への対処に寄与する観点から、児童手当の支給を受ける者の児童の数等に応じた児童手当の効果的な支給及びその財源の在り方並びに児童手当の支給要件の在り方について検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとする。」との検討規定が置かれている。

【目的】

子ども・子育て支援法及び児童手当法の一部を改正する法律における児童手当の在り方の検討規定に資するよう、諸外国の児童手当や類似関連制度(税制含む)の実施状況(対象者数、予算、支給要件等)について調査することを目的とした。

 

調査研究の内容

【調査方法】

調査対象国の行政の公開情報や学術論文、公的資料等の文献調査を行った。

【主な調査項目】

①基礎情報(社会保障等)、②児童手当、③子育てに関する税制度(扶養控除等の税制度等)とした。

【調査対象国】

計12か国(日本、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデン、イタリア、スペイン、アメリカ、カナダ、中国、韓国、シンガポール)

【調査研究委員会の開催】

本調査研究を実施するにあたり、有識者からなる調査研究委員会を設置し、計3回開催した。調査研究委員会では、有識者から調査研究計画、調査対象国の調査、報告書のまとめ等において専門的助言を得て、文献調査結果のとりまとめ及び調査研究報告書を作成した。

 

調査研究の結果

【児童手当の導入状況】

調査対象国12か国の内、日本、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデン、イタリア、スペイン、カナダ、韓国、シンガポールの計10か国が児童手当に相当する制度を導入していた。児童手当に相当する制度は、イギリスはChild Benefit、フランスはFamily Allowance、ドイツはChild Benefit、スウェーデンはChild Allowance、イタリアはSingle Universal Allowance for Dependent Children、カナダはCanada Child Benefit、韓国はChild Benefit、シンガがポールはBaby Bonus Schemeのキャッシュギフトであった。

 

調査研究のまとめ

【児童手当の支給の詳細】

児童手当は制度の目的・背景に加え、他の子育て支援や税制度との関連もあるため各国の比較は一概にはできないことに留意する必要があるが、児童手当を導入している国では、受給資格者及び子の年齢・範囲に該当した場合に支給され、子の数や年齢により加算、あるいは、受給資格者の所得で受給の可否または減額となることがわかった。

子の年齢・範囲

フランスを除く9か国は支給要件に子の数の条件はなく、各国が定める年齢・範囲に該当する第一子以降の全ての子を対象としている。フランスのみ第二子以降と定めている。児童手当の支給の年齢は下記のとおりである。

  • 月齢18か月以下:シンガポールが該当する。シンガポールは、児童手当の総額が定められており、月齢18か月以下で分割払いである。
  • 8歳未満:韓国が該当する。
  • 16歳未満(15歳に達する日以後の最初の3月31日までも含む):日本、イギリス、スウェーデンが該当し、この内、イギリス、スウェーデンは16歳以上(一定の条件を満たす場合)も支給対象となる。
  • 18歳未満:ドイツ、スペイン、イタリア、カナダが該当し、この内、ドイツ、イタリアは18歳以上(一定の条件を満たす場合)も支給対象となる。
 所得制限
  • 所得制限なし
    ドイツ、イタリア、スウェーデン、韓国、シンガポールが該当し、受給資格者における所得制限を設けず、子の年齢・範囲に該当する者に、国で定めている一定の支給額を給付している。
  • 所得制限あり
    - 所得に応じた支給額の減額:日本、イギリス、フランス、カナダが該当し、一定の基準以上の所得がある場合、児童手当の支給額が減額となる。
    - 所得に応じた支給の停止:日本、イギリス、スペイン、カナダが該当し、一定の基準以上の所得がある場合、児童手当の支給が停止(日本の場合は、受給資格が消滅)となる。
児童手当の支給額の加算
  • 多子加算:日本、フランス、イタリア、スウェーデン、シンガポールが該当する。スウェーデンが第二子以降、残りの4か国が第三子以降で加算となる。
  • 乳児加算:日本、スペイン、カナダが該当する。

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※上記の部署・内容は、掲載日時点のものとなります。2023/04

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