調査レポート

児童相談所における要保護児童等の援助事例の実態に関する調査研究

有限責任監査法人トーマツは、厚生労働省令和4年度 子ども・子育て支援推進調査研究事業の採択を受け「児童相談所における要保護児童等の援助事例の実態に関する調査研究」を実施しました。この事業では、アンケート調査及びヒアリング調査等の活動や有識者による委員会での検討を経て、事業報告書を作成しました。

調査研究事業の背景・目的

本事業は、重大事案の発生を未然に防ぐために有効なリスク評価のあり方、重大事案が発生した際の対応等に関する示唆を得ることを目的として、主に2つの観点から児童虐待事例への児童相談所の対応実態について調査しました。①児童相談所が対応した児童虐待事例の背景にある「虐待に至る要因」を把握・整理する、②児童相談所の対応内容(児童虐待に至る要因や当該ケースにおけるストレングスをもとにしながら児童相談所が行った対応内容)について把握・整理する、の2点です。なお、本事業のアンケート調査は、「身体的虐待」事例、及び、「ネグレクトのうち保護者以外の者による虐待(身体的虐待)の放置」事例に焦点を当てています。

 

調査研究事業の内容

本事業においては、①検討委員会の設置・開催、②アンケート調査、③補足的ヒアリング、④報告書の作成といった4つの活動を行いました。

アンケート調査は、全国の児童相談所に回答を依頼して実施しました(回答率58.3%)。アンケート調査は、「〈1〉回答者及び施設情報」、「〈2〉援助事例数調査パート」、「〈3〉ケースワーク調査パート」の3つのパートからなり、「〈2〉援助事例数調査パート」では、当事業で調査対象とする児童虐待事案のアウトラインを理解するための質問を設けました。また、「〈3〉ケースワーク調査パート」では、調査票にて提示した条件にあてはまる援助事例について、実施した対応(ケースワーク)を詳細に訊ねる質問を設けました。

 

まとめ

本事業においては、アンケート調査と補足的なヒアリング調査を行うことで、児童相談所が対応した児童虐待事例の背景にある「虐待に至る要因」を把握・整理しつつ、また、児童虐待に至る要因や当該ケースにおけるストレングスをもとにしながら児童相談所が行った対応内容についても把握・整理しました。

アンケート調査においては、特に児童虐待事例(ケース)におけるリスク要因やストレングスに焦点を当て、それらの特徴や関係性を調べ、児童相談所の介入により死亡等の重大な結果を防ぐことができる鍵として、リスク要因やストレングスに与える影響、延いては、ケースの変化に与える影響はどのようなものかを探りつつ、児童相談所の職員(児童福祉司等)による対応が児童虐待事例(ケース)の変化に対してどのような影響を与えたかを分析しました。

その結果として、児童虐待事案の発生に影響を与えるものとして、リスク要因とストレングスを捉えつつ、児童福祉司等による援助実践(ソーシャルワーク)がリスク要因やストレングスに影響を与え、それによってケースの状況も変化するものとして整理しました。

執筆

有限責任監査法人トーマツ
リスクアドバイザリー事業本部  ヘルスケア 

※上記の部署・内容は、掲載日時点のものとなります。2023/04

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