事例紹介

医師事務作業補助者の活躍を推進する人事評価制度とは

医師事務作業補助者のモチベーション向上とスキルアップを実現した評価制度の事例紹介

2024年4月の「医師の働き方改革」施行に向け、医師事務作業補助者の有効性が注目されています。医師事務作業補助者の有効活用にあたり課題を抱える医療機関が多い中、本記事では、人事評価制度の導入により、モチベーション向上とスキルアップを実現し、医師のタスク・シフトを推進した医療機関の事例を紹介します。

医師の事務作業負担の軽減に医師事務作業補助者が有効

医師の業務負担の軽減に向けて、医師事務作業補助者の活用が注目されています。

厚生労働省が実施した調査(※1)によると、医師は電子カルテ記載や文書作成、予約、物品搬送などの事務作業に一定の時間を費やしていることが報告されています。

これらの事務作業の負担軽減には、医師事務作業補助者が有効との意見があり、日本医師事務作業補助研究会が実施した調査(※2)では、医師事務作業補助者の配置により、事務作業負担が「良くなった」96.9%、精神的負担が「良くなった」72.7%との報告があります。

さらに、医師事務作業補助体制加算の点数が年々増加していることから、診療報酬上でも医師事務作業補助者の有効性が評価されており、今後ますますその重要性が高まることが予想されます。

 

※1 医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査(平成29年4月)
※2 タスク・シフティング推進に関するヒアリング(平成31年6月)

 

期待が高まる医師事務作業補助者だが、その有効活用には課題が山積

医師事務作業補助者の有効活用を推進するには、一定のスキルを有する医師事務作業補助者を確保・育成することが必要となります。

しかし、医師事務作業補助者の確保・育成には以下のような課題があり、多くの医療機関で「有効活用が思うように進まない」との声が聞かれます。

医師事務作業補助者の有効活用を進めるには、その土台作りとして、これらの課題解決にも同時に取り組むことが求められます。

<医師事務作業補助者の有効活用に向けた課題(例)>

  • 定着率が低い(離職率が高い)
  • スキルに偏りがある
  • 教育体制が不十分
  • 努力しても評価されない
  • 給料が低い/上がらない
  • モチベーションが維持できない
  • 目標やキャリアパスが不明確 …等

 

医師事務作業補助者の課題解決に「人事評価制度の導入」が効果あり

当法人が支援したある医療機関では、医師事務作業補助者に特化した人事評価制度を導入することで、これらの課題解決を実現しました。

当該医療機関では、医師事務作業補助者の離職率が高く、一定のスキルを有する医師事務作業補助者を確保することが困難な状況でした。そのため、医師事務作業補助者のモチベーション向上と定着を目的に、医師事務作業補助者に特化した人事評価制度を導入しました。

この人事評価制度は、医師事務作業補助者に求められる電子カルテ操作や文書作成等の実務面のスキルを定量的に評価するだけでなく、コミュニケーション力や接遇等のソフトスキルも定性的に評価するものとしました。

人事評価制度の導入により、昇給や昇格の基準が明確になり、多くの医師事務作業補助者が自己研鑽に励み、スキルアップにつながるトレーニングや研修を受けるモチベーションが大きく高まりました。

具体的な導入の成果として、医師事務作業補助者の実施可能な業務が大幅に増加し、医師のタスク・シフトが推進されました。また、資格取得者数が1.5倍に増加し、離職率も導入初年度から減少する等の成果が見られました。

実際に評価を受けた医師事務作業補助者からは、「自分のスキルを振り返ることができ、何ができていないかを知ることができた」「自分の業務が認められていることが分かり、さらにステップアップしたいと思えた」「評価してもらえることで、次も頑張ろうと思えた」などの感想がありました。

 

おわりに

医師の事務作業負担を軽減するために、医師事務作業補助者の有効活用が注目されています。

今回は、人事評価制度の導入により、医師事務作業補助者のスキルアップに対するモチベーション向上や離職率の減少を実現した医療機関の事例をご紹介しました。

こうした医師事務作業補助者に係る課題解決は、医師のタスク・シフトを推進するだけでなく、「医師事務作業補助体制加算1」の施設基準の一つである「3年以上の勤務経験を有する医師事務作業補助者5割以上の配置」を持続的に満たし、安定的な病院経営にもつながる取り組みであると考えられます。

2024年4月の医師の働き方改革の施行に向け、今後、医師事務作業補助者の獲得競争がさらに激化することも想定されます。

これを機に、医師事務作業補助者の人事評価制度を導入し、医師のタスク・シフト推進の原動力とすることを検討してみてはいかがでしょうか。

執筆

有限責任監査法人トーマツ
リスクアドバイザリー事業本部  ヘルスケア 

※上記の部署・内容は、掲載日時点のものとなります。2023/04

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