【連載企画】教えて!デロイトさん!(第6回) ブックマークが追加されました
ナレッジ
【連載企画】教えて!デロイトさん!(第6回)
医療機関の組織・人事・労務について、デロイトさんが皆さんの疑問にお答えします。
これから1年間にわたって、組織・人事・労務の専門家であるデロイトさんが、日ごろ皆さまが業務に携わる中で生じる疑問に対して、Q&A形式でお答えしていきます。テーマは、多くの医療機関が着手されている「医師の働き方改革」についてです。是非ともご一読ください。
働き方改革と医師の人事評価制度
相談者:
私は、地方都市の急性期病院の事務長です。当院では昨年度より医師の働き方改革に着手しております。病院長から働き方改革に着手するトップメッセージが発せられ、また、院内でワーキンググループを組成し改革に向けて日々検討や取組みの実施を行っています。今回、ご相談をさせて頂きたい事項は、働き方改革を推進しつつ病院経営も成り立たせるために医師の人事評価制度を導入したいと考えているので、制度を検討するにあたっての考え方や留意点を教えてください。
デロイトさん:
ご相談ありがとうございます。医師の時間外労働の上限規制適用を間近に控えた最近では、医師の人事評価制度の導入や業績評価の在り方についてご相談頂くケースが増えています。
時間外労働時間の削減によって診療の量が減少し、それが病院収益の減少にも繋がれば、病院の安定的な経営や職員の処遇にも大きく影響します。働き方改革への対応によって病院の業績や処遇の悪化を招かないようにするためには、より生産性を高めた病院経営上必要な診療の量の実現が必要です。
この点から、働き方改革への対応と併せて医師の生産性や業績意識に繋がる人事評価制度の導入は有効な手段の一つと考えられます。
相談者:
ありがとうございます。では、医師の人事評価の考え方や検討方法について具体的に教えて頂けますか。
医師の人事評価制度設計上の留意点
デロイトさん:
評価制度の構築にあたっては、大きく3点あり、①損益・業績の評価は診療科の特性を踏まえる、②損益・業績面以外の貢献の評価、③医師のコンセンサスに留意する必要があります。順を追って説明していきます。
①損益・業績の評価は診療科の特性を踏まえる
一つ目のポイントは、診療科の特性を踏まえた指標にしなければならないということです。業績評価は病院経営上必要な診療目標を各科で設定し、実績数値や達成度を評価するものです。評価指標は、一般的なものでは入院・外来患者数や手術件数などの診療実績や医業収益(売上)が挙げられます。一歩踏み込んだものでは科別損益を適用しているケースもあります。
ここで留意しないといけないのは、診療科の特性や異なる病院への貢献(役割)を適切に評価に反映することですね。例えば、麻酔科や放射線科、病理診断科等の他科の診療の支援を主な役割とする診療科や、小児科・産婦人科など地域(政策)医療の側面が強い診療科を同じ指標で同じ様に測ることは出来ませんよね。診療科の特性を踏まえた評価指標や評価ウェイト等を設定し、診療科間で評価の不公平が生じないように留意する必要があります。
②損益・業績面以外の貢献の評価(行動評価)
二つ目のポイントは、病院運営など、色々な貢献に対する評価です。患者さんに対してとても親切に対応していたり、医師以外の職種への対応も丁寧な先生方もいますよね。評価が業績や損益に偏ってしまうと、医師からは本来求められる診療の質や患者への対応、チーム医療・連携について、病院が重視していないと誤解を与えてしまい、そのような先生方のモチベーションを低下させてしまうことがあります。そこで、業績や損益等の成果の評価だけではなく、病院が医師に求めたい行動や意識、役割遂行を評価し、医師の多様な病院貢献を見る仕組みにする必要があります。また、評価にあたっては、チーム医療のメンバーである看護師やコメディカルなど他職種から現場での被評価者の行動について意見を取り入れる仕組み(多面評価)も効果的と思います。
③医師のコンセンサス
三つ目のポイントは、医師にしっかりと理解いただくことです。評価制度は設計すれば終わりではなく、制度を運用し本来の目的を果たすことがゴールになります。制度の導入にあたっては医師のコンセンサスを得られなければ、せっかく多大な時間と労力を掛けて策定した制度であっても、日の目を見ない取組みとなってしまいます。そうならないためには、医師に対するヒアリングやアンケートを通じて医師が評価してほしい事項や評価制度への不安を吸い上げ、可能な限り評価制度に取り入れることによって医師の制度への理解や同意に繋がります。
上記3つのポイントに注意して、貴院の実態や特徴を踏まえて人事評価制度の内容をご検討下さい。
相談者:
ありがとうございます、大変参考になりました。病院の安定的な経営を考えた場合に必要な業績とそれを実現するための各科・医師の役割や特徴を踏まえて、評価制度の内容を検討してみたいと思います。
次回掲載予定
今回は、医師の働き方改革の進め方のポイントについて、デロイトさんが回答しました。次回もこのテーマで皆様からのご質問に答えていきたいと思います。
執筆
有限責任監査法人トーマツ
リスクアドバイザリー事業本部 ヘルスケア
※上記の部署・内容は、掲載日時点のものとなります。2023/02
関連サービス
ライフサイエンス・ヘルスケアに関する最新情報、解説記事、ナレッジ、サービス紹介は以下からお進みください。
ライフサイエンス・ヘルスケア:トップページ
■ ライフサイエンス
■ ヘルスケア
ヘルスケアメールマガジン
ヘルスケア関連のトピックに関するコラムや最新事例の報告、各種調査結果など、コンサルタントの視点を通した生の情報をお届けします。医療機関や自治体の健康福祉医療政策に関わる職員様、ヘルスケア関連事業に関心のある企業の皆様の課題解決に是非ご活用ください。(原則、毎月発行)
>記事一覧
メールマガジン配信、配信メールマガジンの変更をご希望の方は、下記よりお申し込みください。
>配信のお申し込み、配信メールマガジンの変更
お申し込みの際はメールマガジン利用規約、プライバシーポリシーをご一読ください。
その他の記事
【連載企画】教えて!デロイトさん!(第1回)
医療機関の組織・人事・労務について、デロイトさんが皆さんの疑問にお答えします。
【連載企画】教えて!デロイトさん!(第2回)
医療機関の組織・人事・労務について、デロイトさんが皆さんの疑問にお答えします。