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【連載企画】教えて!デロイトさん!(第9回)

医療機関の組織・人事・労務について、デロイトさんが皆さんの疑問にお答えします。

これから1年間にわたって、組織・人事・労務の専門家であるデロイトさんが、日ごろ皆さまが業務に携わる中で生じる疑問に対して、Q&A形式でお答えしていきます。テーマは、多くの医療機関が着手されている「医師の働き方改革」についてです。是非ともご一読ください。

医師の意識改革はどのように進めればよいか

相談者:

私は中小規模の急性期病院の事務長をしております。現在、B水準の手続の申請準備が概ね終わり、少し安堵しています。2024年以降にはA水準を目指して活動しなければならないので、気持ちを新たに引き締めているところなのですが、この一連の準備を通じて事務方の知識レベルや理解度が深まる一方で、医師の働き方に対する意識がまだまだ変わっていないのではないかと感じています。どうすれば医師の意識改革をより進めていくことができるでしょうか。 

デロイトさん:

申請準備は大変だったかと思います。とりあえず一つの山を越えたという感じですね。おっしゃるように、医師への継続的な教育は必要です。現場の医師の先生方とお話ししていても、未だに宿日直の許可って何ですか、というご質問を受けることがあったり、労働基準監督署の宿日直許可は、労働時間ではないことを認められるのだから、医師である我々の労働価値が低いと判断されるようで複雑な気持ちになる、と言ったご意見をお聞きすることもあったりして、まだまだ医師の働き方改革の基本的な知識が周知し切れていない実態があると感じます。

相談者:

私たちの病院でもまさに同じような状態です。院内プロジェクトに参画いただいている先生方は、かなり詳細まで勉強されていて、厚生労働省が開催している研修に参加するなど、ご自身で積極的に知識をつけています。一方で、中堅クラスや若手の先生方は現場がお忙しいこともあり、医師の働き方改革という言葉を知らない人は流石にいらっしゃらないものの、細かなルールなどをご理解いただくのはなかなか難しいのではないかとも思います。

デロイトさん:

そうですね。そういった先生方にもしっかりとご理解いただくためには、診療部長クラスの先生方から医師の働き方改革の必要性や具体的な内容をお話しいただくのが効果的かと思います。一般的に、組織が大きくなればなるほど、トップからのメッセージは現場に伝わりにくくなっていくものです。理事長や院長が病院の方針について情報発信していく必要はもちろんありますが、具体的な現場レベルでの話や詳細な運用ルールなどについては、直属の上司である診療部長クラスが現場医師に丁寧にコミュニケーションしていく必要があると思います。

相談者:

なるほど。トップがそこまで細かいことは伝えられないですよね。診療部長の中には、管理職としての意識がそこまで高くはなく、現場医師と考え方が変わらなかったりするところもあるので、そこは院長からしっかりと伝えていただき、管理職としての意識づけもしていかなければならないですね。

医師の意識改革の事例

デロイトさん:

医師の意識改革に有効と思われる取組事例を一つご紹介します。現場の先生方に、「医師の働き方改革を進めるための方策」に関するレポートの作成を依頼し、建設的な意見を書いていただくような取組みをしている医療機関があります。単なるアンケートではなく、現場で取り組めそうなこととしてどのようなことがあるのかを具体的に考えて、それを書き出してもらうようなイメージです。このレポートは、書いてもらいやすいようにフォーマットなどを練っておかなければなりませんが、うまく進められれば非常に多くの様々な意見を収集することができます。熱心な先生からは、自病院の取組だけではなく、地域の医療機関も巻き込んで、再編も含めて検討しなければならない、といったご意見を複数枚にわたるレポートとして作成いただいたこともあります。確かにこの活動は先生方に負荷はかかるのですが、このような取組みを通じて、確実に先生方の意識は変革されていくものと思います。

相談者:

それはすごい取組みですね。確かに先生方にお願いするのにハードルはありますが、先生方に考えていただく良い機会になりそうですし、意識は高まるように思いました。

デロイトさん:

こういう活動は理事長や院長が主体となって、現場の先生方の意見を聞かせてくださいと依頼することが前提として必要と思います。また、提出していただいた内容については、病院としてもしっかりと受け止めて、どのように改善策を講じていくのか、例えば院内プロジェクトを立ち上げて進めていくなど、具体的にPDCAサイクルを回していくことが大事だと思います。レポートを出してもらうだけでフィードバックも何もしない、ということだけは避けなければなりません。病院と医師との信頼関係が悪化してしまいかねません。

厚生労働省のツールも有効

相談者:

なるほど、大変良い事例を紹介いただきありがとうございます。院内で検討してみようと思います。その他に、医師の意識改革を進めるにあたって、何か使えそうなツールなどはありますか?

デロイトさん:

ご存知かもしれませんが、厚生労働省のホームページの「いきいき働く医療機関サポ―トWeb(いきサポ)(※)」で、医療勤務環境改善に関する情報発信を定期的に行っています。このいきサポのホームページの教育ツールが非常に充実していて、マンガやクイズを使って医師の働き方改革の内容を理解しやすくしていたり、院内の勉強会などで活用できるわかりやすい資料などもダウンロードできるようになっています。全国の医療機関での先進事例なども紹介されていますし、是非こういったツールや情報を事務方から定期的に発信していくような取組もできるのではないでしょうか。

相談者:

確かにいきサポも随分と雰囲気が変わりましたね。非常に使いやすいホームページだと思います。是非活用してみようと思います。

 

いきいき働く医療機関サポートWeb(いきサポ)
https://iryou-kinmukankyou.mhlw.go.jp/

参照ページ

※1
医療機関勤務環境評価センター 受審受付申込状況
https://drive.google.com/file/d/1xPtOGjAtX9f6WRNiJ5F0RXyV45ITbQrN/view

執筆

有限責任監査法人トーマツ
リスクアドバイザリー事業本部  ヘルスケア 

※上記の部署・内容は、掲載日時点のものとなります。2023/04

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