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2022年度診療報酬改定が病院経営に与える影響(回復期編)
コロナ禍での改定となった2022年度診療報酬改定は、病院経営にどのような影響を与えるのか、改定内容から示唆されるメッセージを読み解き、病院経営者がどのように対応していくべきかを回復期医療を中心に説明します。
回復期医療における2022年診療報酬改定
2022年の診療報酬改定は、「急性期充実体制加算」や「周術期」関連の加算が新設され、急性期医療に対して一定の評価があった一方で、地域包括ケア病棟における要件・基準の厳格化や回復期リハビリテーション病棟入院料の段階再編・重症患者割合の引上げなど、回復期医療の分野では厳しい改定になっています。
特に、人口減少・少子高齢化により求められる医療の地域ニーズが変化していく中、その地域での将来的な自院の役割を見据え、急性期から回復期への機能転換を検討している。あるいは機能転換を進めている医療機関にとって、回復期医療における診療報酬の厳格化は、大きな影響を与えています。
本記事では、回復期医療に係る改定内容を中心に解説していきます。
へき地における地域包括ケア病棟の難しさ
2022年診療報酬改定では、地域包括ケア病棟において要件・基準が厳格化しています。
その中でも特に大きな影響を与えていると推察する要件・基準が2つあります。
一つ目は、地域包括ケア病棟入院料及び管理料2・4を算定する200床以上の病院に課せられた院内転棟割合6割以内の要件です。本要件を簡単にご説明すると、自院の急性期病棟などから地域包括ケア病棟に転棟する患者を6割以内に抑えなければ、入院料は15%減算されるというものですが、この減算規定は2020年診療報酬改定において、400床以上の医療機関に10%の減算として課せられていたものです。2022年の改定で病床数が200床以上まで拡大されるととともに、減算率も10%→15%に増えています。
二つ目は、在宅医療機能若しくは在宅医療の後方機能の強化です。具体的には、地域包括ケア病棟・病床を設置しようとした場合、200床未満であれば「在宅療養支援病院の届出」若しくは「訪問看護ステーションの同一敷地内設置」、200床以上であれば「在宅療養後方支援病院の届出かつ直近1年間の在宅患者の受入実績が3件以上(在宅患者緊急入院診療加算1を算定したもの)の実績」若しくは「訪問看護ステーションの同一敷地内設置」が義務付けられました。
各医療機関は、地域包括ケア病棟への直入患者を増やす施策を検討したり、他医療機関との連携を強め、広く患者の受入れを進めるなど地域包括ケアシステムに沿った方向で対応をしていると思います。
しかし、へき地では、機能分化や医療連携ができないほど医療機関や医療スタッフが不足している地域も少なくなく、効率的な医療提供体制を考慮すると、200床以上規模の病院が1施設でかかりつけ機能も急性期機能も担わなければならない実状があります。その場合には、こうした機能分化を推進する制約条件が逆に地域包括ケアシステムの構築を妨げてしまう可能性があります。
地域によってはニーズと合致しているはずの地域包括ケア病棟に転換することが困難な場合もあるのです。
回復期リハビリテーション病棟における予後予測
回復期リハビリテーション病棟においても、2022年診療報酬改定で、要件・基準が厳しくなっています。
入院料が6段階から5段階(入院料1~5)に再編されるとともに、回復期リハビリテーション病棟入院料の1・2では重症患者割合が3割以上から4割以上に、3・4では2割以上から3割以上にそれぞれ厳格化しています。
また、回復期リハビリテーション病棟入院料5については、届出から2年間に限り算定が可能となっており、2年以内にリハビリの質を上げて、実績を積むことが出来ない場合は、回復期リハビリから退場しなければならないことになっています。
これらの改定を踏まえると、回復期リハビリテーション病棟は、今まで以上に重症患者の受け入れを促進させる必要があり、受け入れた重症患者のFIM点数を上げることが求められていると考えられます。
FIM点数の低い状況、具体的には術後の患者を回復期リハビリテーション病棟で早期に受け入れることは、急性期病棟の在院日数短縮にも繋がり、急性期病棟・回復期リハビリテーション病棟どちらも持っている医療機関では、医療機関全体のメリットになります。
一方で、回復期リハビリテーション病棟において、急性期病棟から早期に患者を受け入れることはリスクにもなります。本当に改善する見込みがあるのか、在宅復帰が可能なのかを見極めなければ、患者は行き場をなくし、転帰が付かない事態になる恐れもあります。
そこで重要となるのが、患者の予後予測です。多くの医療機関で検討していることと思いますが、回リハ対象患者を抽出した際、早期に当該患者の退院時のFIM・退院日の目標を見極めるというものです。予後予測が早ければ早いほど、回復期リハビリテーション病棟での受け入れもスムーズになりますし、入棟時から退院に向けた準備も可能になります。またそれだけではなく、次の入棟患者の予定も立てやすくなります。
予後予測をいかに正確に、早く見極めるかが効率の良い回復期リハビリテーション病棟の運用、急性期病棟の在院日数短縮につながります。そのため、担当者だけの何となくの経験にしてしまうのではなく、「こういう理由・こういう背景だったのでこういう予測を立てました」というプロセスを積み上げ、結果として「何日目で退院した・退院時FIMは予測とこれくらい合致していた」というように予測と結果の乖離を分析し、それを共有することで、回復期リハビリテーション病棟全体の予後予測の精度を上げていくことが重要です。
今後に向けて
回復期医療を中心に解説しましたが、近年の診療報酬改定の傾向を見ると、今後も回復期医療における診療報酬の厳格化は進んでいくことを予想します。そうなると、回復期医療に舵を切ろうとした時に、様々なハードルで舵を切れない事態になる可能性もあります。特に、地域連携・病診連携に重きを置いた診療報酬が増えている中、近隣に病院・診療所が少なく、連携先がない地域においては、身動きが取れなくなってしまうことも考えられます。
現在の自院の外部環境・内部環境を分析し、いつでも舵を切ることが出来るよう先を見据えて、早めから準備することを推奨します。
執筆
有限責任監査法人トーマツ
リスクアドバイザリー事業本部 ヘルスケア
※上記の部署・内容は、掲載日時点のものとなります。2022/12
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