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病院、診療所の認証・認定・評価制度の整理と一考察

医療機関の認証制度は数が多いばかりでなく、その認証の審査対象も多岐にわたります。自院にあった制度は何なのか、お悩みの医療関係者の方々も多いのではないでしょうか。本記事では、認証制度の必要性を整理し、4つの認証制度についてご紹介します。

はじめに

病院、診療所の認証・認定・評価(以下、「認証」と呼ぶ)の制度は数が多いばかりでなく、その認証の審査対象も多岐にわたります。必要な手続きも制度ごとに大きく異なり、理解するだけでも多大な労力が必要です。自院にあった制度は何なのか、お悩みの医療関係者の方々も多いのではないでしょうか。本記事では、病院、診療所に関係する認証の制度について、海外機関による認証制度も含め4つの制度を簡単にご紹介します。

そもそも、なぜ認証制度が存在するのか

病院、診療所の認証・認定・評価(以下、「認証」と呼ぶ)の制度は数が多いばかりでなく、その認証の審査対象も多岐にわたります。必要な手続きも制度ごとに大きく異なり、理解するだけでも多大な労力が必要です。自院にあった制度は何なのか、お悩みの医療関係者の方々も多いのではないでしょうか。本記事では、病院、診療所に関係する認証の制度について、海外機関による認証制度も含め4つの制度を簡単にご紹介します。

認証の制度の意義として、一般的に大きく以下2点が挙げられています。

① 医療機関と患者の情報の非対称性を改善し、病院のアピールにもつながる。

患者は医療機関を選ぶとき、何を基準に選ぶでしょうか。医療機関のウェブサイトの情報を見ても、掲載されている内容だけでは必要な情報が得られなかったり、口コミサイトや雑誌などは信頼できる情報なのかどうか悩んだりすることがあります。加えて、医療機関には、広報可能な情報の種類に制限がありますので、限定された情報しか公開されていません。したがって、患者にとって医療機関の選択は、他の種類のサービスを選択する場合と比較してより難しくなります。

これは、医療サービスを提供する側である医療機関だけが専門的な知識をもっており、サービスを享受する側の患者にはそれがない、情報の非対称性と呼ばれる状況です。したがって、中立的な第三者機関が一定の審査基準を満たす医療機関を予め認証し公表することで、患者に信頼できる情報を提供することができ、医療機関にとっては一定の基準を満たしているというアピールができるようになります。

② 院内の体制整備を行うことにより、継続的な医療の質やサービスの向上ができる。

多くの病院では、目標とする認証制度が規定する審査項目の基準を満たすために、院内の体制整備が必要になります。基準を満たすための整備をすることで、患者に提供する医療の質やサービスの品質の底上げ行うことが可能になります。加えて、認証を継続して保持するために、多くの認証制度が更新の審査を設けており、院内でのPDCAサイクルを回しながら改善を図らなければなりません。定期的な審査によって職員の意識改善や継続的な医療の質の改善が期待できるメリットもあります。

様々な制度に関する解説

ここからは、各個別の認証制度について、解説していきます。

1.病院機能評価

病院機能評価は公益財団法人 日本医療機能評価機構が実施している事業です。1997年から本格的に当該事業が始まりました。現在、病院機能評価による認証を受けている病院の数は2,176 施設※1です。日本にある病院の数が8,480 施設※2なので、日本の病院の約25.6%が本制度による認証を受けていることになります。

当該機構は日本の病院を対象に、組織全体の運営管理、提供される医療について評価しています。評価は、「患者中心の医療の推進」「良質な医療の実践1」「良質な医療の実践2」「理念達成に向けた組織運営」という4つの評価対象領域から構成される評価項目によって実施されます。認証を受けるためには、まず書面審査と訪問審査を経て、中間的な結果報告を受けます。評価が高い順にA,B,Cの三段階で判定されます。中間的な結果がB以上であれば、その後、審査の結果を検討・調整するための評価部会を経て審査結果が通知されます。中間的な結果がCであれば補充的な審査を受けたあとに評価部会を経て、審査結果が通知されます。

認証を受けると、例えば、病院機能評価で認証された病院のみが使用できるシンボルマークを病院の広報活動媒体に掲載することが出来るようになり、自院の医療についてアピールすることができます。また、医療機関の収入に直結する診療報酬の算定基準として、一部の加算の施設基準の中には病院機能評価の認証そのものが要件に含まれているものがあります。例えば、平成28年の診療報酬改定において、総合入院体制加算、緩和ケア診療加算、緩和ケア病棟入院料の算定要件の一つとして、病院機能評価の認証が認められるようになりました。※3 ISO9001やJCIも同様に、これらの要件に含まれています。これにより、自院の受ける診療報酬が加算され、病院の経営上大きなメリットになります。

2.ISO9001

ISOとはInternational Organization for Standardizationの略で、日本語で国際標準化機構と呼ばれます。ISOはカードの大きさやねじの大きさなど様々な分野の製品やサービスについて規格を制定する機関です。ISO9001は、1987年に制定されたISO9000シリーズの一つで、先進国がばらばらに同様の規格を持つことは国際貿易上の技術的障害になるとの考えに基づいて定められた規格です。ISO9001は、組織の品質マネジメントシステムに対して定められたもので、病院だけでなく、あらゆる組織が認証を取得することができます。

ISO9001の認証を取得すると、組織の品質マネジメントシステムについての社会的信頼を獲得できます。さらに、毎年行われる審査によって、組織内でPDCAサイクルを回すことができ、継続な改善が期待できます。また、病院機能評価、JCIと同様に、平成28年の診療報酬改定において、総合入院体制加算、緩和ケア診療加算、緩和ケア病棟入院料の要件の一つとして、ISO9001の認証が認められるようになりました。※3 これにより、自院の診療報酬が加算されるようになり、経営上大きなメリットになります。

3.JMIP

JMIPとは、Japan Medical Service Accreditation for International Patientsの略で、日本語では外国人患者受け入れ医療機関認証制度と呼ばれます。2012年7月 に、国家戦略プロジェクトの一環として、外国人患者の円滑な受け入れを図るために創設されました。それまでは、国民に対する良質な医療の提供という観点から第三者機関による評価事業を実施していましたが、外国人が安心して受診できる医療機関の整備が必要であるという実情を踏まえて創設されたものです 。当該制度を運営しているのは、医療・介護分野に関連する事業を行っている一般財団法人 日本医療教育財団です。当該制度によって初めて病院が認証されたのは2013年3月 であり、比較的新しい制度であるといえます。

認証の対象となるためには、まず第三者機関による認証制度によって医療施設機能が評価されている病院または健診施設である必要があります。認証の対象となった病院または健診施設は、書面調査と訪問調査を経て、最後に有識者による認証審査会で判定を受ける必要があります。認証を受けると、JMIPのホームページ上で、外国人患者の受け入れ体制が整備された病院または健診施設であることを告知できるようになります。

4.JCI

JCIとはJoint Commission Internationalの略で、The Joint Commission(JC)が設立した非営利、非政府の機関です。JCは、医療の質と安全の継続的な向上をミッションに掲げ1994年に設立された組織で、米国内で21,000施設以上の医療機関を認証しています。※4 他方、JCIは世界中の医療機関に対して認証を行っています。日本では、2009年に医療法人鉄蕉会 亀田メディカルセンターが認証を取得しました。現在、世界中で973施設の医療機関が認証されており、日本の医療機関は、そのうち23施設です。日本でJCIの認証を受けている病院は、比較的規模の大きい病院が多い傾向にあります。

認証の要件は、以下の14の領域が設定されており、これら各領域に合計1000以上の評価項目が定められています。

第1章 「国際患者安全目標」(IPSG)
第2章 「ケアの受入と継続」(ACC)
第3章 「患者と家族の権利」(PFR)
第4章 「患者の評価」(AOP)
第5章 「患者のケア」(COP)
第6章 「麻酔と外科的ケア」(ASC)
第7章 「薬剤の管理と使用」(MMU)
第8章 「患者と家族の教育」(PFE)
第9章 「品質改善と患者の安全」(QPS)
第10章 「感染の予防と拡大防止」(PCI)
第11章 「ガバナンスとリーダーシップ」(GLD)
第12章 「施設管理と安全性」(FMS)
第13章 「スタッフの資格と教育」(SQE)
第14章 「コミュニケーションと情報の管理」(MCI)

JCIは今回紹介した認証制度の中で、最も取得および維持が難しいと言われる認証制度です。認証を受けることで、医療の質と安全、外国人の受け入れ体制について世界にアピールできるようになり、海外の患者を呼び込む医療ツーリズムの促進にも繋がると言われています。また、病院機能評価、ISO9001と同様に、平成28年の診療報酬改定において、総合入院体制加算、緩和ケア診療加算、緩和ケア病棟入院料の要件の一つとして、JCIの認証が認められるようになりました。※3 これにより、自院の診療報酬が加算されるようになり、経営上大きなメリットになります。

※1 日本医療機能評価機構公式サイト 6月2日時点のデータ( http://www.report.jcqhc.or.jp/) 
※2 平成27年(2015)医療施設(動態)調査・病院報告の概況(厚生労働省, http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/15/)
※3 平成28年3月4日厚生労働省告示第52号に基づき診療報酬の算定方法が改定。疑義解釈資料(その1)が平成28年3月31日付け厚生労働省保険局医療課事務連絡として発出
※4 JCI公式サイト(2017年6月29日閲覧,https://www.jointcommission.org/about_us/about_the_joint_commission_main.aspx)

まとめ

病院が取り得る認証は、各々特徴があり、自院の目的に沿った制度を選択する必要があります。もう一度、自院が必要とする効果は何か、認証の取得の目的は何か、といったことを整理して、検討してはいかがでしょうか。

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