調査レポート

調剤薬局薬剤師の業務可視化と効率化余地の検討

タイムスタディによる調査事例

2020年の調剤報酬は、2025年を見据えた「患者のための薬局ビジョン」実現を目指し、かかりつけ薬剤師・薬局の推進や対人業務へのシフトを促す見直しとなっています。また、高齢者の在宅医療や地域医療、継続的な服薬指導等のニーズなど、地域包括ケアシステムの中で薬剤師・薬局の役割は今まで以上に多様化していることから、今回、調剤薬局薬剤師の業務可視化のためにタイムスタディによる調査を実施しました。

地域に根差した調剤薬局の取組

今回調査を実施した調剤薬局は、JR3路線が通る都内某所の駅から徒歩1分のメディカルクリニックビル1階に入居している。同局のコンセプトは、「患者さんを待たせない」であり、さまざまな取組を実施している。例えば、処方箋は事前ネット受付または、連携医療機関の処方箋をQRコード化することでスムーズに薬歴確認や入力を可能にし、患者滞在時間短縮を図っている。
調剤室では薬棚のレイアウトにも気を使っている。払出頻度が高い薬剤から取り出しやすい位置に配置することで、効率の良い動線を確保したり、薬剤師業務を熟知した事務担当者と連携しながら、より薬剤師が専門業務に注力できるよう随所に工夫がされていた。
また、作業場所を一定にすることで、複数人で作業する際に進捗状況を共有しつつ、携わるスタッフのミスを最小限にする工夫もされており、日ごろから業務効率化を意識していた。

タイムスタディ結果概要

今回は、タイムスタディおよびインタビューにより調剤薬局薬剤師(1名)の平均的な業務の1日を記録した。当調剤薬局では薬剤師3名、調剤事務担当者4名が勤務しており薬剤師の指示の元、調剤事務担当者が連携して業務を行っている。業務の計測の際は、業務内容を分類した上で、業務実施手順および業務発生頻度を確認している(2020年2月上旬取材)。

患者の薬局滞在時間平均は5分程度(小児薬、軟膏の調合、一包化作業等を含む)であり、処方頻度が高い薬剤や処方薬数が少ない場合は2分程度で払出されていた。午前中は開店直後に来局する患者がいるものの、全体としては落ち着いているため、薬歴管理へのデータ入力などに時間を割いていた。12時頃から13時台は1時間に12~13人が来局、17時台は1時間に11人が来局しており、昼の時間帯と夕方の帰宅時間帯にピークがあった。繁忙時間帯以外は、薬剤師および事務担当者それぞれが納品対応、清潔環境管理、予製の作業を行っていた。この他、週2日は在宅対応をするため徒歩圏内の複数患者を訪れ服薬指導に当たるだけでなく、連携するクリニックの医師や看護師、ケアマネージャー等と訪問先にて担当者会議を行い情報共有している。

計測した時間を対人業務と対物業務に分類すると、75対25の割合であった。担当薬剤師からは、目標としている対応時間を概ねクリアできており良かった、現場で業務にあたる担当者として励みになるとのコメントがあった。

更なる効率化の観点

調剤薬局業務において薬剤師に最もリソースを割いてもらいたいのは、専門性があり、かつ、調剤報酬に対応した業務である。特に、対物から対人への構造的な転換には、対物業務をスリム化し、対人業務にシフトする必要がある。その際に考えなくてはならないのは、薬剤師業務の現状を把握し、改善余地を探索することである。特に、2019年4月2日に厚生労働省より通知があった「調剤業務のあり方について」を踏まえ、対物業務の一部を調剤事務担当者が担いやすい様、実際の業務を計測し、客観的に現状を可視化することで他職種が介入できる点や改善すべき点が明確にできよう。経営者はこれを店舗利益の向上に繋げる必要がある。

具体的には、業務の一部をRPA(Robotic Process Automation)に置き換えたり、人事施策に活用したりする事が考えられる。当調剤薬局においても、グループ内の別店舗にて既にRPAを一部導入している。改善の余地がある業務をさらにひも解き、業務のフローを可視化していくと、テクノロジー介入すべき点が明確になり、人材の最適配置等、経営戦略が立てやすくなるメリットもある。つまり、業務可視化は働き方改革の先にある未来のヘルスケア組織、Future of Workforceを目指すための第一歩であるといえる。

本調査研究に関するお問合せ先

有限責任監査法人トーマツ
リスクアドバイザリー事業本部  ヘルスケア 

柚木 大介|シニアマネジャー
湯澤 あや

E-mail : dthc_surveyinfo@tohmatsu.co.jp

 

※上記の社名・役職・内容等は、掲載日時点のものとなります。2020/06

関連サービス

ライフサイエンス・ヘルスケアに関する最新情報、解説記事、ナレッジ、サービス紹介は以下からお進みください。

ライフサイエンス・ヘルスケア:トップページ

■ ライフサイエンス

■ ヘルスケア

ヘルスケアメールマガジン

ヘルスケア関連のトピックに関するコラムや最新事例の報告、各種調査結果など、コンサルタントの視点を通した生の情報をお届けします。医療機関や自治体の健康福祉医療政策に関わる職員様、ヘルスケア関連事業に関心のある企業の皆様の課題解決に是非ご活用ください。(原則、毎月発行)

記事一覧

メールマガジン配信、配信メールマガジンの変更をご希望の方は、下記よりお申し込みください。

配信のお申し込み、配信メールマガジンの変更

お申し込みの際はメールマガジン利用規約、プライバシーポリシーをご一読ください。

>メールマガジン利用規約
>プライバシーポリシー

お役に立ちましたか?