最新動向/市場予測

女性研究者の育成

女性研究者の育成に関する最新動向

女性の活躍推進には世界的に高い関心が寄せられています。世界と比べた日本における女性研究者割合や女性研究者育成における課題について解説します。

執筆者: 公認会計士 小園 直子

 

日本の女性研究者の現状

女性の活躍推進には世界的に高い関心が寄せられており、人口が減少していく日本の科学分野におけるダイバーシティの推進は近年、重要な課題となっています。

日本には世界水準の研究機関や大学があり、最先端の研究や開発が進んでいるため、日本の女性研究者の割合は年々増加傾向にあるものの、科学界の女性の進出を阻む障壁はまだ多く、他の先進国と比べ低い状況になっています。特にラトビアやスペインでは女性研究者の割合は40%を超えていますが、日本では17.5%(2020年時点)とOECD加盟国の中で最低レベルとなっています。

 

参考(外部サイト):総務省「科学技術研究調査結果の概要」

 

女性研究者の育成における政府の目標

 

政府は、ダイバーシティが確保された環境の下で、女性研究者が腰を据えて長期にわたる研究に取り組む時間を確保できることを目標に掲げており、令和3年3月26日に閣議決定した「第6期科学技術・イノベーション基本計画」において、女性研究者の育成における主要な数値目標として以下の2点の指標を挙げています。

  • ⼤学における⼥性研究者の採⽤割合:2025 年度までに、理学系 20%、⼯学系 15%、農学系30%、医学・⻭学・薬学系合わせて 30%、⼈⽂科学系 45%、社会科学系 30%
  • ⼤学教員のうち、教授等(学⻑、副学⻑、教授)に占める⼥性割合:早期に 20%、2025 年度までに23%(2020 年度時点、17.7%)

参考(外部サイト):
内閣府 第6期科学技術・イノベーション基本計画(令和3年3月26日閣議決定)

 

女性研究者の支援と現状の課題

我が国において女性研究者が増加しない理由として、研究に多くの時間を費やすため家庭と仕事の両立が困難であること、育児期間後の復帰が困難であること、評価者に男性を優先する意識があること、女性研究者のロールモデルが少ないこと、女性研究者を増加させるための施策推進体制の非効率化などがあげられています。これらの課題を踏まえ、現在、政府や大学などを中心に女性研究者への支援が進んでおり、文部科学省の補助事業において、「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ」を実施しており、女性研究者支援事業に係る資金を獲得する大学が増加しています。また、各大学・研究機関に男女共同参画センター等が設置され、女性研究者や女子学生への支援体制の強化および地域ネットワークの構築等、様々な取組みが行なわれています。しかし、これらの取組みは実現に向け多くの時間を要し、現状では十分に取組みが進んでいるとは言い難い状況にあります。

参考(外部サイト):
文部科学省「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ」

 

終わりに

日本の女性研究者は、出産・育児などのライフイベントと研究を両立することが難しく研究を中断せざるを得ないことが多いです。政府や大学は女性研究者のための環境整備やサポート制度等の充実を進めてきたものの、現状、大学本務教員の女性の占める割合は3割を下回り、大学教員のうち教授等(学長、副学長、教授)に占める女性の割合も2割に達しない状況にあるなど、他の先進国と比べ日本の女性研究者の割合は非常に低くなっています。研究の多様性の観点からも女性の活躍をより一層加速させる必要があり、今後はこれまでの取組みに加え、上述した政府の目標を達成するために、政府や大学だけでなく地域や民間企業等による社会的支援との連携を重視し、中長期の目標を立てPDCAサイクルの中で女性研究者の活躍を支援する施策が積極的に推進されることが期待されます。

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