最新動向/市場予測

デジタル人材の育成

高等教育におけるデジタル人材育成の最新動向

デジタル化が急速に進む中、デジタル人材の育成に注目が集まっています。高等教育におけるデジタル人材育成の最新動向について解説します。

執筆者: 公認会計士 西山 茉美子

 

1.デジタル人材とは

デジタル人材とは、明確な定義があるわけではありませんが、デジタル化・DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する人材を総称した言葉です。最先端のデジタルテクノロジーを活用し、社会やビジネスの変革を実現することができる人材のことを指します。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、外出行動の抑制や3密を避けた行動が奨励されるようになったことに伴い、テレワークやオンライン会議といったデジタルツールの活用が広がることとなりました。

コロナ禍を契機として急速にデジタル化が進展しており、デジタル人材の育成が必要不可欠になっています。文部科学省、経済産業省においても、「デジタル人材育成推進協議会」を開催し、高等教育機関を中心としたデジタル人材育成の取組についての協議がなされています。

 

2.デジタル人材育成に関する政府の目標

令和4年6月7日閣議決定「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」において、デジタル人材育成に関する指針として、以下の2点が挙げられています。

  • 「地域が抱える課題の解決を牽引するデジタル人材について、現在の100万人から、2026年度までに合計330万人を確保する。」
  • 「全国の大学等において、AI・データサイエンス・数理等の教育を強化し、文系、理系を問わずこれらを応用できる人材を育成する。」

さらに、令和4年6月7日閣議決定「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2022」においても、以下の提言があります。

  • 「デジタル推進人材を2026年度末までに230万人育成する取組を進める。」

 

出典(外部サイト):
新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画~人・技術・スタートアップへの投資の実現~
経済財政運営と改革の基本方針 2022 新しい資本主義へ ~課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現~

 

出典:文部科学省 デジタル人材育成推進協議会(第1回)配布資料2-1

 

3.高等教育におけるデジタル人材育成の取組

デジタル人材育成の取組として、文部科学省は、全国の大学・高等専門学校における「数理・データサイエンス・AI」教育の展開を推進しています。「数理・データサイエンス・AI」とは、デジタル社会の基本的知識であり、デジタル人材の基礎とされています。文理を問わず、全国の学生がこのデジタル社会における基本的知識を習得できる教育体制の構築・普及を目指し、文部科学省より選定された大学・高等専門学校は数理・データサイエンス・AI教育強化拠点コンソーシアムを形成し、活動しています。

また、大学・高等専門学校がデジタル・グリーン等の成長分野への学部転換等の組織再編に取り組めるよう、文部科学省は財政支援を行うための基金を含めた、継続的支援策を創設する方策について検討しています。

その他、リカレント教育の推進として、大学・高等専門学校が自治体や企業等と連携し、DX等成長分野に関してリテラシーレベルの能力取得・リスキリングを実施するプログラムを支援する動きがあります。


出典(外部サイト):
数理・データサイエンス・AI教育強化拠点コンソーシアム
文部科学省 デジタル人材育成推進協議会(第1回)配布資料2-1)

参考(外部サイト):
DX等成長分野を中心とした就職・転職支援のためのリカレント教育推進事業

 

4.終わりに

大学等における教育だけでなく、社会人に向けたリカレント教育の実施など、日本全体におけるデジタル人材育成のための環境整備に向けた動きが進んでいます。

日本は他国と比較してデジタル人材が少なく、IT後進国と呼ばれることもあることから、デジタル人材を育成する取組を進めていくことが喫緊の課題となっています。

上述した政府目標の実現に向けて、今後どのような形で取組が進んでいくか、動向について引き続き注目が集まっています。

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