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「公益法人会計基準に関する実務指針の改正」について

「公益法人の会計に関する諸課題の検討状況について」(27年度報告)を受け、実務指針を改正した

日本公認会計士協会は、平成28年3月22日に、「公益法人の会計に関する諸課題の検討状況について」(26年度報告)に基づき内閣府公益認定等委員会から協力依頼があった項目のうち、監査上、特に留意すべき事項を追加した上で「公益法人会計基準に関する実務指針」(その1)から(その4)を統合した「公益法人会計基準に関する実務指針」を公表した。その後、同委員会から27年度報告の公表を受け、平成28年12月22日に実務指針を改正した。

改正の概要

日本公認会計士協会は、平成28年12月22日、「公益法人会計基準に関する実務指針」(以下「実務指針」という。)の改正を公表した。

平成28年3月22日に公表された実務指針は、「公益法人会計基準に関する実務指針」(その1)から(その4)を統合した、「公益法人会計基準に関する実務指針」(平成28年3月22日)に、「公益法人の会計に関する諸課題の検討状況について」(平成27年3月26日。以下「26年度報告」という。)に基づき公益認定等委員会委員長から日本公認会計士協会会長宛てに協力依頼があった項目のうち、監査上、特に留意すべき事項について追加したものである。
その後、平成28年3月23日に内閣府公益認定等委員会から「公益法人の会計に関する諸課題の検討結果について」(以下「27年度報告」という。)が公表されたことを受け、①過年度遡及会計基準、②金融商品会計基準(開示関係)、③資産除去債務に関する会計基準、④賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準の追加などが行われ、今回の実務指針の改正となった。


以下、①から④について解説する。

1.過年度遡及会計基準

実務指針では、公益法人における会計上の変更及び過去の誤謬の訂正に関する会計上の取扱いは、原則として、企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」に規定する取扱いに準拠するとしている。「原則として」という文言は、過年度遡及会計基準に規定される取扱いのうち、未適用の会計基準の注記を行うかについては、各法人の任意とされているため。
具体的には、7つの設例を用いて会計処理と注記例を説明している。


<設例1-1>会計方針の変更(遡及適用を行う場合)
<設例1-2>会計方針の変更(遡及適用の原則的な取扱いが実務上不可能な場合)~過年度遡及会計基準第9項(1)の場合
<設例1-3>会計基準の変更(遡及適用の原則的な取扱いが実務上不可能な場合)~過年度遡及会計基準第9項(2)の場合
<設例2>表示方法の変更
<設例3>会計上の見積りの変更
<設例4>減価償却方法の変更
<設例5>過去の誤謬の訂正

2.金融商品会計基準(開示関係)

実務指針では、金融商品会計基準第40-2項(1)「金融商品の状況に関する事項」の財務諸表における開示項目、開示例を説明している。


具体的には、27年度報告を受け、開示すべき金融商品の範囲を、金融商品会計基準で規定する全ての金融商品を対象とするのではなく、株式その他の出資証券及び公社債等の有価証券並びにデリバティブ取引等の法人の資産運用を図る手段として用いられる金融商品に限定している。
なお、注記すべき場合として、当該金融資産の運用次第では、公益目的事業の安定的な持続可能性に影響を与えるなど、法人運営に相当のリスクをもたらすおそれがあると法人が判断した場合とされているが、それ以外の場合に法人が自主的に注記を行うことは妨げないとしている。

具体的な注記例として、企業会計基準適用指針第19号「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」における参考(開示例)の他、27年度報告における注記例を参考として記載している。

3.資産除去債務に関する会計基準

実務指針では、公益法人における資産除去債務の会計処理上の留意点について解説している。

①財源
有形固定資産本体部分と資産除去債務部分で財源が異なる場合がある。
本体部分は財源の指定の有無により指定正味財産又は一般正味財産が財源となる。
資産除去債務に対応する有形固定資産を計上する場合、当該有形固定資産に対応する財源は一般正味財産となる。

②除去費用に係る費用配分額及び時の経過による資産除去債務の調整額
当該資産除去債務に関連する有形固定資産の減価償却費と同じ区分に含めて事業費又は管理費に計上する。

③資産除去債務の履行時に認識される決済差額
原則として、当該資産除去債務に対応する除去費用に係る費用配分額と同じ区分に含めて計上する。

④資産除去債務の発生時に当該債務を合理的に見積もることができない場合
当該債務を合理的に見積もることができるようになった時点で負債として計上する。

⑤資産除去債務を合理的に見積もることができない場合と財務諸表の開示
資産除去債務の履行時期の予測や、将来の最終的な除去費用を見積もることが困難で合理的に資産除去債務を算定できない場合は、当該資産除去債務の概要、合理的に見積もることができない旨及びその理由を注記する。

4.賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準

実務指針では、公益法人における賃貸等不動産の範囲、注記を省略するかどうかの判断の留意点、注記が必要とされる時価、開示例について解説している。

①公益法人における賃貸等不動産の範囲
公益法人における賃貸等不動産の範囲は、企業会計基準第20号「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」第5項のとおりとしている。

②賃貸等不動産の総額に重要性が乏しいとして注記を省略するかどうかの判断の留意点
賃貸等不動産の貸借対照表日における時価を基礎とした金額と当該時価を基礎とした総資産の金額との比較をもって判断することとなるが、企業と公益法人の事業目的の相違点を加味することが考えられる。

③賃貸等不動産の時価開示において注記が必要とされる時価
基本的に企業会計基準適用指針第23号「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準の適用指針」(以下「賃貸等不動産指針」という。)に沿った時価を用いる。なお、開示対象となる賃貸等不動産の重要性については、簿価や含み損益の状況といった金額的重要性の他、当該公益法人の実態等や企業と公益法人の事業目的の相違点を考慮して判断することも考えられるとしている。

④公益法人における賃貸等不動産に関する開示例
賃貸等不動産指針の開示例等を参考に公益法人に即した開示例を記載している。

適用と留意点

この改正については、平成28年4月1日から開始する事業年度から適用される。また、同日前に開始する事業年度から適用することを妨げないとしている。即時対応が求められるため留意が必要である。

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