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監査ソフトウェア

効率性の向上と監査調書の標準化

近年のIT化の波に乗り、監査法人の実施する会計監査でもコンピュータの利用が欠かせないものとなっている。監査ソフトウェアの使用は増加傾向にあり、2000年度監査白書(日本内部監査協会)によると「監査調書作成にあたってのコンピュータ利用」について、実に8割を超える企業が「活用している」または「活用することもある」と回答している。

監査ソフトウェアの利用

近年のIT化の波に乗り、監査法人の実施する会計監査でもコンピュータの利用が欠かせないものとなっている。わずか7~8年前までは、監査調書は手書きで作成し、サンプリングや分析を実施する際にも電卓を駆使して手作業で実施していた。それが今や、サンプリングや分析は専用のソフトウェアを使用し、監査調書をパソコンで作成し、完成した調書を社内LANで上位者に送信し、上位者はパソコンの画面上で監査調書をレビュー(査閲)する時代となった。

  同様の流れが内部監査にも迫ってきており、特に外資系の企業では内部監査での監査ソフトウェアの導入が進んでおり、日系のグローバル企業からも内部監査で使用する監査ソフトウェアの引き合いの話を良く耳にするようになった。

 

監査ソフトウェアのメリット・デメリット

 監査ソフトウェアを利用するメリット、デメリットは、以下のとおりである。

 監査ソフトウェアを利用する最大のメリットは、効率性の向上である。例えばサンプリングや分析を実施する場合を考えてみる。監査ソフトウェアを使用しない場合には、サンプリングや分析の理論を理解し、理論に従って何度も何度も電卓を叩いて結果を出す。ところが専用の監査ソフトを使えば、データさえ入力してしまえば結果は一瞬で出てきますし、サンプリングのやり直しが必要となってもそれほど手間がかからない。

 監査ソフトウェアを利用するもう1つのメリットは、監査調書の標準化である。一定規模以上の内部監査部門において、各人が監査調書の様式をそれぞれ考えていたのでは、考えている時間が大きなロスとなり、監査調書をレビューする上位者にとってもレビューが効率的に実施できない。そこで、監査調書管理用ソフトウェアを導入し、監査調書自体をテンプレート化しておけば、作成者とレビュー者両方の作業がとてもやりやすくなる。

  一方、監査ソフトウェアを利用するデメリットとして、導入コストが必要となることやソフトウェアの使用方法を取得しなければならないこと、電子化された監査調書のセキュリティの問題などが考えられる。しかしながら、導入コストについては、導入後の監査効率化による削減コストの方が大きいと考えられる。また、使用方法の取得やセキュリティについては、研修実施やパスワード使用によって個別に対策を講じることが可能である。

  このため監査ソフトウェアの使用は増加傾向にあり、2000年度監査白書(日本内部監査協会)によると「監査調書作成にあたってのコンピュータ利用」について、実に8割を超える企業が「活用している」または「活用することもある」と回答している。

監査ソフトウェアの種類

監査ソフトウェアには大別して、(1)監査調書を作成・管理するためのものと、(2)電子データの検証を支援するためのものがある。

 監査調書を作成・管理するための監査ソフトウェアは、電子化された監査調書を効率的に作成・管理する目的で使用される。そのためこの種のソフトウェアには、監査調書のやり取りや管理・保存のための機能、監査調書のテンプレートを保存する機能、監査手続データベースや監査マニュアルの呼び出し機能などが必要となる。また、(監査調書間を相互参照する)クロスリファレンス機能やチェックマーク機能、(作成者・承認者のサインを付加する)サインオフ機能などの諸機能が備わっていると、より便利に使用することができるであろう。

 一方、電子データの検証を支援するための監査ソフトウェアは、主にサンプリングや分析など監査手続を実施していく上で必要となる作業を省力化する目的で使用される。例えばサンプリングについて、手作業で統計的代表サンプリングを実施するとした場合、まずは統計的代表サンプリングとはどのように実施するのかを理解するところから始まる。ところがサンプリング用の監査ソフトウェアを使用すると、統計的代表サンプリングを実行する機能を選択すれば、あっという間にサンプリングが済んでしまう。また分析にしても、重回帰分析を実施するとした場合、数学に強くない監査人ではお手上げとなるであろう。このような場合に分析用の監査ソフトウェアが本領を発揮してくるのである。

 さらに、近年の業務処理はほとんどがコンピュータによって実施されている。監査手続を支援するための監査ソフトウェアを使用する際にも、そのコンピュータ上のデータをそのまま使用し、あるいはデータをパソコンにダウンロードして加工した上で使用すれば、データを入力する手間も省略できる。このように、監査ソフトウェアを使用することで省力化できる作業については極力省力化し、その代わり、判断を伴うような高度な分野に監査人の作業を集中することが可能となる。

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