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連載【保険ERM基礎講座】≪第22回≫

「グローバリゼーションとERM(その4)」

近年、企業経営を取り巻く環境が大きく変化し、リスクが複雑になりつつあります。デロイト トーマツ グループでは、保険毎日新聞に保険会社におけるERMつまり、「保険ERM」を分かり易く解説した連載をスタートしました。(執筆:有限責任監査法人トーマツ ディレクター 後藤 茂之)

出典:保険毎日新聞(8月4日発刊号)

≪第22回≫ グローバリゼーションとERM(その4)

1. ポートフォリオのグローバル化

ビジネスがグローバル化すれば、当然ながらポートフォリオ(事業、リスク)もグローバル化する。それ故、ポートフォリオへ影響を及ぼすハザード(危険事情)のモニタリングにもグローバルな視点が必要になる。

今日のERMでは、過去のトレンドからリスク量という形で将来の影響を読み解くモニタリング(定量的アプローチ)と、将来のリスクの変化や新たなリスクの発生をエマージングリスクとしてモニタリングし、自社のポートフォリオへの影響を一定のシナリオの下で評価するストレステストを実施している(これらは、定性的アプローチと呼ばれている)。環境変化の激しい今日においては、フォワードルッキングな経営の強化の観点からも、定性的アプローチの強化が求められている。

2. グループガバナンス

日本の保険会社は、国内市場の成熟化と少子高齢化の進展の下、成長戦略の観点からも海外展開を活発化させると共にM&Aも積極におこなっている。被買収会社のリスクポートフォリオとのシナジー効果はグループ企業価値向上の観点から極めて重要である。同時に、ERMの枠組みやリスクカルチャーの調整もM&A以後の企業活動を左右する重要な要素となる。

3. グループ資本の管理

持ち株会社は、グループ全体のポートフォリオの健全性と資本の効率性を同時追求する観点から、傘下のグループ会社の健全性を確保した上でグループ全体の資本効率を最大化できるよう資本配分したいと考えている。しかしながら、各グループ会社の立場からすると、自社のポートフォリオを最大化する観点から資本配賦を受けたいと望んでいる。ここに部分最適と全体最適の問題が存在する。

4. ERMツールのガバナンス

グループの整合性は、それがハイレベルの方針・原則といったレベルで対処しやすい場合でも、それが実務レベル、現場レベルに移っていくにつれ、多くの考慮が必要になってくる。例えば内部モデルのグループにおける整合性を考えてみたい。モデルが資本配賦制度やリターン・リスク・資本の管理のための基礎情報を提供することを考えればその重要性は論を待たない。しかしながら、経営判断材料を提供するものであると同時に現場業務での判断情報としても活用されるためには、より粒度の小さいレベルでの調整や多様性への対応があり、1つのモデルで全ての目的を果たす情報を算出すること(one-size-fits-all solution)は不可能である。

 

つづきは、PDFよりご覧ください。

(PDF、1,607KB)

保険ERM態勢高度化支援サービス

デロイト トーマツ グループでは、保険ERM態勢に関し、基礎的な情報提供から、各社固有の問題解決まで幅広く関わり、Deloitte Touche Tohmatsu Limited(DTTL)のグローバルネットワークを駆使し、最新の情報と豊富なアドバイザリーサービスを提供します。

保険ERM態勢高度化支援サービス
(ブロシュア、PDF、384KB)

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