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連載【保険ERM基礎講座】≪第5回≫
「保険ERMと不易流行」
近年、企業経営を取り巻く環境が大きく変化し、リスクが複雑になりつつあります。デロイト トーマツ グループでは、保険毎日新聞に保険会社におけるERMつまり、「保険ERM」を分かり易く解説した連載をスタートしました。(執筆:有限責任監査法人トーマツ ディレクター 後藤 茂之)
出典:保険毎日新聞(11月26日発刊号)
≪第5回≫ 保険ERMと不易流行(2)
第5回目からは、現在のERMの構造の特徴と直近の強化事項を確認いたします。
1.資産・負債のトータル評価
リスク管理は、現時点から将来を適切に予測し、将来の価値を好ましい状態に導くための意思決定であり、実際の行為である。保険ERMでは、保険会社の価値を、経済価値ベースの純資産として捉えようとする。資産・負債価値は将来の様々な要因によりキャッシュフローは変動する。結果、純資産も変化する。純資産の変動と資産・負債の変動を体系的・統合的に関連づけようとする考え方が、トータルバランスシート方式と呼ばれるものである。
2. 金融危機とERM上の教訓
バブルとは、資産価格がそのファンダメンタル価格から上方に乖離し継続的な高騰が続き、それがいきすぎると、その後は一転して資産価格がそのファンダメンタル価格を下回り急激に暴落する現象のことをいう。人間の経済行動の潜在的な要素の中にこれらを繰り返し発生させる要因があるため、一定の時間が経った後、同様の現象が繰り返されることとなった。
3. ERM強化の視点
金融危機、その後の欧州ソブリン危機といったグローバル経済に大きなインパクトを及ぼした一連の流れの中でわれわれは、リスク管理の基本的な部分に関する再認識を余儀なくされた。それは、サブプライムローンに内在する不確実性に対する警戒不足と、そのリスクの急激な積み上げを是正する仕組みが機能しなかったことである。結果は、市場が持つリスク許容度以上に積み上がった取引は、いつかはリスクオフの動きとなるという、これまで感度も経験してきたリスクと市場の論理が繰り返され、倒産の危機を回避できなかったことであろう。ERMの枠組み的な課題としては、市場の変化とともに様相を常に変えるリスクの特徴への対応力不足が再認識されることとなった。
4. フォワードルッキング力の強化
これまでのERMの進化を振り返ってみると、過去のパターンから将来を予測し、リスク量を計測する統計・分析技術の向上が大きく寄与してきた。ただ過去のパターンは将来を全てカバーしているわけではないという事実が、この手法の限界を示している。ここからERMの今後挑戦すべき課題が明確になる。将来の予測技術の現状を、フォワードルッキング性と定量可能性による4象限でプロットしてみる。そうすると、下図の余白の多い領域へのナレッジの強化が課題として浮き彫りになる。
※つづきは、PDFよりご覧ください。
保険ERM態勢高度化支援サービス
デロイト トーマツ グループでは、保険ERM態勢に関し、基礎的な情報提供から、各社固有の問題解決まで幅広く関わり、Deloitte Touche Tohmatsu Limited(DTTL)のグローバルネットワークを駆使し、最新の情報と豊富なアドバイザリーサービスを提供します。
保険ERM態勢高度化支援サービス
(ブロシュア、PDF、384KB)