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リスクに基づく事業評価支援

日本企業が成長を海外市場に求めることにより、事業のリスクは従来以上に高まっています。特に、新興国のインフラ事業においては、経済基盤・政治基盤の不安定なことにより、グローバル経済変動等の影響を受けやすい状況にあります。このような事業環境において、安定して成長するためには、契約・保険によるリスク・ヘッジだけでは不十分であり、リスク・テイクをマネージするという考え方が必要になります。

リスクアペタイト

不確実性の高い世界でリスクをテイクするには、過去データに基づきリスク量を統計的に推定するという従来のアプローチに加えて、フォワードルッキングな要素を取り入れた質の高い経営上の意思決定が必要となります。即ち、将来何が起こりえるのか、自社が経営上の目的を達成するために取れるリスクはどの程度なのかを把握し、事業計画やヘッジ行動を決定することが求められています。こうした経営者が意図的に取るリスクは「リスクアペタイト」と呼ばれ、リスクアペタイトを基点とした経営管理の枠組みは「リスクアペタイト・フレームワーク」といわれています。以下では、計画・実行・評価の各段階において、リスクアペタイト・フレームワークがどのように機能するのか、その概要を示します。
計画段階においては、プロジェクトに係るリスクの識別と評価を行うことは従来同様ですが、どこまでリスク・テイクするかの意思決定には、リスクが収益に与える影響を評価し、リスクに見合ったリターンが得られているかの見極めを行うことが必要になってきます。また、リターンに大きな影響を及ぼすリスクファクターを見極め、その影響を軽減するためにプロジェクト計画をブラッシュアップすることが必要となります。
リスクアペタイト・フレームワークでは、経済・政策・金融・海外動向などマクロ・リスクファクターが、調達・生産・販売等の事業活動に係るミクロ・リスクファクターにどのような影響を及ぼすかをモデル化し、今後発生しえる様々なシナリオのもとでプロジェクト案件への影響を定量的に分析を行うことで、計画の強みや弱みといった特徴を明らかにします。また、計画の持つ弱みが露見するようなシナリオでは、パフォーマンスの悪化を回避するような打ち手(対応オプション)を検討することによって、外部環境の変化にしたたかな事業計画を策定することが可能となります。
デロイト トーマツ グループは、デロイトのグローバルネットワークから得られる情報等を踏まえ、リスクの収益インパクトを評価するとともに、「リスクの見える化」を通じて、プロジェクト案件全体についてもリスクをリスクアペタイトの範囲内に抑えると同時に、投入可能資源といった、その他の制約条件を満足する最適ポートフォリオ構築を支援しています。
次に、実行段階においては、計画段階で想定したリスクシナリオに係る継続的なモニタリングを通じて、リスク顕在化の予兆を得たときに、シナリオ分析で想定した対応オプションをタイムリーに発動することにより、リスクの影響を軽減することが可能となります。例えば、リーマンショックの際、韓国の銀行のクレジットリスクが顕在化し、L/Cの決済機能が停止し、韓国からの部材調達に支障を来たすということがありました。今後もプロジェクト採算性向上のために、海外サプライヤーからの調達量が増えることが見込まれる中で、主要サプライヤーのホスト国のカントリーリスク、当該カントリーリスクに影響を及ぼすマクロ・リスク、それが発生した場合を想定したシナリオ想定、およびリスクファクターをモニタリングすることの重要性は高まっています。
最後に、評価段階では、プロジェクト・ポートフォリオの再評価を行うとともに、リスクマネジメント活動を通じて獲得したノウハウの形式知化、展開を組織的に実施することが必要であり、デロイト トーマツ グループはこれをプロセスや制度の作り込み、レポート・DBなどの仕組みの構築、定着化の各切り口で支援を行っています。