Posted: 03 Oct. 2022 5 min. read

AIやメタバースを活用し、セクターを超えることで生まれるイノベーションとそのための場づくり

Deloitte AI Partners|vol.7

Deloitte AI Institute(以下、DAII)は、グローバルで約6,000人が所属している、AIの戦略的活用およびガバナンスに関する研究活動を行うプロフェッショナルネットワークです。国内外のAI専門家やデロイト トーマツの様々なビジネスの専門家と連携することで、AIによるビジネスや社会の変革と、人々に信頼されるAIの実現を支援しています。

本連載「Deloitte AI Partners」では、デロイト トーマツにおける各領域のリーダーとの対話を通して、AIを単なるビジネスやサービスを強化するだけの道具という位置づけから、多様なステークホルダーに価値をもたらす全く新しいビジネスモデルやエコシステムを実現するエンジンへと進化させるためのヒントをお届けします。

今回は、デロイト トーマツ グループ CSO、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー パートナーの前田善宏に、イノベーション推進の取り組みについて話を聞きました。

 

森:まずは自己紹介を兼ねて、これまでのキャリアやバックグラウンドについて教えていただけますか。

 

前田:キャリアをスタートしたコンサルティング会社では、森さんと同じプロジェクトに配属されました。お客様組織の基幹システムでもある大規模検索システムを作るプロジェクトだったのですが、アーキテクチャレイヤーからアプリケーションレイヤーまで様々なプログラムを構築しました。その中で、検索システムなのでパフォーマンスを極限まで高めようと、Javaを逆コンパイルして改善していったり、保守性や拡張性を考えて既存のクラスを継承して新しいクラスを作ったりしていましたね。当時のJavaにはプレゼンテーション・レイヤーがなかったので、色々と工夫をしていたのを覚えています。

 

森:懐かしいですね。J2EEも出始めだったし、JSP(Java Server Pages)といっても、ページも何もなかったですよね。Javaの機能も今ほどきれいかつ十分に整備されていませんでしたし……。

 

前田:懐かしい時代ですよね。その後、大規模システムのためのハードウェアの調達業務を行い、キャパシティプランニングなども経験しています。こういった経験を通じてシステムやアプリケーション、ハードウェア、ネットワークなどについて理解を深めていきました。

次のキャリアでは少し違うことをしようと思い、「不正調査」や「M&A」を仕事にしたんです。不正調査では、どうやって不正が行われたのかというロジックを調査していきました。M&Aでは、相手方の財務だけでなく、そのビジネスがどう動いていくのか、ビジネスの方向性などはどうなっていくのかについて考えていましたね。こういった経験を通じて、ビジネスプロセスや事業ドメインの変化などについて理解を深めることができたのです。

その後デロイト トーマツに来たのですが、これまでの経験を活かして、ITコンサルタントや不正コンサルタント、M&Aコンサルタントなど幅広くやっています(笑)

振り返ってみると、ITやデジタルを黎明期から学べたのはとても運が良かったと思います。おそらくビジネスプロセスや事業ドメインを専門としていた人が、今、デジタルのことを勉強しなさいと言われると、結構苦しいと思いますからね。この順番で経験できたのは本当にラッキーでした。

 

前田 善宏/Yoshihiro Maeda デロイト トーマツ グループ CSO。デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー パートナー。外資系コンサルティング会社、財務アドバイザリー会社を経て、現在のデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社に入社。電力、運輸、製造業をはじめとして多業種において、戦略、財務、M&A、再編等のアドバイザリー業務に従事。

森:デジタルはビジネスでも必要な要素になっていますからね。当初からテクノロジーに触れていた経験は、確かに前田さんの強みになっているかもしれません。これまでの経験を活かしてデロイト トーマツでもご活躍なさっていますが、もう一つ、デロイト トーマツ グループのイノベーション推進も担当されていますよね。実際、どういうことをやっているのか教えていただけますか。

 

前田:イノベーションは新しい変革を起こすということがとても大切です。私は、理屈に囚われない自由な発想こそがイノベーションを生み出すと思っています。

イノベーションの入り口は、セクターとセクターの間に埋まっているものを探すこと。たとえばスマートフォンが登場する前は、電話とパソコン、音楽プレーヤーはそれぞれ別々のセクターでした。しかしスマホはそれらのセクターを横断し、爆発的に普及しました。イノベーションが起きたんです。

重要なのは、セクターがどう分かれているかということは本来的には顧客ニーズやマーケットニーズと無関係であるということ。その状況に対してデジタルの力を使うことでセクター間の橋渡しが容易になり、その結果として顧客目線で物事を考えられるようになるのだと思います。

 

森:なるほど。真に顧客のことを考えた際には周りの空気に流されず、セクター間の壁を突き抜けなければならない時もありますよね。おっしゃる通りだと思います。 20年前には想像ができなかった時代になりましたね。

 

前田:そうですね。デジタルの進化は激しく、最近では、ノーコードやローコードなども登場し、コードを打たなくてもプログラミングができる世界になってきました。ただし、そういった時代でも、基礎の部分の知識を前提とした「思考・想像」の意義は変わっていないと思うんです。

コードを書かなくてよくなったといっても、そのコアになる部分は誰かがプログラミングしていますし、それがどう使われるのか想像しながらパッケージ化しているはずです。

最近、幅広い領域で活用が進んでいるAIも、それをどういったシーンで活用されるのかといった想像力は不可欠ですからね。ノーコード/ローコードが普及していき、知識に関わらずアプリケーションを自在に作れるようになったとしても、デジタル人材はこれまでと同様に価値ある役割を担うと思います。

 

森:おそらく、コンサルタントの仕事も基礎の知識をしっかりと持ち、想像力をもって議論を進め、仮説とデータの間を行き来して、より創造的な「思考」を生み出すような方向にシフトしていき、これまで以上に「考え抜く仕事」になっていくと思います。いまAIについてのお話もありましたが、前田さんはAIをどう見ているのか教えていただけますか?

 

前田:僕は、AIはインフラだと考えています。たとえば、製造業の生産工程において製品の品質をテストしたいと考えたとき、AIが画像認識や音響での分析等、あらゆる手法でテストをしていくようになっています。AIは人や企業が何かをしようとするときそれを支援する基盤になっています。このようにインフラになったAIをどう使いこなすかが肝となるポイントです。

 

森:確かにAIは予測や認識、分類を行うことで、自動化、最適化を高度に実現してくれる技術であるので、次世代のインフラになっていますね。生産工程におけるリソースのさらなる活用や都市におけるエネルギー消費の効率化などはもちろんのこと、今や企業における部門をまたがったビジネスプロセスの自動化(ハイパーオートメーション)も可能になっています。また、このプロジェクトはどのビジネスパートナーと一緒に組めばいいのかというマッチングも容易になります。そのようなAIを前提としたイノベーションは、今後どうなっていくと思いますか。

 

前田:病気を診断し、不良品を検知するためにAIが使われるというケースも多いと思いますが、そういった特定のソリューションに対する適用というシンプルな使い方だけではなく、もっと違うものとAIを組み合わせた方が面白いと思います。想像の範疇を超えた奇想天外なものをAIプラットフォームにのせてほしいですね。

 

森:AIをイノベーションの道具にするということですね。ここでも、セクターとセクターの間を超えたり、またがったりすることが大切なのかもしれません。セクターの壁を取り払い、AIの認識も予測も最適化も用いて、一気通貫に処理することがポイントになるのかもと思います。

前田さんとお話ししていて感じるのはイマジネーションの重要性です。しかし、クライアントから相談を受ける中で、「どうやってイマジネーションすればいいのか」ということに悩んでいる人も多いと感じています。

前田さんの場合、エンジニアリングの経験もあり、多くの企業のビジネスプロセスを見てきているので、それらに裏打ちされた想像力、イマジネーションがあると思いますが、そうでない人に「イマジネーションを持て」と言っても難しい部分もあるのかもしれません。その点はいかがでしょうか。

 

前田:嫌でもイマジネーションを持つべきだと思います。停滞から脱却し前に進むためには、イマジネーションが必要だからです。

現在の日本では成長できずに、停滞している企業は少なくありませんす。その原因は、イマジネーションを生み出さない世界感にあると考えています。「今あるものを継続的にやっていこう」では、どうしても停滞してしまうんです。停滞から脱却し、前に進むには、新しいものを生み出して「改革」するしかない。

そうなると、どうやって新しいものを生み出していくのかという話になります。これについては、企業そのものが「多くのことに挑戦すること、多様なことを経験すること」だと思います。挑戦し、経験すれば、何が足りないかということについて向き合うことになり、必要なことが分かりますからね。そうすれば、次に何をすればいいかも自ずと分かるはずです。そして、停滞から脱却し前に進むことができると思うんです。

また、森さんがおっしゃる通り様々なビジネスプロセスを見てきた人なりのイノベーションもあるとは思いますが、それ故の「囚われ」もあると思っています。

実は、何も知らない人の意見がイノベーションに重要な役割を果たすことも少なくないんです。みんなが共通に持っている「基本」を知らないからこそ生まれる新しいアイデアがあります。子育てをしていると、子どもの純粋な質問にドキッとすることがあるじゃないですか。あれと同じようなことがイノベーションでも必要なのです。

DXにおいて実行する施策のプランニングをしていく際に、例えばブレインストーミングやアイディエーションのためのディスカッションをします。その際に、「どうやって考えていけばいいんですか」と聞かれることがとても多いんです。僕は「考える必要はなく、好きなことをしゃべっていればいい」と答えるようにしています。目的を持ってしゃべっている時より、方向性を持たない雑談の中から新しいアイデアが生まれることも多い。テーマを決めるから隔たってしまうことがあると思っています。そういった意味では、雑談から話をしていくというのが一つのコツだと思うんです。

 

森:そういった考え方はコンサルタントにも有効かもしれません。人事改革やCRMなどのお手伝いをしていると、その設定された世界感の縛りが強すぎてセクターを超えたり、またいだりすることが難しくなってしまうケースがあります。枠を超えた自由な発想を持ってお客様と話すことで、これまでとは違った反応が返ってくることもありそうですよね。

森 正弥/Masaya Mori デロイト トーマツ グループ パートナー。Deloitte AI Institute 所長。グローバルインターネット企業を経て現職。eコマースや金融における先端技術を活用した新規事業創出、大規模組織マネジメントに従事。世界各国のR&Dを指揮していた経験からDX(デジタル・トランスフォーメーション)立案・遂行、ビッグデータ、AI、IoT、5Gのビジネス活用に強みを持つ。日本ディープラーニング協会 顧問。

前田:「問題を解決」しにいくと、どうしてもクライアントと一緒に問題にフォーカスしていくことになって、狭い空間の中に閉じてしまいますからね。

僕は、他の人の意見に引っ張られるとイノベーションは起きないと思っています。空気に流されたり、誰かの意見に寄せてしまったりすると、「誰かの模倣」になってしまい、イノベーションではなくなってしまうんです。

そうではなく「僕はこうしたい」という所からスタートすることで、もっと面白いことができるようになります。実際の仕事になるまで時間はかかりますし、全然お金にならないかもしれません。しかし、一緒に何かを作り上げるという空気感が作れれば面白いですし、ある日突然、売り上げに繋がることも少なくありません。

 

森:なるほど。おっしゃるように雑談の中からアイデアや着想を得られることは多いと思います。しかしそれを次のステップにつなげなければ、新しいものは生まれません。次のステップに進むには、どうすればいいのでしょうか。

 

前田:そこがとても肝心なところだと思います。実は、思いつくところまでは誰でもできるんです。しかし、それを現実世界に落とし込むことができているケースは本当に数%しかないんです。

その理由は、ほとんどの人が「できない」と思ってしまうから。コンプリート能力というか、絶対にやり遂げてやると思っている人やチームにしかできないことがたくさんあります。そういった能力に長けているのがベンチャー企業です。

私はベンチャー企業の支援をするデロイト トーマツ ベンチャーサポート(DTVS)にも関わっています。このDTVSが支援しているベンチャー企業は5,000社ほど。これだけのコンプリート能力に長けている人材へアクセスできるのです。

DTVSで「こういうソリューションがないかな」「こういうことやっている人いないかな」と探してみると、かなりの確率でリーチできます。DTVSを使えば、イノベーションが起きやすくなると感じています。

 

森:イノベーションという文脈でいうと、デロイト トーマツは大手町・丸の内・有楽町(大丸有エリア)のイノベーションエコシステム形成に向けた大企業とスタートアップ、官・学が連携したプラットフォーム「Tokyo Marunouchi Innovation Platform」(TMIP)も支援していますよね。私もDXアドバイザーとして関わっていますが、TMIPのような場でも何かの化学反応が起きるようにしていきたいですね。

 

前田:本当にそう思います。ある調査によると、大丸有エリアにある企業の売り上げだけで、日本の3割程度を占めるそうです。世界の中でも、これだけ集中しているエリアはとても珍しい。とても魅力的なエリアだと思います。

なぜこのエリアでみんなどんどん実証していかないのか、とても不思議です。TMIPは様々な実証実験を手掛けています。さらにいうとそれを超えて、大丸有エリアを世界中のイノベーションのPoC場にしたら面白いと思うんです。ここに来ればビジネスのトレンドが分かります。日本における、東京における「はやりすたり」も分かりますし、海外から日本に何か新しいものを持ってくるときのPoCにも最適だと思うんです。

そんな思いから、デロイト トーマツ グループでは、コワーキングスペースであり、コ・イノベーションスペースでもある「デロイト トーマツ イノベーション パーク(Deloitte Tohmatsu Innovation Park)をオープンさせました。Web3・メタバースを使ったエレクトリックパークも用意しています。リアルとバーチャル、それぞれのパークを繋ぎ、多彩なイノベーションを起こしていきたいと思っています。

デロイト トーマツ イノベーション パークは、一緒に働き、実証実験していける場所になります。また、色々な企業が連携するためのハブとして機能するように、我々がカタリストになる予定です。

こういった活動が、デロイト トーマツ イノベーション パークに参加している企業に対してインスピレーションを与えることもあるでしょう。これまでのコワーキングスペースとは一線を画す場になるはずです。

 

森:デロイト トーマツ イノベーション パークで、トークンを使った自律的な組織を作るという話も聞いています。いわゆるDAO(Decentralized Autonomous Organization)などの仕掛けを活用しながら、Web3・メタバースの世界にもシームレスに繋がっていくようなコラボレーションの場になっていくということでしょうか。

 

前田:そうですね。そういった取り組みはとてもワクワクしますし、面白いと思うんです。それをTMIPと一緒にやっていくと、さらに面白いことが起きそうですよね。

 

森:Web3・メタバースを、デジタル上の新しいフィールドではなく、リアルの世界とリンクさせていくことでその意義を発揮するという取り組みは、確かに面白そうですし、実現できると多くのことが変わっていきそうですね。

 

前田:だからこそ、メタバース空間も一緒に作ろうと考えたんです。今後は、リアルな町作りでも、メタバース空間をセットで作るというケースが増えてくると思います。

現在、仮想空間のあり方が変わってきています。以前はあくまでも現実世界の複製で、その中で現実世界ではできないことを実現しようとしていました。ポリゴンゲームなどはそういった使われ方でしたよね。しかし現在は、仮想世界でシミュレーションしたことを現実世界にフィードバックしています。

 

森:デジタルツインシミュレーションプラットフォーム「NVIDIA Omniverse」などは、その好例です。仮想空間で工場のラインの組み替えなどをシュミレーションし、その結果を踏まえて実際の工場のラインを変更するということが実際に行われています。これも「セクターの境目を作らない」ということなのかもしれません。Web3・メタバースだからといってセクターを分けない。そうなると、リアルの世界とメタバースとどう融合させていくのかということを考えていく必要がある。そうして、Web3・メタバースがイノベーションのフィールドになっていくのかもしれません。

 

前田:そうなんです。とてもインパクトのある、面白いことになると思いますし、意義があることになると思います。

最近はDAOが注目されていますが、実は、DAOが何であるかを分かっている人はそう多くはありません。だからDAOはこういうものだということをデロイト トーマツが提示することで、デロイト トーマツも成長できますし、それに触発される人も出てくる。そういう人たちとの相乗効果でさらに成長していくこともできるでしょう。

 

森:Web3に関する技術について勉強するとトークンがもらえるDAOや、海外では喫茶店をDAOで運営するという事例も出てきていますよね。もっと自由にDAOを考えていってもいいのかもしれません。たとえば、僕は趣味で合気道をしているのですが、合気道サークルをDAOで立ち上げるみたいなことでもいいのかもしれません。そうすると、「合気道はしていないけど、応援したい」という人も参加できますしね。

 

前田:そういう世界観ですよね。中にはデジタル空間でしか合気道をしないという人も出てくるかもしれません。そういうコミュニティの中で、将来の合気道はどうあるべきか、大会運営はどうすればいいのかを相談すれば、いい答えが出せると思います。

こういった世界観は「まだ見ぬ世界」ですが、今始めれば、来年にはそういったコミュニティが作れると思うんです。人もコミュニティもエコシステムもひっくるめて何かをやりたい、盛り上げたいというときにはDAOが重要になると思います。企業内でも企業を超えても、セクターを超えてもいい。そこではDAOが武器になるでしょう。 

そのときのポイントは「儲けない」ということ。つまり、マネタイゼーションを意識しないということです。儲けようとするから敷居が高くなってしまうんです。そういった観点から言うと、儲けない空間をどう作っていくのかということが重要だと思います。

なぜこんなことを言うかというと、現在、少なくないプラットフォームがマネタイゼーションを意識するあまり「関所ビジネス」になってしまっているケースがあるからです。その関所を通るためにお金が必要というビジネス体験です。それって誰の得にもなっていませんよね。

だから、「儲けない」という姿勢が大切になります。関所のようなプラットフォームビジネスを志向するのではなく、新しい空間を作りたいと考えています。

 

森:そのためにも枠を取り払う必要がありますね。

 

前田:そうなんです。プラットフォームビジネスを壊さなくても枠を取り払えば、新しい発見がたくさんあると思います。探究心なども刺激されると思うんですよね。そういうことを提供できるのがイノベーションだと思っています。

 

森:今の部分はイノベーションをどうやって起こすのかというエッセンスがギュッと詰まっていると感じました。そういった思いがデロイト トーマツ イノベーション パークの取り組みにも繋がっているんですね。

 

前田:関所はもういらない。みんなでその町を作ったら価値が上がっていく、というほうがいいと思うんです。ただ、やり過ぎるとニューカマーが入りにくくなったり、一部の愛好家ばかりのメタバースになったりしてしまうリスクもあるので、開かれていることは重要だと思うんです。オープンでないとイノベーションは起きませんからね。

 

森:イノベーションの本質、神髄に迫るメッセージ、ありがとうございます。とても示唆に富んだお話をたくさん頂くことができました。前田さんはデロイト トーマツ グループのCSOとしての顔もありますが、こちらについても教えていただけますか。

 

前田:戦略は全員で作っていくものだと思っているので、みんなで一緒に考えてもらえればいいと思っています。それぞれのレイヤーや役割によって考える方向性は色々あると思いますが、戦略はそれぞれみんなで作っていくものだと思うんです。

私は、いろんな意見を聞いたり会話をしたりする中で、いいものがあれば、そこに時間と我々のリソースを投入してみんなで作っていこうということをしていきたいですね。

グローバルファームになってくると、海外から来るものを「正」としたがる傾向があると思いますが、僕の考えは違っています。みんなが日本のいいものを海外に輸出していこうと思ってほしいですね。

日本人は0から1を生み出すより、1から2、3としていくほうが民族的にあっているという話も聞くことがあります。しかし、0から1を生み出すことが不得意な民族ではないと思っています。「得意だけど怖い」という感覚が近いと感じています。石橋をたたいて壊すのではなく、0から1を産んでもいいという世界を作っていきたいですね。

グループ全体の方向性としても、メンバーに対してそういう世界を提供していくし、それに則って新しいデロイト トーマツを作っていければいいと思っています。

 

森:日本発のいいものを輸出したいというお話がありましたが、もうすこし具体的にお聞かせいただけますか。

 

前田:日本でもビジネスコンテストなどがありますが、それらも日本の中に閉じているものが少なくありません。日本の中に閉じこもるのではなく、グローバルに出て行くための仕組みが必要だと思うんです。

たとえば、日本のビジネスコンテストの優勝者を海外のビジネスコンテストに送り出し、入賞させようといった取り組みをしている団体もあります。そういった団体と連携し、そういったことができる日本のビジネスコンテストを作っていきたいとも思っています。

 

森:私はMIT Technology Review U35 Innovatorsの審査員をしていますが、探してみると、日本にもイノベーターはたくさんいるんです。グローバルを志向していない人も少なくないんですが、それでもいいんじゃないかと感じています。

 

前田:日本は世界の人口の60分の1程度しかいません。高齢社会なので、年齢はかなり上がってきています。そうすると、日本の中でパフォームするというよりは海外でも日本でもパフォームできるみたいな感じにしていかないと生み出せないものがたくさんあると感じています。

現在、ランゲージバリアがあるため、英語ができないといけないという話になりがちですが、AIの進歩によりその障壁も低くなるでしょう。そうすると海外に出て行きやすくなります。

一方、 海外から見たときのランゲージバリアも外れることになります。日本のいいイノベーションが、海外からの攻勢にさらされてしまうのです。そうなると守ってくれるものがありません。そういう時代が来る前に、積極的に攻めることで日本のイノベーションも守れるんじゃないかと思うんです。

 

森:日本の良さはたくさんありますからね。グローバルという視点からも多くの取り組みができるかもしれません。面白く仕事をしたい、自由な発想で仕事をしていくということが要諦なのかもしれません。

 

前田:仕事もそうですが、最初から最後まで自分の思い通りやれている人はいないと思うんです。やりたいと思っていた仕事ではない仕事をしているケースがほとんどだと思います。しかし思い通りではないものの、やってみて興味を持ち、深く入っていくという人は多いと思うんです。

そういった意味でも自分の方向性にも枠を作らず、楽しめるといいのかなと思っています。

 

森:自由に発想するということが通底していましたね。自由な発想をしながら僕たちも仕事をしていく必要があると感じました。ありがとうございました。

 

 

森 正弥/Masaya Mori

森 正弥/Masaya Mori

デロイト トーマツ グループ

デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員 外資系コンサルティング会社、グローバルインターネット企業を経て現職。 ECや金融における先端技術を活用した新規事業創出、大規模組織マネジメントに従事。世界各国の研究開発を指揮していた経験からDX立案・遂行、ビッグデータ、AI、IoT、5Gのビジネス活用に強みを持つ。CDO直下の1200人規模のDX組織構築・推進の実績を有する。2019年に翻訳AI の開発で日経ディープラーニングビジネス活用アワード 優秀賞を受賞。 東北大学 特任教授。日本ディープラーニング協会 顧問、企業情報化協会 AI&ロボティクス研究会委員長。過去に、情報処理学会アドバイザリーボード、経済産業省技術開発プロジェクト評価委員、CIO育成委員会委員等を歴任。 著書に『クラウド大全』(共著:日経BP社)、『ウェブ大変化 パワーシフトの始まり』(近代セールス社)、『大前研一 AI&フィンテック大全』(共著:プレジデント社)がある。 記事:デロイトデジタル「新しい世界へのマーケティングは、人とAIのコラボレーションによりもたらされる」 関連サービス ・ カスタマー・マーケティング(ナレッジ・サービス一覧はこちら) >> オンラインフォームよりお問い合わせ

前田 善宏/Yoshihiro Maeda

前田 善宏/Yoshihiro Maeda

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー パートナー

外資系コンサルティング会社、財務アドバイザリー会社を経て、現在のデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社に入社。電力、運輸、製造業をはじめとして多業種において、戦略、財務、M&A、再編等のアドバイザリー業務に従事。 M&A・再編においては、事業性調査、シミュレーション、事業デューデリジェンス、オペレーショナルデューデリジェンス、持株会社化、PMI(企業統合・分割支援)を中心に、幅広く業務に従事。   主な著書: 『M&A財務デューディリジェンス』(共著、清文社) 関連サービス・インダストリー M&Aアドバイザリー >> オンラインフォームよりお問い合わせ