AIとロボットの共進化がもたらす未来 ブックマークが追加されました
「AIとロボットの共進化」という言葉をご存じでしょうか?
これは、内閣府の政策で2050年に達成を目指す、より大胆な発想に基づく研究開発(名称:ムーンショット1)の目標の一つである、「自ら学習・行動し人と共生するAIロボット」において、重要なキーワードとなっています。
「AIとロボットの共進化」とは、ロボットを介して実世界の情報を自律的に取得・学習するAIと、AIの推論結果をもとに駆動・制御系で行動を実現するロボットが、相互に作用し共に進化していくことを指しています。
内閣府の2050年時点のターゲットでは、この共進化により、以下を達成することを目指しています1。
1) 人が違和感を持たない、人と同等以上な身体能力をもち、人生に寄り添って一緒に成長するAIロボットを開発する。
2) 自然科学の領域において、自ら思考・行動し、自動的に科学的原理・解法の発見を目指すAIロボットシステムを開発する。
3) 人が活動することが難しい環境で、自律的に判断し、自ら活動し成長するAIロボットを開発する。
この目標を設定した背景の一つとして、少子高齢化の進展による生産年齢人口が減少する日本において、課題先進国として、世界に先駆けて取り組んでいるという背景があります。
また、目標を達成することで、ゆりかごから墓場まで人の感性・倫理観を共有し人と一緒に成長するパートナーAIロボットや、自律的に実験・研究により新たな発見を行う研究・開発AIロボットなどが活躍することで、豊かな暮らしを実現する未来を目指しています。
ムーンショット目標3 2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現- 科学技術・イノベーション - 内閣府 (cao.go.jp) をもとにデロイト作成
1:ムーンショット目標3 2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現- 科学技術・イノベーション - 内閣府 (cao.go.jp)
「AIとロボットの共進化」に取り組まれている事例として、早稲田大学 尾形研究室2の取り組みを紹介いたします。
最近、AIによる画像の自動生成や車の自動運転など、様々な分野で実社会にAIが導入され始めております。
尾形研究室で研究されているロボットは、これらの様々な専用のAIを汎用的に使えるよう、ロボットに実装していくという取り組みになります。
「この取り組みは、スマートフォンのようなものだ」と、尾形先生は述べられています。
昔はカメラやゲーム機、電子辞書など、それぞれ専用のツールが存在していましたが、今はそれらがスマートフォンに集約されています。このスマートフォンのように、「専用のものを汎用にまとめる」というのが、尾形研究室で「AIとロボットの共進化」として取り組まれている内容となります。
まずは、複数の専用AIエンジンをロボットに搭載して切り替えていくことで、ある程度使いまわしができる汎用ロボットを目指しています。その後、将来的には共通的な部分を共有していくことで、一つのAIエンジンで様々なことに対応できる汎用的なロボットを目指しています。
このような取り組みにより、ムーンショット目標の、「自ら学習・行動し人と共生するAIロボット」の達成が期待されます。
2:Laboratory for Intelligent Dynamics and Representation (ogata-lab.jp)
デロイト トーマツ サイバー
スペシャリストマスター
鈴木 淳哉
電力会社にて18年間、国立研究開発法人にて4年間、システムのセキュリティ評価・監査やサイバーテロ対策演習の企画・実施などのセキュリティ関連業務、およびシステムの企画・設計・構築・運用・保守のマネジメントを経験。
デロイト トーマツではサイバーセキュリティのアドバイザリー業務を担当。
また、情報システムコントロール協会(ISACA)、日本ディープラーニング協会CDLEメンバーに所属し、調査・研究等の活動中。
論文:『購買データと移動データを用いた交流可能性の高いユーザの提案モデル構築』(2022年度人工知能学会全国大会(第36回)