Posted: 20 Sep. 2019 3 min. read

キャッシュレス決済導入が進行中、事業者は普及の先に何を目指すべきか?

10月の消費税率引き上げに伴いキャッシュレス決済が推進されている。キャッシュレス決済はクレジットカードや電子マネーなど様々な方法があるが、注目されるのはQRコード決済だ。当社が以前実施した「QRコード決済・モバイル決済の利用実態と今後の利用意向に関する調査」でも、QRコード決済経験者の9割超がその決済手段に満足しており、一度使うと定着が見込まれる。QRコード決済はコスト面での事業者側のメリットも大きい。専用のカード読込み端末も必要なく、加盟店手数料も安く抑えられる。これまでクレジットカードの加盟店になっていない小規模店舗にも導入しやすい。

事業者は、QRコード決済を単なるオフライン(店舗等)での決済の進化と捉えてはいけない。レジでのスマートな支払いはほんの第一歩にすぎない。つまりは、スマホさえあれば、レジといった特定の場所でなくどこでも決済が可能であり、事業者はアプリを通じて顧客とつながり、エンゲージメントを高めることもできる。QRコード決済先進国の中国では、無人レジや無人コンビニはすでに当たり前の存在となっている。日本でも、これを参考に日本流のサービスを基準とした、今までにない顧客体験を設計することを競う時代が早晩来るであろう。

普及が進んでいる決済アプリである「LINE Pay」「Pay Pay」などを利用するほかに、クラウドで提供されている決済システムを活用して自社専用の決済アプリを容易に作成することもできる。日本でも、タクシー事業者が提供する自社専用決済アプリなどがあるが、米国では、「ウォルマートペイ」がシェアを伸ばしている。割引クーポンと決済をセットにするなどで、顧客へのサービスを向上している。

QRコード決済の本質は、インターネットといった安価な社会インフラを活用した決済システムが構築できることにある。現在は、銀行口座やクレジットカードからのチャージが主流であるが、今後は給与支払いが直接キャッシュレス決済アプリにチャージされたり、事業者間の取引がキャッシュレス決済で行われたりすることも出てくるだろう。こうなると、これまでの金融機関を経由するお金の流れが大きく変わる可能性がある。そうなる前に事業者は、決済を金融機関任せにするといった固定観念を捨て、自社の事業やサービスにいかに組み込み、顧客体験の向上にどうつなげるか、見極めていくことが求められる。

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服部 邦洋/Kunihiro Hattori

服部 邦洋/Kunihiro Hattori

デロイト トーマツ グループ パートナー

都市銀行を経て、監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ、以下トーマツ)に入社。トーマツおよび米国デロイトコンサルティングLLPにて金融・人事コンサルティング、経営コンサルティングに従事。 ビジネスアナリティクスの担当パートナーとしてデータガバナンス、データ分析コンサルティング業務を多数実施。そのほか、アナリティクス、IoT、AIを活用した業務改善や新規事業設立支援、ビジネスモデル提案など技術を活用した経営コンサルティング業務に従事している。また、テレマティクスを活用した事業の立ち上げなど、IoTサービス事業を展開している。米国公認会計士、McGill大学MBA。