Posted: 20 Dec. 2019 3 min. read

COP25を踏まえた国際経済の攻防と、経営戦略

スペインで開催された国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)が期間延長の末、12月15日に閉幕した。来年から始まる“パリ協定”に向け具体的なルール作りが争点となったが、各国の戦略の違いが浮き彫りとなる結果となった。

 世界の国旗

そもそもパリ協定とは、世界共通の長期目標として、産業革命前からの平均気温の上昇を2℃より十分下方に保持。1.5℃に抑える努力を追求する世界全体の合意であり、2019年9月にはロシアも批准し、協定参加197カ国のうち187カ国が賛同している。

 

COP25の論点は「NDC(各国の温室効果ガス削減目標)の引き上げ」「排出量取引などの市場メカニズム(パリ協定6条)のルール作り」の2点であったが、双方とも合意に至らず、各国の気候変動戦略の違いが如実に見て取れた。

 

トランプ大統領が就任直後に宣言したように、アメリカはこの11月にパリ協定離脱を正式通告し、シェールガス等の強力な自国のエネルギー資源の優位性を確保しようとしている。中国やインド、アメリカ、ブラジルなどは「NDCの引き上げ」について反対意見を述べ、今後の人口増加も踏まえつつ、自国資源である石炭等の化石燃料の使用と自国で合理的な削減の道筋を模索している。

 

また同時に、ブラジル、オーストラリアなどは、市場メカニズムにおいて2019年以前に認められた排出権(京都クレジット等)の使用をパリ協定以後にも使えるように求め結論に至らなかった。

 

一方で、EUは会期中に「欧州グリーンディール」と名付けた環境政策を示し、2030年の削減目標を従来の1990年比40%から50%削減に引き上げ、気候変動分野でのイニシアティブ、ルールメイカーとしてのポジションを確立しようとしている。ただし、欧州が現在検討しているグリーンの定義であるgreen taxonomyでは、原子力が一旦グリーンの定義から外れたものの、再度検討の土壌に上がり、中国等の原子力の開発を進める国家の今後の取り込み、COP26での上記テーマの合意を見据えている。

 

欧州内でも、フランスはエネルギー移行法(173条)という企業の気候関連情報の開示のルールを策定し、グリーンファイナンスのイニシアティブの獲得を狙っている。一方、金融市場の中心であるイギリスでも、中国とグリーンファイナンス関連のパイロットプランが実施され中国との結びつきが強化されている。

 

世界全体での枠組みであるパリ協定に対して、賛同はするが、更なる目標引き上げや国際間協調には至らない、という現状は、その削減目標達成へのパスを各国が思惑のもと自国の経済状況を踏まえた合理的な方法を模索していることに他ならない。

 

この状況で、気候関連の将来像、パリ協定の達成は可能なのか、その達成へのシナリオは誰が描くのか。各国政府が国際協調ではなく分断されたまま、それでもパリ協定の達成に至る道筋があるのか。これについては誰もわからない。

 

しかし、昨今の気候変動の流れは金融市場からの要請に他ならず、ESG投資の拡大、ダイベストメント増加は企業の機会でもありリスクでもある。加えて一般消費者・NPO・NGOからの気候変動対応の要請も強まり消費構造の変化にもつながる。

 

このように外部環境が刻刻と変わる中で、企業は国内動向の様子見に甘んじることなく、世界全体の政策動向や社会情勢を積極的にモニタリングする必要がある。また、それだけでなく、自らが能動的に適切なシナリオと対応策を選択するような経営構造の変革が求められる。取り組むか否かが、行く末を左右する、企業にとってのティッピングポイントを今、まさに迎えていることに気づかなくてはいけない。

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丹羽 弘善/Hiroyoshi Niwa

丹羽 弘善/Hiroyoshi Niwa

デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員

気候変動、及び中央官庁業務に従事。製造業向けコンサルティング、環境ベンチャー、商社との排出権取引に関するジョイントベンチャーの立ち上げ、取締役を経て現職。 システム工学・金融工学を専門とし、政策提言、排出量取引スキームの構築、気候変動経営戦略業務に高度な専門性を有す。気候変動及び社会アジェンダの政策と経営戦略を基軸とした解決を目指し官民双方へのソリューションを提示している。   関連するサービス: ・ 政府・公共サービス ・ クライメート(気候変動)&サステナビリティ 関連記事: ・ 地球はこのままでは守れない──デロイト トーマツが考える「環境と経済の好循環」とは >> オンラインフォームよりお問い合わせ