グローバルで活動するeスポーツチームである「FNATIC」が2019年11月、日本への進出を発表した。日本人や日本居住者から選手を発掘し、日本のファンのニーズを大切にしたい、と表明しており、日本市場への期待が伺える。
eスポーツとは「エレクトロニック・スポーツ」の略で、広義には、電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉であり、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称とされるが、近年その社会的関心が高まりを見せている。日本におけるeスポーツ興行市場規模は2018年時点で約48.3億円と推定され、2019年から2022年までの年間平均成長率は19.1%、金額規模は約100億円に達すると予測されている。この市場規模は、eスポーツを用いた大会やイベントの開催に係る取引を指しており、スポンサーフィー、アイテム課金・賞金、放映権、チケット、グッズ、著作権許諾料等で構成される。
しかし、これはeスポーツ産業の一部を構成するものであり、全体を表すものではない。プロやそれに準ずる選手が参加する競技大会に関連する事業は可視化されている一方、より広い裾野を有しているアマチュアや一般プレーヤーを対象とした市場が見落とされているからだ。具体的には「日常的にeスポーツに触れ、楽しみ、練習を行う環境や機会の提供」や「草の根で大会を行う場合に試合の信頼性を担保し不正を防止する仕組み」等のニーズがあると考えられる。従来のスポーツに例えて表現するならば、eスポーツのプロリーグの興行に関心が集まるにつれ、今後は、競技場や用具のレンタル、スクールやトレーニング施設、また、プロに限らない試合・選手データの記録・管理等が注目分野になる可能性がある。特に、eスポーツ特有の論点として、デジタル空間における不正行為を防止して試合の公平さや、ゲームタイトルの価値を守ることの重要性等が挙げられる。現状はプレーヤーや愛好家等の有志によって秩序が保たれている側面はあるが、今後企業による包括的な管理が進む場合、その企業が実質的にeスポーツ界を支える大きな存在になり得ることも考えられる。
黎明期とも言える現在の国内eスポーツ市場において、eスポーツ事業単体で魅力的な投資対効果を得ることは容易ではない。eスポーツに関心を有しながらも、事業として踏み出すことに逡巡する企業は少なくないだろう。成長期待がありながらも市場の定量・定性情報が不十分であることにより、企業の事業計画の蓋然性を高めることが難しく、機関決定を下すことが困難である状況が推察される。一方、それは競合が少ないことの裏返しでもあり、先行者として市場の形成に寄与する機会であると言える。そのような環境下で市場への参入機運を高めるためには、自社事業とのシナジーを組み立てながら、中長期的な視点で市場と共に成長していく道筋を描くこと、そして、社会の共感を得るための将来ビジョンを示すことが重要なのではないだろうか。
新しいテクノロジー視点での、UI/UXの設計やアジャイル開発、リーンスタートアップ手法での新規事業立ち上げ支援を専門としている。クリエイティブプロダクションでのWeb・アプリやマルチメディアコンテンツ、インスタレーション、ゲーム制作のプロデュースやディレクションの経験も長く、テクノロジーとクリエイティブを掛け合わせたコンサルティングを提供している。また、コミュニティを企業の商品開発やマーケティング活動へ生かす運営支援も行う。 近年のeスポーツにおけるビジネスニーズより、eスポーツ事業推進室を立ち上げ、eスポーツのスペシャリストとしてスポンサーのチーム活用やチーム自身の資金調達支援にも従事。現在の主題は、Web3やコミュニケーションメタバースに関わるビジネス支援、デロイトが開発するDAOやコミュニティの貢献可視化ツールの開発を行っている。
コンサルティングファームおよび投資アドバイザリー会社等を経て現職に至る。現職では、TMT業界やライフサイエンス業界を中心としたクロスボーダーM&Aに係るアドバイザリー業務や、戦略・計画策定に係るコンサルティング業務に従事。近年は、スポーツビジネスに関する戦略・計画策定、実行支援、経営管理体制整備等に加え、eスポーツに関する市場分析や事業開発支援等を手掛ける。