Posted: Nov 05, 2019 3 min. read

日本の大企業はスタートアップ投資で成長市場・インドに注目すべし

革新性あるスタートアップの事業成長を加速させる仕組み、すなわちスタートアップエコシステム(生態系)を備えた拠点都市が世界で急増している。世界の調査ランキングには、創出されるスタートアップの数や規模、官民支援組織の広がりなどで優位性のある各国の都市が名を連ねる。スタートアップはテクノロジーを活用した新しいビジネスモデルの将来性を打ち出すことで、従来の金融機関やファンドだけでなく、大企業からも資金を引き寄せている。日本の大企業も様々なスタートアップ投資を手掛けるが、海外に注がれる視線は、未だにシリコンバレー一極集中といった感がある。日本企業は将来の自国市場の縮小を見込み、成長機会を求めて海外進出を加速させている。こうした中で、スタートアップ投資においても、シリコンバレー偏重を改め、海外の成長市場へと目を向けていくことが必要ではないか。

 

今、私が日本からのスタートアップ投資の観点で最も注目している国は、人口13億の巨大消費市場を抱えたインドだ。インドはスタートアップエコシステムが急成長しており、調査会社StartupBlinkの2019の国別ランキングでも17位となり、前回調査から20位上げた。都市別にはバンガロール、ニューデリーがトップ20に入り、ムンバイ、チェンナイ、ハイデラバードと続く。ヘルスケアやコンシューマーテクノロジーが有望産業で、高まる中産階級のニーズを背景に、遠隔診断や宿泊予約などのスタートアップがハイスピードでイノベーションを起こしている。一方で巨大なマーケットと大量な優秀人材に比して、資金についてはまだ不足感があり、ユーザーとなるグローバル企業も少なく、ものづくりのクオリティなどについても課題を抱えていると言われる。

私は、こうした点を踏まえ、日本の大手企業には、インドのスタートアップと相互補完関係を構築し得る大きなポテンシャルがあると見ている。日本企業が今後の持続的成長を図る上からも、インドのスタートアップと、彼らが活動の基盤とするインド市場そのものの成長を取り込んで行くことが戦略的にも重要だと考えている。しかし、実際には、多くの日本の経営者は過去の失敗経験を引きずっている面があり、「リスクが高い」「文化が違う」といった伝統的なインドのイメージにとらわれ、最新の状況を捉え切れていないようだ。インドは有能なエンジニアが大量輩出されるだけでなく、近年はGoogleなど米大手企業トップに就くような人材がシリコンバレーから戻る動きもでており、ユニコーン(企業価値10億ドル超の未公開企業)も20社程見込まれるなど、世界的な優良企業が生まれる基盤が整いつつある。

私が社長を務めるデロイト トーマツ ベンチャーサポートは、2016年からインドでスタートアップを集めたピッチイベントMorning Pitchを定期開催しており、こうした活動を通して、私自身、インドのスタートアップエコシステムの最近の急速な成長を肌で感じている。インドにおいて、リーズナブルな金額で優良なスタートアップに投資するなら、この2~3年が正念場になるだろう。5年、10年後には、今の中国のスタートアップのように、バリュエーションが高騰し、また、日本企業からスタートアップへの支援提供の余地も徐々に狭まることから、有望な投資機会を見つけるのが極めて難しくなる可能性が高い。

そのため、今、日本の大企業がとるべき戦略は、インド国内で積極的に優良なスタートアップを発掘し、投資を行った上で、彼らのユーザーとなり、売上に貢献したり、ものづくりの技術支援をしたりすることでスタートアップを育成する、いわばインキュベーターの役割を先行させることだ。そして、インドマーケットの拡大を見つつ、投資先スタートアップとのリレーションを加速させるジョイントベンチャーや、さらにM&Aも含めた成長戦略により事業を拡大し、自社のインドでの売上の最大化を狙っていくことが肝要だ。

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▼Deloitte Tohmatsu Venture Support MD Yuma Saito On Why Japanese Investors Need To Focus On Indian Startups

https://inc42.com/features/deloitte-tohmatsu-venture-support-md-yuma-saito-on-why-japanese-investors-need-to-focus-on-indian-startups/

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斎藤 祐馬/Yuma Saito

斎藤 祐馬/Yuma Saito

デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社 代表取締役社長

2010年よりトーマツ ベンチャーサポート株式会社(現 デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社)の事業立ち上げに参画。 2019年デロイト トーマツ ベンチャーサポート 代表取締役社長。公認会計士。 世界中の大企業の新規事業創出支援、ベンチャー政策の立案まで手掛けている。起業家が大企業100人にプレゼンを行う早朝イベントMorning Pitch発起人。主な著書は『一生を賭ける仕事の見つけ