Posted: 12 Sep. 2019 3 min. read

アフリカ開発会議(TICAD)を振り返る(前編)

横浜宣言で注目すべきポイントとは

第7回アフリカ開発会議(TICAD)が8月30日に「横浜宣言」を採択して閉幕した。私は前職の時代を含め、TICAD Ⅴ(2013年)、TICAD Ⅵ(2016年)、及び今回のTICADに関与してきた。会場で様々な人と意見を交わす中で、今回のTICADの特徴は二つあると感じた。

微笑む黒人女性

一点目は、「民間」が主役に謳われるようになったことだ。近年は中国等の新興国がアフリカ進出を強めており、豊富な資金力をもとにアフリカの債務を膨張させるリスクも孕んでいる。日本によるアフリカの開発はこれまで政府の役割が大きかったが、このように外部環境が変化する状況下では民間企業が主体となることの意義は大きい。

日本政府は、今後3年間で日本から200億ドル(約2兆1千億円)を上回る民間投資の実現を後押しする方針を打ち出しているが、これは「援助国の思惑主導ではなくアフリカの社会課題やニーズに対し、アフリカをビジネスパートナーとした形で解決することを目的とする」ことを意味しており、今後の民間企業の進出は増えていくだろう。

二点目はイノベーションに重点が置かれている点だ。

アフリカの経済成長やSDGsの達成のために、科学技術イノベーション(STI)がこれまで以上に重要視されている。TICAD Ⅴまではインフラ等の重厚長大産業、言わばハード面への投資が多かったが、今回のTICADでは先端技術の社会課題解決への活用など「ソフト」の方向へとシフトした印象を受けた。

アフリカの発展のために今後、日本企業がイノベーションを起こせる分野としては、ヘルスケアや農業、更には中小・スタートアップ企業に注目が集まっている。

■農業:農機や生産性を高める農法を日本から展開しようとしている。アフリカは「農地を今後拡大可能な唯一の大陸」と言われており、農業の生産性を向上させることは地球の命題でもある。

■ヘルスケア:「アフリカ健康構想」に基づき、様々な技術を持つ企業のコンソーシアム形成が進められている。アフリカではHIV・マラリア・結核等の感染症はいまだ早急に対応すべき課題である一方、経済成長や食生活の変化により生活習慣病も増えている。予防や治療に関する日本の技術やノウハウを活かしていきたい。

■中小・スタートアップ:アフリカは規制が緩く、また通信・物流などのインフラが整備されておらず、既存インフラに頼らないような新たなイノベーション創出のニーズがある。日本の中小企業やスタートアップの技術力を活かせる機会が十分ある。

こういった分野で民間の活躍のために政府が果たす役割について今回は議論された。アフリカは規制や政策等の制度面が整備不足であり、未整備であるが故の民間事業機会もある一方で、デメリットの方が大きいのも事実。その解消にODAが果たす役割は大きい。

 

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