Posted: 10 Apr. 2020 3 min. read

5Gがひらくフィジカルな世界のビジネス。カギはデータの活用と管理

先月末、5G(第5世代移動通信方式)サービスが通信各社よりいよいよ開始された。この先、従来のように国内で高いシェアを誇るiPhoneが5Gに対応してからが本格的な移行開始となるか、それとも続々と登場する多彩な5G対応Androidスマホが乗り換えを促すか。いずれにせよ5Gの特長を活かした市場への訴求が鍵となる。

5Gがひらくフィジカルな世界のビジネス。カギはデータの活用と管理

しかし、5Gはスマートフォンの高性能化だけを目的とした技術基準ではない。5Gは特長として「超高速」「低遅延」「多接続」と言われており、これらの特長を活かすべく通信事業者は、病院や自動車メーカー、教育機関などと連携し、遠隔医療や自動運転、仮想体験学習等の実現を目指している。この取り組みにおいて通信事業者が目指すのはパソコンやスマホの画面などモニターの先の世界の市場である。それは従来の通信、という領域を超えたモニターの先の物理的(フィジカル)な物や空間におけるサービスそのものを含む世界である。この世界がもたらすインパクトは大きい。

改めて、物理的な世界が直接通信を実現する世界とは何だろうか?過去を振り返ると、固定電話から携帯電話が普及して、場所に縛られない会話が可能になった。スマートフォンが普及することで、場所の制約に囚われずスマホを介してインターネットに接続できる世界が確立された。これから先、5Gの世界ではモニターを超え、物や空間が場所に縛られない世界が徐々に実現すると想像する。

例えば、遠隔医療であれば、大病院の医師が遠く離れた遠隔地の患者を医療するという、物理距離からの解放であり、建設機械を遠隔で操作する事は物理作業の危険からの解放、遠隔教育では教育機会の格差の解放といった形で説明がなされる。

一方、注意も必要である。この新たな世界の実現には「データ」の位置づけが従来より格段に重要となる。従来に比べてデータ量が増える事は勿論であるが、データ分析によるビジネス判断の影響範囲や、分析として使用するデータ所有権の再定義、データの管理、運用のためのサイバーセキュリティへの対策等、数多くのデータに関する論点を捉える必要がある。そう考えると5Gとは単なる4Gの延長上にない、物理世界のデータ活用ビジネスと言えるだろう。

この難易度が高いと思われる5Gに対して敢えて取り組む必要があるのか?国内の場合、急速な人口減少によって、国内市場の縮小、市場縮小に伴う投資先としての魅力の低下、人々の集積や交流を通じたイノベーションを生じにくくさせることによる、成長力の鈍化等が懸念されている。5Gの位置づけは、このような将来の懸念への対策の意味合いは勿論、物や空間など物理世界をより快適で、生産的かつエネルギーや環境等に配慮した「人」が中心となる新たな世界の創出。この新たな世界による働きやすさ、暮らしやすさを目指す為だと考えられる。換言すれば、5Gへの取り組みは、将来に向けて人々が豊かな社会を実現する為のプロセスの避けられない一歩である。

従来であればこのような取り組みは通信事業者等一部の限られた企業に限定された議論であったが、5Gでは通信事業者に限らず事業者になれる「ローカル5G」の仕組みも総務省で準備された。このスキームにより、通信を生業としない企業が主体者となって、物理的な物や空間が直接通信、デジタル化を実現することで、企業や事業に新しい付加価値を創出する機会が訪れるかもしれない。

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上田 淳/Jun Ueda

上田 淳/Jun Ueda

デロイト トーマツ グループ シニアマネジャー

有限責任監査法人トーマツ リスクアドバイザリー事業本部所属。大手通信事業者でモバイルソリューションの新規企画部門に所属、後にデジタルマーケティング業務、ビッグデータ業務に参画後、デロイト トーマツに入社。専門的知見を活かした、コラボレーション型のアドバイザリー業務を手掛け、官公庁での行動経済学データ分析支援、通信を活用した医療分野での課題解決モデル策定、金融分野でのデジタルマーケティング戦略推進等に従事。