Posted: 21 Jul. 2020 2 min. read

次世代を見据えた決算プロセスを構築する

【シリーズ】COVID-19とレジリエンス経営

日本企業の多くが期末決算を迎えた4月上旬に緊急事態宣言が出され、多くの企業は決算や監査の業務をリモートで対応することとなった。従前からの業務効率化・ガバナンス強化といった課題に加え、COVID-19状況下で新たな課題も浮き彫りになった。次世代を見据えた決算プロセスの構築について解説する。

本稿は「COVID‐19とレジリエンス経営」と題し様々な経営課題を毎回20分で解説する連続Webinarからの抜粋記事です。

 

平時と有事における決算プロセスの課題

決算業務の従前からの課題の一つ、効率化の点では、スプレッドシートやチェックリストの一部標準化が進んだもののまだまだ属人的であり、人材不足やグループ内各社で決算方法が一元化されていないなどの課題がある。さらに紙や手作業の多さもまだまだ残る。ガバナンスに関しては、特に海外子会社においてコミュニケーションの壁や異なる会計システムを使用していることなどから、効果が限定的になる傾向にある。

一方、COVID-19という有事では3つの課題が浮き彫りになった。1点目は急速に進んだリモートワークで、決算業務をいかにリアルタイムで管理・把握するのか、紙やマニュアル処理のままの承認プロセスにリモート環境でどう対処するのか、リモートワークのツールをどのように使いこなすのか、といった課題。2点目は、海外駐在員がCOVID-19の影響を受けて帰任する中、海外子会社の管理・モニタリングが難しくなり、決算パッケージが提出されるまで決算状況を適時に把握できないという問題があった。3点目は監査対応で、膨大な紙の資料の取扱いや、ほぼ対面のコミュニケーションであった外部監査をどのように進めていくか模索し、通常以上の時間を要した。

COVID-19における決算業務については、日本CFO協会が3月に行った調査や、当社内で行ったアンケートを通しても、紙の書類や証跡のデジタル化の遅れ、テレワークを想定したルールの未整備、決算作業進捗の可視化に課題を感じるという回答が見られた。

次世代を見据えた、決算プロセスのデジタルトランスフォーメーション

業務効率化、ガバナンス強化、リモートワーク対応への課題は、決算プロセスをデジタルトランスフォーメーションすることで大きな効果を期待できる。

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例えば、業務効率化ではテクノロジーを利用した業務標準化や自動化、ガバナンス強化についてはダッシュボードを用いてリアルタイムでの子会社管理や承認履歴の一元管理可視化を実現できるだろう。リモートワーク対応では、作業進捗や個人別タスクの可視化、証憑の一元管理なども期待できる。

日々の経費精算の電子化にはConcurというツールや、タスク管理にはBlacklineといったツール活用も有効である。ダッシュボードで状況をリアルタイムかつ一元的に管理できるほか、クラウドのシステム上で作成者と承認者を明確に表示することで、内部統制上のエビデンスにもなり、ガバナンスの強化にもつながる。勘定照合では、外部データとうまく連携させることで自動照合が可能となる。Webinarでは、詳しくBlacklineを利用したペーパレス化や承認フローの可視化、信頼性向上の効果の事例を紹介している。現状の決算のプロセスでは、経費精算、勘定照合、伝票承認などの業務全般において紙や手作業が多く残っており、デジタルツールを使うことで作業の自動化はもちろんペーパレス化も実現できる。

COVID-19の影響の長期化や、働き方改革という観点からも、リモートワーク環境の構築を今後一層進めていく必要がある。デジタルツールを利用することで平時の課題解決とともに有事の際にはリモートワークに円滑に移行する環境も整うことになるだろう。企業には次世代を見据えた決算プロセスの構築を進めていただきたい。

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土畠 真嗣/Shinji Dobata

土畠 真嗣/Shinji Dobata

有限責任監査法人トーマツ パートナー

監査・保証事業本部 監査アドバイザリー事業部 内部統制・経営体制アドバイザリー部 部長を務める。 大手グローバル製造業の監査業務、決算早期化、海外子会社管理、決算領域のデジタル化等のアドバイザリー業務に従事。デロイトの日系企業サービスグループのグローバルオフィスでタレント担当及びインド・韓国の日系企業サービスグループリーダーも兼務。シンガポール駐在経験あり(2009~2013年)。公認会計士。