Posted: 01 Jul. 2020 2 min. read

第6回 待ったなし! 自動車業界におけるサイバーセキュリティー対応の展望(下)

【シリーズ】続・モビリティー革命2030

今回は、クルマのサイバー脅威への対応におけるいわゆる「競争領域」に当たる製品(クルマ)から展望する。

車両のコネクテッド化進展に伴い、品質保証の観点からも、自動車メーカー及び部品メーカーにとって、自社が提供する製品(車両、部品等)・サービス(メンテナンス、モビリティサービス等)に対するサイバー脅威への対応が喫緊の課題である。

本稿は2020年5月21日に日経xTECHに掲載された「続・2030年モビリティー革命を読み解く」を一部改訂したものです。https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01278/00007/

 

しかし、クルマのサイバーセキュリティー対応には、使用環境、耐用年数といった車両自体の厳しい品質基準も求められるため、対策を講じる事は容易ではない。また、この新たな取り組みに対して発生するコスト回収をどう行うかも重要な論点となる。

サイバー攻撃により、生命の危険にまで影響を及ぼす可能性があるクルマにおいては、インシデント発生前後で網羅的にセキュリティー対策を講じる必要があり、様々な関係者を巻き込むため推進する上では対応内容と役割分担の明確化が肝要だ。加えて、具体策の検討時には、提供するサービスレベル(Quality)・コスト(Cost)・対応速度(Delivery)のバランスを取りながら、要求品質を担保することも求められる。

 

クルマの電動化・情報化・知能化の進展に伴い、車両におけるソフトウェアの重要性が増すため、今後クルマの中にも高性能なCPUやメモリが搭載され、車内ネットワークもICTのネットワークと近い形になるであろう。また、5Gネットワーク等、車外のデジタルインフラの進展も、車両のコネクティッド化や自動運転化の更なる追い風となる。しかし、この様な技術進歩に比例して、車両へのサイバー脅威も益々増え続けるであろう。

技術進歩に伴い、車両へのサイバーセキュリティー対応の必要性が高まる事で、従来以上に増加し、複雑化する業務へ投下するリソースに対し、更なる選択と集中が求められる。

サイバーセキュリティー対応は、自社内に留まる話ではない。セキュリティー管理が脆弱な場合、自社に被害をもたらすだけでなく、社会全体への「加害者」にもなり得るため、業界共通のルールや基準を踏まえた協調的な視点が不可欠だ。

その上で、自社を競争優位なポジションに置くために、潮流を読み解き、他社との差別化につながる戦略を迅速かつ具体的に実行しなければならない。

 

いつ起こるとも限らないサイバー脅威に対し、常に複数の選択肢を備えておくことが、企業の持続的成長には不可欠である。

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村上 裕一/Yuichi Murakami

村上 裕一/Yuichi Murakami

シニアマネジャー

米国ソフトウェア大手オラクルを経て現職。20年超一貫して自動車業界における中長期経営戦略、技術戦略、BPR等のコンサルティングに従事。バリューチェーン全領域における戦略から実行まで数多くのコンサルティング経験と実績が強み。 近年は車両開発におけるソフトウエア開発関連、特に車両のサイバーセキュリティ対応に関するプロジェクトを多数手掛ける。