Posted: 08 May. 2020 3 min. read

「広告の未来」のシナリオプランニング

COVID-19の影響は、広告業界にも大きな変化の波をもたらしている。米国の広告業界団体Interactive Advertising Bureau(IAB)が発表したCOVID-19の影響に関するレポートでは、広告主・広告会社/媒体社・メディアの双方の停滞が示され、リーマンショック以来の低迷期に入ることが予測されている*1。日本でも現段階(2020年4月)ですでにテレビ広告におけるACジャパンの本数が増加するなど、企業による広告出稿の縮小傾向が見られ*2、今後さらなる市場停滞の中でプレイヤーの立ち位置が問われることになることが予想される。また、深刻化する状況の中で消費者の目が厳しくなるため、広告におけるメッセージの重要性がますます高まることも想定される。すでに広告主が現在の状況を反映しキャンペーン展開に留意するという内容面での変化が起こりつつある*34。

ポストCOVID-19の世界では、人々の生活意識や様式、情報取得手段に更なる変化が訪れ、それに伴いモノと情報の消費動向もこれまでになくダイナミックに変容していくことになるだろう。その変化に伴って、人々の消費を喚起し、購買につなげるための広告、そして社会全体に何かしらのテーマを訴えかけるような広告の在り方がさらに多様化していくのではないだろうか。

 

広告業界に関してデロイト トーマツ グループでは、将来予測レポート「The Future of Advertising」*5 を発行し、テクノロジーの進展と消費行動の急激な変化を踏まえた4つのシナリオを提示して来るべき将来像を分析している。本レポートが2019年10月にグローバルでリリースされた段階ですでに、デジタルプラットフォーマーの隆盛やオンライン広告の台頭といった観点で、広告業界は構造転換の岐路を迎えているという認識であったが、その後更なるインパクトが訪れているということになる。

 

レポートでは、デロイト ドイツのセンター・フォー・ザ・ロング・ビュー(CLV)*6 のシナリオ開発アプローチに基づき、広告における「クリエイティビティの方向性」「マスマーケティングの方向性」という2軸をもとに、4つの主要な将来予測シナリオを設定している。本文中では、クリエイティビティが従来のように人の手に委ねられるか/AI等のテクノロジーにより最適されるようになるか、マーケティングがマス向けのリーチを狙ったものか/パーソナライズされたものか、という要素を組み合わせることにより、具体的なシナリオ下における市場環境やプレイヤーの立ち位置を示し、今後ステークホルダーが取りうる戦略立案のヒントが導出されている。

 

「The Future of Advertising」の内容は、COVID-19問題が発生する以前の状況を前提として作成されているものの、広告業界の基本構造をもとに変化要素を捉えた構成になっているため、その後の大きな社会的変化を踏まえたうえでも広告業界の将来像を検討する上での議論の下地として機能すると考えられる。デロイトTMTインダストリーではCOVID-19がメディア業界に与える影響についてのレポートもアップデートしており*7、これらの最新動向とレポートのシナリオを併せて注視することで、劇的に変わりゆく世界における広告/メディア業界の変容を見据えた分析・戦略検討に資する材料になるはずである。

図表:「Future of Advertising」4つのシナリオ概要
図表:「Future of Advertising」4つのシナリオ概要 ※クリックかタップで拡大

 

*1 Coronavirus Ad Spend Impact: Buy-Side, IAB, 2020/3/27: https://www.iab.com/insights/coronavirus-ad-spend-impact-buy-side/

Coronavirus Ad Revenue Impact: Sell-Side, IAB, 2020/4/15: https://www.iab.com/insights/coronavirus-ad-revenue-impact-sell-side/

*2 新型コロナウイルスとテレビCM, CM総合研究所, 2020/4/16:http://www.cmdb.jp/service/pdf/release20200416_2.pdf

*3  Ibid.;CM総合研究所のリリースで、クリエイティブ面での広告内容の変化も分析されている

*4 例えばGoogleは、COVID-19の状況を踏まえた広告キャンペーン運用上の留意点について取りまとめている; 新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大に応じたキャンペーンの運用方法について, Google, 2020/4/24アクセス:
https://support.google.com/google-ads/answer/9790909?hl=ja

*5 デロイト トーマツ, 「The future of advertising 広告の未来:4つのシナリオと生き残るための道筋」, 2020/3: https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/technology-media-and-telecommunications/articles/md/future-of-advertising.html

*6 Center for the Long View: https://www2.deloitte.com/global/en/pages/strategy/topics/gx-clv-en.html

*7  デロイトトーマツ, “COVID-19: メディア・エンターテインメント業界への影響”, 2020/4/3: https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/technology-media-and-telecommunications/articles/md/covid-19-impact-on-the-media-and-entertainment-sector.html

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柳川 素子/Motoko Yanagawa

柳川 素子/Motoko Yanagawa

デロイト トーマツ グループ マネジャー

デロイト トーマツ コーポレート ソリューション合同会社 Research & Knowledge Management(RKM)所属。メディア関連シンクタンクでの調査研究業務を経て現職。TMT(テクノロジー・メディア・通信)セクター担当として、関連インダストリーの情報収集や「TMT Predictions」をはじめとするレポートの編集・発行等に携わっている。