Posted: 05 Jun. 2020 2 min. read

第1回 自動車業界を巻き込む大きなうねりMX・EX・DX

【シリーズ】続・モビリティー革命2030

移動の在り方の変化、CO2排出削減に対する社会的要請のさらなる高まり、そしてあらゆるもののデジタル化。我々が上梓した書籍「モビリティ革命2030」で2016年に予測していた世界からさらに幅を広げ加速度的に変化している自動車業界、特にエネルギー領域およびデジタル化については当時の見立てをはるかに超えた世界になっている。

本稿は2020年4月16日に日経xTECHに掲載された「続・2030年モビリティー革命を読み解く」を一部改訂したものです。https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01278/00003/

 

さらに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の爆発的感染拡大の影響を受け、自動車業界、ひいては世界経済は窮地に追い込まれている。しかし、このような時だからこそ、我々日本企業の強みである実直さ、粘り強さ、助け合い精神を活かし、やるべきことをしっかりやり、将来に向けた取り組みを加速させていくことが重要だ。

この連載では、自動車業界を取り巻く環境の急激な変化を整理し、自動車メーカー、部品メーカー、カーディーラーそれぞれの視点で新価値の創造、既存事業の効率化について、具体的な実践手法を論考していく。

自動車業界に定着した「CASE」というキーワード。これは本来エネルギーソースや人の移動の在り方といった前提条件を紐解き、結果としてクルマという消費財ないしは、その購買過程が起こす変容を指していた。そして今、「CASE」の前提条件は3つのトレンド「MX (Mobility Transformation)」、「EX (Energy Transformation)」、「DX (Digital Transformation)」に整理され、自動車業界はさらなる過渡期に突入している。

MXによる自動車業界が受ける変化は言うまでもなくMaaS(Mobility as a Service)である。大気汚染対策を主とした都市部の交通最適化を目的に、ヒトの暮らしを支える移動をスマートデバイスや決済手段で最適化する概念として誕生し、都市部から地方部へ拡がりつつある。さらに、昨今では余暇の移動便益を向上する観光MaaSも検討されている。都市型、地方型、観光型、の3種のMaaSの出現に伴い、クルマは保有から利用へ、高稼働を実現するマストランジットとして準公共交通の位置づけが濃くなっていく。しかし、公益性を求められる移動関連サービスの収益化は容易ではないため、自らの業種と移動構造を踏まえたポジショニング戦略と、移動以外の収益源の見極めが重要となる。

EXは、一つには従来の中央集約型の発電所と送配電網が、各地域に分散した再生エネ発電所とデジタル技術を活用したグリッド全体での需給調整に変わることを指す3D(Decentralized, Decarbonized, Digitalized)がある。加えて、2014年9月に発足した「RE100(Renewable Energy 100%)」プロジェクトなどのライフサイクルアセスメントやサーキュラーエコノミーの進展もEXの一つといえるだろう。

この変化により、部品を含むクルマ一台を生産した過程で利用したエネルギー源がクリーンかどうかや、EVに充電した際の電気がクリーンかどうかが規制に組み込まれる可能性がある。

一方でEXの到来により、自動車業界はパワートレインの種類の検討のみならず、例えば再エネ発電や充電器の部品や、需給調整に係る制御ソフトなどの自社の強みを生かした幅広の機会を見出せるようになるだろう。

自動車業界におけるDXは、まず一つにはMX・EXをデジタル技術で実現する新価値創造の側面がある。しかし、新規事業創出あるいはCASE対応投資の原資を獲得する為には、既存事業の圧倒的な効率化が必要となる。そう考えるとバリューチェーンにおいて、DXを活用した業務改善の検討が、もう一つの側面として挙げられるだろう。

かつてない急激な環境変化に直面している自動車・モビリティー業界ではあるが、環境に配慮した持続可能な開発を行いつつ、デジタル技術を活用して、移動に紐づく産業へ投資を促し、エコシステムを構築して地域経済を拡大し、加えて日本で生み出したこのモデルをグローバルに展開していくことで、単なるホラーシナリオではなく新たな事業の機会を見出せるのではないだろうか。

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新見 理介/Risuke Shinmi

新見 理介/Risuke Shinmi

デロイト トーマツ グループ シニアマネジャー

自動車メーカーにて、小型世界戦略車の開発、先進安全システム研究開発等を経て現職。自動車、電機、エネルギー分野にて官公庁や企業向けのマクロトレンド・技術動向分析・戦略策定の支援を実施している。電動車の普及と技術進化、自動運転MaaS時代の移動の在り方と社会的影響に関する講演等多数。