Posted: 17 Jun. 2020 2 min. read

新しい観戦体験が「スタジアムで観られない」を「デジタルで観たい」に変える

規制が緩和されつつも、スタジアムやアリーナでの観戦が限定されるとおのずとネット配信やテレビなどでの中継の視聴者が増えてくる。従来の一方通行の試合中継では満足しないファンも増えるだろう。「会場に行けないけど応援を伝えたい」「視聴しながら応援している人と繋がりたい」というニーズに応えるサービスが企画され、提供されはじめている。デロイトトーマツコンサルティングとしても応援をサポートするアプリケーションサービスの企画を進めている。

「ネットやテレビの視聴」自体をいかにリッチにするかは重要だが、「観戦体験」の重要性を提唱しているデロイトとしては、たとえそれが「視聴」であったとしても「観戦体験」が大切だと考える。つまり、「試合情報を知った瞬間」に始まり、情報収集やチケット購入を経て、試合前にワクワクし、試合観戦後もワクワクが続く観戦体験である。

デジタルコンテンツによる「観戦体験」

試合情報を知った後、スタジアムグルメやイベント情報を確認してスタジアムグルメを予約すると試合当日に自宅にデリバリーされる。試合開始の1時間前からVRボールパークでイベントが行われ、参加したり、デジタル応援専用グッズを買ったりして楽しむ。試合中はリアルタイムスタッツやデジタル演出を使ったオリジナルの体験を堪能する。もちろん応援アプリなどを使って自分たちの声援をスタジアムに届けることも可能だ。試合後はファンサービスとしてデジタルサイン会を開催したり、試合映像を振り返りながらリモート飲みを開催したりする。選手や関係者が飛び入りしてくるかもしれない。

90分間(サッカーの場合)のネット視聴を強化するのではなく、デジタルでしか実現できない「観戦体験」を提供するのである。

 

このサービスが定着すれば、スタジアムやアリーナの入場制限が解除されても、デジタルの体験を一つの選択肢として提供することができる。チケット完売で行けない、住んでいる地域が遠い、病気や怪我などが理由でスタジアムに行けない人たちも試合のみの視聴ではなく前後も含めた「観戦体験」をすることが可能になる。リアルなスタジアムやアリーナでの混雑や席取りなどネガティブな体験をした人は、むしろデジタルを選ぶかもしれない。それが新たなリピーターとなったり新規ファンの獲得につながったりすることも期待できる。

 

観戦体験はリアルでもデジタルでもクラブだけで実現するものではなく、共感するパートナーやスポンサー企業と一緒に作っていくものである。デジタルの世界で完結する体験に協賛してくれるパートナーも出てくる。また地理的に離れている企業がパートナーの場合、その企業の社員がなかなか観戦に行けないこともある。デジタル観戦体験が提供されれば、日本中、世界中のパートナー企業の社員が観戦体験を楽しむことができる。自分たちのクラブの試合観戦を福利厚生プログラムに組み込む提案もできるだろう。

 

一連のコロナ禍により私たちの生活様式が一変するとも言われているが、スポーツ観戦においては、その価値の幅が一気に広がってくると解釈し、その可能性を追求していくと考えるとワクワクしてくる。

デジタルを使って、スタジアム・アリーナでのリアル体験を再現したりそれを超えようとしたりしなくてもいい。全く新しい体験を作り出せばそこに新しい市場が作られる。

 

日本のスポーツの可能性は無限だ。

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