Posted: 16 Jun. 2020 2 min. read

COVID-19後に向けた次世代サプライチェーンへの革新

【シリーズ】COVID-19とレジリエンス経営

多くの企業が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大により経済的損失を被ったが、その要因の一つにサプライチェーンの分断がある。COVID-19で顕在化した課題と、企業が取り組むべき次世代サプライチェーン構築について考察する。

本稿は「COVID‐19とレジリエンス経営」と題し様々な経営課題を毎回20分程で解説する連続Webinarからの抜粋記事です。

 

リスク感知とサプライチェーン全体の可視性の低さが招いた、アクションの遅れ

今回多くの企業にとって特に大きな課題として認識されたのは、マルチサプライヤー網へのリスク感知の低さ、流通機能を含むサプライチェーン全体の可視性の低さである。そのために自社のサプライチェーンにおけるコロナショックのインパクトの大きさを認識できず、アクションが遅れ、結果的に何もできないまま影響を最大化させてしまったのである。

リスクマネジメントサイクルの構築が企業の明暗を分ける

このような状況においても、サプライチェーンリスクマネジメントに取り組んできた企業はいち早くリスクを感知し、グローバルレベルで施策を実行して影響を最小限にとどめている。Webinarでは、企業がCOVID-19のリスクを感知した段階や、ある程度の感染が広がりサプライチェーンが実際に影響を受けた段階、既に実行していたサプライチェーン改革にも影響が及んだ段階、の3つのタイミングで施策を実行した先進事例を紹介する。

サプライチェーンリスクに対応するには、まずマネジメントサイクルの構築を考えたい。真新しい考え方ではないが、甚大な被害の発生頻度が低いことから実際に取り組んでいる企業は多くない。しかし、今回のようなリスク発生時には、取り組んでいた企業とそうでない企業の差は歴然だ。決して難しい考えではなく、5つのステップで実践できるので、企業はぜひ取り入れたい。

具体的にはステップ1、ステップ2でサプライチェーン上のリスクを定義・優位付けし、ステップ3でビジネスケース、耐性構築のロードマップの策定、ステップ4では作成したロードマップに基づき、サプライチェーンの再構築に取り組み、最後はモニタリング・維持のための手段を構築する。そして1に戻りリスクの再定義と言ったサイクルを回す。

 

今を機とした、次世代サプライチェーンへのシフトを

COVID-19収束後を見据えると、アクションが不十分であったがゆえに自社に発生した損害を受け止めたうえで、中長期的な視点でサプライチェーンを変革していく必要がある。最後にそのための5つの論点を紹介する。

1)回復力と効率のトレードオフ:前述のリスクマネジメントサイクルのルーティン化し、確立する。この取り組みは効率と信頼のトレードオフを引き起こすため全ての利害関係者のニーズを理解し、バランスをとる必要がある。

2)サプライネットワークとサプライチェーン:固定化されたサプライチェーンは動的なサプライチェーンネットワークにかわると可視性と応答性が向上する。今回いち早く対応が可能だった企業は動的で柔軟性の高いサプライチェーンネットワークを構築していたことが一つの要因だ。

3)ローカル/リージョンvsグローバル:サプライチェーン全体の可視性を高めて脆弱性を把握、そして地理的回復力を確保することがポイントになる。

4)デジタル化・リモート化:以前から進んでいたデジタルツインやサプライチェーンコントロールセンターの導入がCOVID-19によりさらに加速する見込みである。これは今回もたらされた最大の機会となる可能性がある。

5)自動化・無人化:テクノロジーを活用したオペレーションの効率化や人間のパフォーマンス強化を通してさらなる高度化めざすものである。

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