Posted: 05 Aug. 2020 3 min. read

「両極化時代のデジタル経営」刊行によせて

【シリーズ】両極化の時代を生きる

デロイト トーマツ グループのプロフェッショナル26人が専門分野の垣根を超えて共同執筆して生まれた書籍「両極化時代のデジタル経営~ポストコロナを生き抜くビジネスの未来図」が、いよいよ今週から発売されることになった。全体監修という立場から、過去一年ほど多様な専門性を有する執筆メンバーと議論を重ねながら編集を進めてきた。その結果、次のような共通のテーマを柱にして、今後に求められているデジタル経営変革のあり方や進め方について、骨太な見取り図を示すことができたように思う。

1. 経営環境を取り巻く変化の本質としての「両極化の時代」

昨今、経営環境の不確実性がますます増大していると言われるが、その背景にあるのは、「グローバル」と「ローカル」、「リアル」と「バーチャル」、「経済価値」と「社会価値」など、一見相反する事象や価値観が衝突しながらも互いにその勢いを増幅させる「両極化」の流れの台頭にある。そして、コロナショックを経て、両極化の流れはさらに加速し顕在化していく。人々の意識が生命と安全を守るというより本源的なテーマに集中する中で、中途半端なものはそぎ落され、本質的に矛盾の塊である人間の欲求や価値観の究極的な姿(=両極)が、さらに顕在化してくるからだ。

2. デジタルを活用した「つながりのマネジメント」の高度化の必要性

こうした「両極化の時代」の中でこそ、デジタル・テクノロジーを活用しつつ、異なるものや相反するものをつなぎ合わせることを通じて新たな価値を生み出すための経営モデル全体のあり方の自己変革、すなわち、「“dX”=Business Transformation with Digital」の実行が求められている。両極化の流れが加速する一方で、デジタル・テクノロジーの目覚ましい進展は、あらゆる境界線を飛び越えて新たなつながりを加速度的に生み出すことを可能にした結果、データを介した「つながりのマネジメント」が今後のビジネスにおける価値創出の源泉になっていくからだ。

3. 今こそ求められる「日本の強さ」の再定義

「両極化の時代」というと、一見混沌としてますます困難に満ち溢れる印象を持つかもしれないが、実は、こうした時代こそ、日本企業や日本社会が持つ固有の強みを再定義した上で具現化する大きな可能性を秘めていると認識すべきだ。「和魂洋才」による独自のカルチャーの創出や、「すり合わせ」に基づく高度なものづくりの伝統など、日本は元来、異質なものや価値観を柔軟につなぎ合わせて調和させ、最適化させる点において、他国には真似できない固有の強みを持っている。

デジタル・テクノロジーを駆使した「つながりのマネジメント」の高度化により、日本の製造やサービスの現場を中心に培われてきたこうした固有の強みを、経営モデル全体の強みへと昇華させるべきである。さらに、個別の企業や産業の枠を超えた新たなつながりを縦横無尽に生み出すことを通じて、少子高齢化や地球環境問題に代表されるさまざまな社会課題解決に結びつく、「日本発」の巨大イノベーションの創出を加速させるべきだ。

 

以上からもお分かりの通り、両極化がさらに加速するポストコロナを生き抜いていくためのキーワードは、「つながり」である。価値創出に結びつく新たなつながりの可能性をいち早く察知し、それをいかに迅速に形にしていけるかがすべての鍵となる時代だ。

本書籍自体、両極化という時代文脈を設定しつつ、それを補助線にしながら、「デジタル・テクノロジー」と「日本の固有の強み」という一見無関係な二つの事項の間に積極的につながりを見出すことで、執筆メンバー全員の「日本頑張れ!」という想いを経営論として結晶化させたものだとも言える。是非とも一人でも多くの方に手に取って読んでいただき、私たちのこうした想いを感じていただくとともに、求められる経営の自己変革を構想・推進するための一助にしていただきたいと考える。

両極化時代のデジタル経営

プロフェッショナル

松江 英夫/Hideo Matsue

松江 英夫/Hideo Matsue

デロイト トーマツ グループ 執行役 CETL(Chief Executive Thought Leader)

デロイト トーマツ合同会社 デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 パートナー 中央大学ビジネススクール 客員教授 事業構想大学院大学 客員教授 経済同友会 幹事 国際戦略経営研究学会 理事 フジテレビ系列 報道番組「Live News α」コメンテーター(金曜日) 経済産業省 「成長志向型の資源自律経済デザイン研究会」 委員 経営戦略及び組織変革、経済政策が専門、産官学メディアにおいて多様な経験を有する。 (主な著書) 「「脱・自前」の日本成長戦略」(新潮社・新潮新書 2022年5月) 『両極化時代のデジタル経営—共著:ポストコロナを生き抜くビジネスの未来図』(ダイヤモンド社.2020年) 「自己変革の経営戦略」(ダイヤモンド社.2015年) 「ポストM&A成功戦略」(ダイヤモンド社.2008年) 「クロスボーダーM&A成功戦略」(ダイヤモンド社 2012年: 共著) など多数。 (職歴) 1995年4月 トーマツ コンサルティング株式会社(現デロイト トーマツ コンサルティング合同会社)入社 2004年4月 同社 業務執行社員(パートナー)就任 2018年6月 デロイト トーマツ グループ CSO 就任 2022年6月 デロイト トーマツ グループ CETL 就任(現任) 2012年4月 中央大学ビジネススクール客員教授就任(現任) 2015年4月 事業構想大学院大学客員教授就任(現任) 2021年1月 特定非営利活動法人アイ・エス・エル(ISL) ファカルティ就任(現任) 2018年10月 フジテレビ「Live News α」 コメンテーター(現任) (公歴) 2022年10月 経済産業省 「成長志向型の資源自律経済デザイン研究会」 委員就任(現任) 2020年12月 経済産業省 「スマートかつ強靱な地域経済社会の実現に向けた研究会」委員就任 2018年1月 経済産業省 「我が国企業による海外M&A研究会」委員就任 2019年5月 経済同友会幹事(現任) 2022年10月 国際経営戦略学会 常任理事(現任)