Posted: 17 Nov. 2020 3 min. read

企業のブランド価値を強固にする「パーパス」

シリーズ 両極化の時代を生きる

企業のブランド価値調査でAppleが8年連続の首位に

ブランドコンサルティング大手のインターブランド社は、2020年10月20日にグローバル展開する企業・商品のブランド価値を独自に算出した「Best Global Brand 2020」*1を発表した。

そこで8年連続で首位を獲得したのが、iPhone12シリーズを発売したばかりのAppleだ。インターブランド社の算出によると、Appleのブランド価値は3,229億ドル、昨年からの成長率は+38%とされている。なぜここまでAppleのブランドは強いのだろうか。

コロナショックによって再度見直されたブランド価値向上の必要性

まず、強いブランド価値を保持するためには、当然消費者から選ばれ続ける必要がある。前述したインターブランド社のブランド価値算出の方法*2にも、製品やサービスの財務力やブランドが購買意思決定に与える影響力が指標に組み込まれており、この点からも製品・サービス・ブランドが消費者から選ばれることで、売り上げという財務上への貢献が出来ていなければ、強いブランド価値を維持することは出来ないことが理解出来る。

しかし、消費者から選ばれ続ける難易度は、コロナショックによって高まっている。なぜならば、消費者から従来必要だと思われていたものが、絶対に必要では無いと判断され、選ばれなくなっている製品やサービスも出てきているためだ。実際に筆者は一消費者として、今までにはさほど必要としていなかった、少し高価なテイクアウトの料理を購入したり、テレワークを効率的にする製品や体を動かすために必要な製品を購入する機会が増えた一方で、生活用品の見直しを図り不要なものと判断した製品の購入を絞るようになった。自分にとって本当に必要なものだけを選びたいという気持ちが高まったためだ。

Appleはなぜブランド力が強いのか?

このような状況下において、消費者から選ばれ続ける強いブランド価値を保持するためにどうすべきか、Appleの共同創設者の一人であるスティーブ・ジョブズ氏が1980年代のインタビューの中で答えた以下の言葉からヒントを得ることが出来る。

To make a contribution to the world by making tools for the mind that advance humankind.
(人類を前進させようという志にこたえるツールを創造し続けることで、世界へ貢献する)

これは、Appleの存在意義とも言えるパーパスを示した言葉であると言えよう。Appleには、多くの企業がホームページ上の企業概要で示しているような、パーパス・ビジョン・ミッション・バリュー等を公式に示していないが、このような創業者の想いが組織や従業員に浸透されており、iPhone12シリーズをはじめとする各製品にも宿っているのではないだろうか。例えば、2020年に発売されたApple Watch 6で注目された新たな機能に、血中酸素飽和度センサーの通知がある。これは、コロナショックと戦う人類を、ヘルスケアの領域で前進させるための機能を実装したということではないかと、筆者は捉えている。

書籍『両極化時代のデジタル経営』で語られているように、コロナショックによってますます不確実性が増大する「両極化の時代」においては、新たな経営モデルの構えが必要であり、その一つに「パーパス」がある。この「パーパス」は、自社のブランドはどのような方向に向かうことが正しいのか、自社の製品はどのようなモノが適切かを考える一つの物差しにもなる。そしてAppleの事例から見て分かるように、その「パーパス」が浸透した製品やブランドに「共感」する消費者に選び続けてもらうことが出来、結果としてブランド価値を強固にし続けることを可能にする。つまり、「パーパス」は、ブランド価値を強固にすることにつながるのではないだろうか。

筆者は先日、生活用品の見直しを図った一環で、新たな枕を購入したのだが、その箱を開いたときに驚きの体験をした。「キラキラ星」の曲がオルゴールで流れたのである。枕を包む包装紙に動物が眠っている姿が描かれていることも相まって、睡眠のイメージを強烈に抱いた瞬間を今でも覚えている。そして、その枕を提供する企業のホームページを見てみると、「すべての人に深く快適な眠りを届けたい」という想いを込めて創業したと記載があった。商品だけではなく、包装紙や手元に届いた時の体験までもが「パーパス」に基づいて設計されていたのである。

今こそ、自社のパーパスは何か、そのパーパスを企業のブランディングに結び付けることが出来ているか、コロナショックを契機に再度問いただすことが求められているのではないだろうか。

プロフェッショナル

中野 圭一朗/Keiichiro Nakano

中野 圭一朗/Keiichiro Nakano

デロイト トーマツ グループ チーフスタッフ

デロイト トーマツ コーポレート ソリューション合同会社(DTCS) Corporate Management Division所属。 音楽配信企業のコンテンツ配信・通信部門にて、コンシューマー向け営業を経て複数のマネジメント職を歴任。2014年4月よりデロイト トーマツ グループに参画し、マーケティング部門およびブランド戦略部門を経て現職。B to C営業、組織・人材マネジメント、マーケティング、ブランドの広範な業務経験・知見を有する。 デロイト トーマツ グループのブランド変革のコンセプト「D-nnovation」の立ち上げや、グループ書籍『両極化時代のデジタル経営』の企画・編集にも携わる。現在は、デロイト トーマツ グループのコーポレート機能を担うDTCSの経営企画部門にて、組織カルチャーの変革を企画・推進。