Posted: 22 May 2020 2 min. read

スタートアップに今必要な支援 将来の大企業を生み出すために

新型コロナウイルスCOVID-19はここ数十年で類を見ない、全世界規模での公衆衛生と経済における危機をもたらしている。コロナショックは短期間で多額の外部資金を調達し、リスクを抱えながらイノベーション創出に向けて急激な成長を目指すスタートアップに対しても深刻な影響を及ぼしている。

デロイト トーマツ ベンチャーサポートが5月に実施したスタートアップ向けへのアンケートでは、4割以上のスタートアップが半年以内に活動資金が枯渇すると回答しており、このままでは今年の秋までに多くのスタートアップが倒産することになる。また6割近いスタートアップは「要件に当てはまらない」ことを理由に、政府の資金繰り支援制度の利用を断念している。なぜならば、創業間もない時期は開発や採用、広告等の先行投資が多く、売上が増えていても黒字に達しないビジネスモデルが一般的なため、売上の減少を要件とする資金繰り支援制度の要件に当てはまらないからだ。このような従来の枠には入らないスタートアップを対象とした支援政策の創設が求められている。

諸外国では、フランスは5,000億円、ドイツは2,400億円、韓国は1,900億円、イギリスは1,600億円規模のスタートアップ支援の取り組みを発表している。日本においても、売上減少以外の要件を追加した融資制度、新株予約権付融資・資本性ローン枠の追加、官製ファンドのスタートアップへの直接融資等、諸外国同様のスタートアップ支援策を整備し、実施することが肝要だ。

一方でここ数年、スタートアップにとって資金調達がしやすく恵まれた環境であったといえる。資金を潤沢に使っていた場合は使い方を見直し、コストをきちんと管理し、この時を乗り越えなければならない。また、今まで以上に社会に価値あるサービスを提供し、利益を生み出すことが求められており、スタートアップも意識を変えていく必要がある。

雇用の創出、新規ビジネスや新産業の創造、IPOを通じた資本市場の活性化などのメリットをもたらすスタートアップは、今後の経済成長を牽引するために必要不可欠である。2007年のリーマンショックを境に、IPOは5年にわたって激減し、この10年でやっと回復してきた。今回、同様のことが起きると日本におけるイノベーションエコシステムは、また大きく後退してしまうだろう。激変するこの環境下を生き延び、コロナ渦の社会変容を機会ととらえ、非接触のデジタル技術を活用したソリューションを迅速に提供するコロナネイティブなスタートアップは、大企業になる可能性をも秘めている。将来の大企業を生み出し日本の経済成長を加速させるためにも、今その成長の芽を摘んではいけない。

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斎藤 祐馬/Yuma Saito

斎藤 祐馬/Yuma Saito

デロイト トーマツ ベンチャーサポート パートナー

2010年よりトーマツ ベンチャーサポート株式会社(現 デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社)の事業立ち上げに参画。 2019年デロイト トーマツ ベンチャーサポート 代表取締役社長。公認会計士。 世界中の大企業の新規事業創出支援、ベンチャー政策の立案まで手掛けている。起業家が大企業100人にプレゼンを行う早朝イベントMorning Pitch発起人。主な著書は『一生を賭ける仕事の見つけ方』(ダイヤモンド社)。新聞・雑誌・テレビ・オンラインメディア等、メディア掲載多数。「2017年 日経ビジネス 次代を創る100人」に選出。