Posted: 15 Jun. 2020 2 min. read

チケット価格の適正化を通じ、スタジアム観戦の価値を向上させ地域とのつながりを強くする

デロイトトーマツグループではスポーツビジネスにおいて、観客、チーム、自治体、スポンサー、メディア、選手といった各ステークホルダーにとって効果のある共通の目指すべき形として「満員のスタジアム・アリーナ」づくりの効果を掲げてきた。

しかし、新しい生活様式のもとJリーグを始め多くの競技は無観客、入場制限といった制約の中で試合を再開していかざるを得ない。50%や5,000人という制限が設定されるとその限られた「枠」による様々な影響が生じることになるだろう。

コロナ前であっても人気クラブのゲームとなるとチケットが即刻完売となり、行きたくてもいけない人が泣く泣くネット配信やテレビ中継で我慢することはあったが、入場制限が行われる中においてはシーズンパス保有者以外に出回るチケットが極端に少なくなる可能性もあり、その希少性から入場チケットの高額の転売といった問題も発生する可能性は否定できない。

本来の観戦価値に応じたプラチナ化ではなく、このような不当な高額化は避けなければならない。

地域密着・浸透を止めない

サッカーに限らず、スポーツクラブはビジネスとしての成立はもちろんのこと、その地域に愛され、浸透していくことを目指している。

チケット価格の不当な高騰は地域住民のスタジアムへの足を遠ざけることになるだろう。子どもでも気軽にスタジアムに来て憧れの選手のプレーに興奮し、声を出し拍手をする。そういう姿は地域への浸透には無くてはならないものである。しかしながら入場規制という条件が「来場すること」自体を希少価値化してしまうかもしれない。

一方で、本来のスタジアム観戦の熱気と興奮が体験できないという理由で、来場の価値が逆に下がってしまう可能性もあるだろう。

これらの問題を解決するためには、入場チケットの価格をしっかりコントロールして不当な高騰を避けると同時に、新たな来場者メリットを提供するなど来場することの価値をしっかり作り出すことが必要になる。コロナ禍への対応で人の行動を追跡可能にしていくためにも、このタイミングでチケットの電子化を進めることができれば高額転売を防ぐことにもつながる。また、来場者の個人特定をすることで、特定の人ばかりが来場することがないようにしたり、試合日によって販売の対象を変えたりするなど、「行きたい人」には公平にチャンスを提供する工夫も必要になる。

前半だけのチケット、後半だけのチケット、練習見学のチケットなど来場機会を分割することでも、多くの人に来場のチャンスを提供することができるだろう。

入場制限が緩和されてきても、遠方からの来場者が急に増えることは期待できないかもしれない。この時期だからこそ、より一層地域に密着し、地元サポーターとの絆を深めスタジアム観戦の価値向上を目指したい。

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