第2回:100年の累積進化を再構築する覚悟が問われる自動車販売DX ブックマークが追加されました
新興自動車メーカーは、Eコマースを軸にしたデジタル×リアルのシームレスな購買体験を提供するが、既存自動車メーカーで同様の購買体験を提供しようとする場合、既存のオペレーションやシステムがハードルになる。しかし、これらに切り込めなければ、真の自動車販売DXは推進できない。
本稿は2021年6月10日に日経xTECHに掲載された「続・モビリティー革命2030 DX編」を一部改訂したものです。https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01653/00002/
既存自動車メーカーやカーディーラーがデジタル×リアルのシームレスな購買体験を実現する場合、従来のカーディーラー制度の見直しが必要となる。
新車販売機能が奪われるカーディーラーは、一層の独立経営を求められる。故に自身の商圏に鑑みて必要な機能を見直し、それに適した人員・人材・店舗ネットワークの再構築を迫られる。(図1)
このような自動車産業の根本に大きなインパクトを与える環境変化に対しては、これまで取り組んできた“改善の積み上げ”では太刀打ちできない。バリューチェーン全体に渡り、デジタル技術(データ)を用いた“変革”が必要となる。
自動車メーカー(デジタル)とカーディーラー(リアル)が分断され、顧客の購買体験の阻害要因となっているレガシーシステムから脱却し、拡張性・柔軟性に富んだ新自動車販売システムに置き換えなければ自動車販売DXは実現しない。また、このシステムは顧客の購買体験を最大化するシステムでもある。以下に新自動車販売システムの企画・開発の要諦を整理する。
① 目指す購買体験を実現する“顧客中心”のシステム企画・開発
目指す顧客体験をTo-Beカスタマージャーニーで描き、オペレーションに落とし込む“顧客中心”のシステムコンセプトのデザインが必要である。
② 自動車メーカー×カーディーラー一体の顧客管理
“顧客中心”の最大のポイントは、定量/定性情報を収集・分析し、顧客を深く理解することである。各社の顧客情報をOne IDで繋ぎ込んだカスタマーデータを作成し、一元管理・活用することが必要である。
③ 購買体験に留まらない体験価値提供の拡張性
車両のコネクテッド化で、クルマと生活シーンの一体化が進むため、外部パートナー連携等で新たな体験価値を提供できる拡張性・柔軟性が必要である。(図2)
図2: 新たな自動車販売システム全体像(イメージ)
以上のように、自動車販売のデジタル化に留まらない自動車販売領域の真のDX実現に向け、自動車メーカー・カーディーラーは、自動車業界における100年の累積進化の証を再構築する覚悟が問われている。
デロイト トーマツ コンサルティング所属。日系調査会社にて、アフターマーケット・オートファイナンス領域の研究活動を経て現職。主に、自動車メーカー・商社向けの販売・マーケティング戦略、モビリティサービス戦略の策定を支援している。