Posted: 22 Sep. 2021 2 min. read

第9回 変わる自動車販売、カーディーラーは生き残れるか

【シリーズ】続・モビリティー革命2030

これまで新車販売・メンテンナンスを中心に事業・収益を拡大してきた日本国内のカーディーラーだが、市場が縮小する中、カーディーラー間の競争は激しさを増している。
その中で国内のカーディーラーが、今後生き残りをかけて実行すべき打ち手は何か。各社の状況によって、取り組み優先順位に差はあるだろうが、「既存事業の高度化」と「新事業の確立」を目的に、データ・デジタル活用を基盤とした6つの打ち手が有効と考える(図1)。

本稿は2020年6月11日に日経xTECHに掲載された「続・2030年モビリティー革命を読み解く」を一部改訂したものです。https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01278/00010/

カーディーラーが実行すべき打ち手

<既存事業の高度化>
①店舗網の最適化及び業務プロセスの効率化
国内市場が頭打ちになる中、ディーラー間の競争は激化しており、同じカーメーカー系列のカーディーラー間でも、顧客の奪い合いが起きている。このような状況下において、自社内・同資本内における店舗網の見直し・最適化は待ったなしの状況であり、必要に応じて、資本を跨いだ形での店舗網最適化の検討にも着手すべきであろう。

②“個客”への提案力強化
店舗間の差別化が困難になる中で、顧客から継続的に選ばれるためには、“個客”の属性・ニーズ・ライフスタイル変化等を的確に捉えた上で、都度“個客”にとって最適な車両や購入方法を提案する必要がある。

③車両販売・アフターサービスプラットフォームの構築
新車販売やアフターサービス予約等をデジタル上で提供し、完結することができるプラットフォームの整備は必要不可欠である。これにより、消費者の利便性が高まることに加え、カーディーラーはデジタル上において顧客接点を獲得し、デジタル及びリアル全ての顧客情報を捉えた施策を講じることが可能となる。

<新規事業の確立>
④アセット利活用力の強化
これまでの新車“売り切り”ビジネス(車両販売時の収益獲得)から、クルマをアセットとして捉えた“利活用”ビジネス(カーライフサイクル全体での収益獲得)に本格的に取り組む必要がある。

⑤リアル店舗の役割再定義による新たな顧客接点の創出
E-コマースが浸透する中、リアル店舗・スタッフは新車販売、メンテナンス以外に、自社の特性や周辺住民のニーズ等を踏まえた新たな役割・サービス提供を担うことが期待される。これにより既存顧客との関係性強化に加え、幅広く・真新しい顧客情報の獲得が可能になり、結果、上述の「“個客”への提案力」がより強化され、新車ビジネスの底上げに繋がると思われる。

⑥海外への展開
アジアやアフリカなど、今後成長が見込まれる国にカーディーラー運営ノウハウやデジタル・データプラットフォームを活用していければ、現地ディーラーとの競争に打ち勝っていく事も十分に可能と思われる。


打ち手実行に向けたポイント

ここまで6つの打ち手を概説してきたが、各打ち手を確実に実行していく上で、特に乗り越えなければならない3つのポイントについて説明したい。

①異業種・異文化人材の活用
データ・デジタル活用や店舗を生かしたサービス企画、海外展開等を推進していくためには、既存の人員のみでは限界があり、異業種・異文化人材の活用が必要不可欠である。そのためには、場当たり的な施策に留まらず、組織体制や採用・評価・育成の仕組みを、抜本的に見直していく必要があるだろう。

②合従連衡の推進
電動化や電子化といったクルマの変化に伴い必要となるメンテナンス設備等への投資に加え、デジタルを筆頭とする新たな領域への投資を行うとなれば、大規模な投資が必要になる。投資資金を賄い、効率的な投資を行っていく為に、まずは自社内における競争領域と協調領域を明確にした上で、協調領域については、OEMや他カーディーラー、サードパーティーとの協業を積極的に推進し、共同での投資を検討していくべきであろう。

③「守り」から「攻め」への意識変革
大規模な変革を確実に推し進めていくためには、企業風土及び社員一人ひとりの意識変革が不可欠である。全社員が現状に対する危機意識を持ち、変わる事を恐れず、新たな事を積極的に受け入れるマインドに変化していかなればならない。
そのためには、まずトップが変革を実行する強い意志を持ち、社員とその意志を共有するとともに、新しいことにチャレンジできる、新しいことをやったものが評価される仕組み作りを進めていく必要がある。


これまでの常識や商習慣に囚われることなく、データ・デジタル等新たな武器を積極的に取り入れ活用していく事で、今後の業界スタンダードとなるような新たなカーディーラーモデルを構築していって欲しい。

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早乙女 強/Tsuyoshi Saotome

早乙女 強/Tsuyoshi Saotome

デロイト トーマツ グループ シニアマネジャー

デロイト トーマツ コンサルティング所属。日系調査会社にて、アフターマーケット・オートファイナンス領域の研究活動を経て現職。主に、自動車メーカー・商社向けの販売・マーケティング戦略、モビリティサービス戦略の策定を支援している。