Posted: 01 Sep. 2021 3 min. read

デジタル人財育成のために今、日本が取り組むべきこと

1.日本らしいデジタル変革とは ~ポイントは「在るものを活かして、無きものを創る」
2.DXを巻き起こす「価値創造サイクル」成功の秘訣とは
3.デジタル人財育成のために今、日本が取り組むべきこと

 

前回の記事では、「在るものを活かして、無きものを創る」を体現している2つのデジタル変革事例を紹介し、成功要因を分析した。

本稿では、もう一つの重要な成功要因をまず紹介したい。

「在るものを活かして、無きものを創る」には人財が不可欠

これまでに無いものを作るには、人財こそが欠かせない。

 

まず、日本の人財について振り返ってみる。OECDのデータを見ると、日本は諸外国と比較して読解力や数的思考等、基礎的な能力が高い人財が豊富であり、特に年齢別に比較すると45歳以上が海外と比べてポイントが高い。つまり、人財は日本の強みとして「在るもの」だと言える。

 

一方で、デジタルスキルについては、第1回の記事で述べたようにIMD世界デジタル競争力ランキングにおいて日本の順位は63か国中27位で、特にサブ因子のTalent(人財)が46位と低い。今後日本が国際的な競争力を高めていくためには、デジタル人財の育成が欠かせないことは明白だ。

 

すなわち、基礎的な能力はもともと強いものを持っているが、デジタルという文脈における知見は相対的にかなり遅れているのだ。

 

これを逆の面から考えてみると、ポテンシャルが高い日本の人財力(在るもの)を活かしつつ、今後、デジタルの知見を育成することが求められる。よくデジタル人財という言葉を聞くと、デジタルの知見・スキルや理系人財、エンジニア、数理的な能力を持つデータサイエンティスト…というイメージを持たれがちだが、ビジネスの知見×デジタルの知見の両方を持つ人財も不可欠だ。ビジネス領域は、もともと日本に潜在的に強みがあるため、それを活かしつつ、デジタル領域の知見を新たに身に着けていくことで、デジタルの力を使いながらビジネスを創り出していく人財が生まれていく。このような新たなビジネスをプロデュースする人材を育てる、という視点を忘れてはならない。

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デジタル人財を育成する必要性はあるが、実態としては、育成する環境がまだ乏しいというのが現状だ。当社の「デジタル人材志向性調査2020」によると、日本の就業者の約8-9割が非デジタル人財であり、そのうち約2割の人々がデジタル領域に関わる意思を持っているにもかかわらず、デジタル関連スキルの習得機会が限られていると回答している。デジタル関連の教育機会がある人はわずか1割で、大部分の企業では教育の機会がない(もしくは認知を得ていない)という状況だ。特に企業規模が小さくなるほどその傾向は高まり、産業界においてデジタル教育の機会自体が圧倒的に不足しているというところが顕著に見てとれる。

デジタル人財育成と雇用創出を両輪で実施

今後、デジタル人財を育成する上では、個々人に最適な学習機会と実務訓練機会を提供すること、DXを通じて新しい雇用を生み出していくことを両輪で勧めることが重要だ。

 

上記のような考えの下、私どもデロイト トーマツ グループでは、人財育成と産業創造が相互に結びつく官民連携プラットフォーム「ADXO構想 (Area Digital Transformation Organization)」を掲げている。そこではまず、各地域の経済の課題や特徴に合わせてDXを推進して新たな産業を創出し、雇用機会を拡大する。一方、産業を創造するには前述の通り人財が不可欠であるため、デジタル人財のスキル育成と実務訓練機会(OJT)の提供を行う。デジタル人財として活躍するには単なるスキルの習得だけでなく、OJTの機会もセットで提供することがポイントだ。

 

このように産業創造と人財育成を両輪で進めていくことで、個々の人財の付加価値を高めるとともに、マクロ的な視点では、今後成長していく産業に人財が移動させていくことも可能になる。

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最後に

日本はデジタル変革の面で周回遅れという現実がある中で、一つのヒントとなることは、「在るものを活かして、無きものを創っていく」という発想であることを改めて伝えたい。日本の人財、産業、社会インフラ、地域の文化…等の「在るもの」をデジタルの力でつなげることによって「無きもの」を創り、日本が持続的な成長をしていくことに期待する。

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松江 英夫/Hideo Matsue

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デロイト トーマツ グループ 執行役 CETL(Chief Executive Thought Leader)

デロイト トーマツ合同会社 デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 パートナー 中央大学ビジネススクール 客員教授 事業構想大学院大学 客員教授 経済同友会 幹事 国際戦略経営研究学会 理事 フジテレビ系列 報道番組「Live News α」コメンテーター(金曜日) 経済産業省 「成長志向型の資源自律経済デザイン研究会」 委員 経営戦略及び組織変革、経済政策が専門、産官学メディアにおいて多様な経験を有する。 (主な著書) 「「脱・自前」の日本成長戦略」(新潮社・新潮新書 2022年5月) 『両極化時代のデジタル経営—共著:ポストコロナを生き抜くビジネスの未来図』(ダイヤモンド社.2020年) 「自己変革の経営戦略」(ダイヤモンド社.2015年) 「ポストM&A成功戦略」(ダイヤモンド社.2008年) 「クロスボーダーM&A成功戦略」(ダイヤモンド社 2012年: 共著) など多数。 (職歴) 1995年4月 トーマツ コンサルティング株式会社(現デロイト トーマツ コンサルティング合同会社)入社 2004年4月 同社 業務執行社員(パートナー)就任 2018年6月 デロイト トーマツ グループ CSO 就任 2022年6月 デロイト トーマツ グループ CETL 就任(現任) 2012年4月 中央大学ビジネススクール客員教授就任(現任) 2015年4月 事業構想大学院大学客員教授就任(現任) 2021年1月 特定非営利活動法人アイ・エス・エル(ISL) ファカルティ就任(現任) 2018年10月 フジテレビ「Live News α」 コメンテーター(現任) (公歴) 2022年10月 経済産業省 「成長志向型の資源自律経済デザイン研究会」 委員就任(現任) 2020年12月 経済産業省 「スマートかつ強靱な地域経済社会の実現に向けた研究会」委員就任 2018年1月 経済産業省 「我が国企業による海外M&A研究会」委員就任 2019年5月 経済同友会幹事(現任) 2022年10月 国際経営戦略学会 常任理事(現任)