Posted: 08 Mar. 2021 4 min. read

ジェンダーギャップを深める「アンコンシャスバイアス」と「構造的バイアス」

【前編】ジェンダー平等の実現に向けて~International Women’s Day~

IWDテーマとしてのChoose to Challenge

本日3月8日はInternational Women’s Day(IWD)である。1975年、国連が女性の権利と政治的、経済的分野への参加を促進することを目的として制定した記念日であり、性差による不平等撤廃と自由、平等を訴えかける日として、毎年全世界で様々な取り組みが展開される。

国連が定める今年のIWDのテーマは、【Choose to Challenge】だ。

【Choose to Challenge】には、ジェンダー平等に向けたチャレンジを、「女性による取り組みに終始させないで、男性はもちろん、社会全体が声をあげ、変革に向けてチャレンジしていこう」というメッセージが込められている。

日本のジェンダーギャップ

2020年は、パンデミック下で各国の女性リーダーの政治的な手腕や成果が大きな注目を浴びた年でもあった。しかし、女性リーダーという括りでニュースになるということは、裏を返せば、まだまだ「女性が国を率いること」自体が希少であるということでもある。アイスランド、フィンランド、ニュージーランド、ドイツなど、女性リーダーが率いる国々では、ジェンダーギャップが大きく解消されつつあるが、世界的にはジェンダー平等の実現には至っていない。

中でも日本のジェンダーギャップは極めて深刻だ。世界経済フォーラムが毎年公表しているGlobal Gender Gap Reportの2020版においても、日本は153ヶ国中121位、G7の中で圧倒的最下位であることは、ご存知の方も多いだろう。同Gapの評価対象の一つである読み書き能力や初等教育の項目では、獲得スコアが世界1位(=もっともジェンダーギャップが小さい国)であるにもかかわらず、総合ランクが121位である理由は、閣僚数や労働所得の男女差をはじめとする政治・経済分野におけるジェンダーギャップがあまりに大きいためだ。日本でも徐々に役員・管理職への女性登用は進みつつあるものの、いまだ政治家や経営者の大多数は男性が占めている。端的に表現すれば「意思決定層は男性ばかり」であり、他国の女性活躍推進のスピードには遠く追い付けていないということである。

アンコンシャスバイアスの影響

日本のジェンダーギャップ解消が進まない主な要因の一つとして、伝統的なジェンダー役割に基づいたアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)が挙げられる。もちろん、アンコンシャスバイアスは他国にも存在するが、日本のバイアスが他国よりも更に根深く、女性活躍を阻む重大な課題として影響し続けるのはなぜだろう?

一つには、日本社会で戦後いっそう促進された固定的なジェンダー役割意識と、この意識が生んだ男性中心の社会構造によるところが大きい。

戦後の復興と発展は男性の長時間労働と権威主義的リーダーシップによって牽引されたが、この際に築かれた働き方や画一的なリーダー像は、その後の高度経済成長期に盤石なものとなった。この時代に確立した、「女性が男性の有償労働を支える家族モデル」は強固に引き継がれており、共働き世帯が専業主婦世帯の2倍となった現在であっても、男性が家事・育児に費やす時間は女性のそれより圧倒的に少ない。これは、日本で働く女性が社会で活躍する上での大きなバリアとなっている。

また、同質性の高い環境では、異論を唱える人物の意見が重視されにくいことから、男性中心の社会構造が踏襲され続けると、従来の男性リーダー像に合致する人物ばかりが登用されやすい。「異」の存在である女性は正当に評価されず、男性同等の成長機会を得られないことが多くなる。こういった事象が積み重なると、女性も自身を過小評価してチャレンジを躊躇するようになり、結果的に経験やスキル不足が増して負のスパイラルに陥ることも多い。「やる気がある、ない」の次元の話ではなく、構造的に大きな偏り(バイアス)があるのだ。

これまでの評価軸を疑ってみる

前述のように、日本の社会全体のみならず、女性自身すら無意識的に支配されてしまうのがバイアスの怖さであるが、近年、職場でのアンコンシャスバイアスの課題解決に向けて、様々な企業が取り組みを行っている。デロイト トーマツ グループでも、数年前から全社的にバイアスへの理解を促進させており、メンバーがバイアスに気付けるような仕組みを導入している。別記事で紹介しているPanel Promiseも、その取り組みのうちの一つである。

他にも、全メンバーに対するバイアス研修の実施はもちろんのこと、特にバイアスが生じやすい評価会議には、各ビジネスでDiversity & Inclusionをリードする担当役員が同席するなどして、評価者側の多様性を確保する体制を構築している。

従来型の「優秀な人材像」「候補者像」に当てはめて評価するのではなく、評価者が常に相互にバイアスを指摘し合うことで、「これまでと異なるタイプ」の人物の実績が議論され、正当に評価されるようになる。あらゆる場面で、従来からの「無意識による判断」に疑問を提起する仕組みは、バイアスの対策として必須だ。偏った評価軸でメンバーが集まってしまうと、コロナ禍のように「基準が一変してしまった場合」に一瞬で淘汰されてしまう。メンバーの属性が多様であるからこそ、バランスの取れた評価軸が生まれ、多様な意見や解決策を昇華できる「柔軟で強い組織」となるのだ。

⇒【後編】Butterfly Effectを起こすための「Choose to Challenge」

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執筆者

Diversity, Equity & Inclusion チーム

Diversity, Equity & Inclusion チーム

デロイト トーマツ グループ

「Diversity, Equity, & Inclusion(DEI)」を自社と顧客の成長を牽引し、社会変革へつなげていくための重要経営戦略の一つとして位置付けているデロイト トーマツ グループにおいて、ジェンダーやセクシャリティ、人種・民族、宗教や言語を含めた文化の違い、障がいなど、様々な「違い」を強みとするための施策を、経営層と一体となり幅広く立案・実行しているプロフェッショナルチーム。 関連するリンク デロイト トーマツ グループのDiversity, Equity & Inclusion