Posted: 22 Sep. 2021 2 min. read

第10回 最終回:今改めてモビリティー革命をリードする覚悟を持つ

【シリーズ】続・モビリティー革命2030

COVID-19により、生活者の意識と行動は大きく変化した。感染拡大を抑えるための「最小移動」「非接触・非過密」「足るを知る」というライフスタイルは、決して一時的なものではなく、新たな日常として広く社会に受容されていくようになる。モビリティー産業にとって、車両販売事業に対する短期的な業績インパクトは甚大であり、移動サービス事業においても総移動量そのものが減少する可能性が高い上、不特定多数が利用するサービスを避ける志向が高まることにより、しばらくはサービス需要が伸び悩むだろう。
一方で、近距離移動と物流の需要は増加が見込まれる。感染抑止の観点から、動態監視や無人自動運転技術への注目が高まるだろう。

本稿は2020年6月18日に日経xTECHに掲載された「続・2030年モビリティー革命を読み解く」を一部改訂したものです。https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01278/00011/

COVID-19はモビリティー革命を停滞させるか?加速させるか?

COVID-19の影響による世界経済の低迷とモビリティー産業プレイヤーの業績悪化は投資原資の縮小をもたらし、その結果新領域に対して投資が回らずモビリティー革命は停滞するのではないか、と考えるかもしれないが、実際にはモビリティー革命は加速すると見立てるべきだろう。
 

今求められているのはビジネスモデルのリ・デザイン

「100年に一度の大変革」の渦中にある自動車産業各社は、COVID-19が追い打ちをかけ、収益改善の絵姿を描く事が一層難しくなっている。
実際、ヒトの移動量が減少し、モノの移動量は増加が見込まれるものの、未知数の側面もある。しかしながら、例えば「車両数」や「移動量」ではなく、「移動量のコントロール」や「移動の先にある目的の達成」を基準とした課金モデルであれば、必ずしも需要が減少するとは言えないだろう。

 

人材は社内に眠っている

ビジネスモデルのリ・デザインを実現するためには、「移動のその先にある目的」との連結、自社単独ではなく「複数企業」「社会全体」との連結が求められる。これは、他社とのスペック競争ではなく、業界の枠組みを超えて社会や生活者が求めていることの本質にどれだけ迫ることができるかの挑戦であり、最も重要なことは、未知の事にチャレンジできる人材を社内で発掘する事である。

 

Think locally, Act regionally, Leverage globally

ビジネスモデルのリ・デザインを進めていくには、実現する単位である地域社会や企業の特性に合わせて個別に最適化する必要がある。一方で、違いはあれど、対処に当たり必要となるオペレーションや仕組みには共通部分があることも多い。それらの領域についてはグローバルレベルで最良の方法を特定し共通化を進めることで効率化が図れる。

 

レジリエンスの視点を加えた事業ポートフォリオマネジメント

ビジネスモデルのリ・デザインを進めるためには、マネジメントの在り方も見直す必要がある。
事業のポートフォリオを検討する際に、市場成長率と自社収益性の二軸で各事業を評価するのみではなく、社会変化に対する耐性や復元力の高さの視点を取り入れる必要がある。

 

モビリティー革命をリードする覚悟を持つ

高度な交通網と非常に高い要求水準を持つ市場でも日本企業には日本発の新しい価値を世界中に広めていくことに挑戦して頂きたいし、規制当局には取り組みの国際的な広がりを見据えて日本企業をバックアップして頂きたい。そのためには長期的なビジョンとディレクションが必要であり、産業に精通したスペシャリストの獲得・育成を図っていくことが必要だ。

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井出 潔/Kiyoshi Ide

井出 潔/Kiyoshi Ide

デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員

約20年のコンサルタントキャリアにおいて、コーポレートビジョン策定・浸透推進、事業戦略立案・実行推進、マーケティング戦略立案・実行推進、グローバル経営管理機能の強化・再構築、R&D領域のナレッジマネジメントスキーム構築、販売・アフターサービス領域のオペレーション改革、シェアードサービスセンターの設立・再構築など、戦略立案から現場変革まで様々なプロジェクトに従事。 製造業を中心に、特に自動車業界については自動車メーカー、自動車部品サプライヤー、販社・ディーラー、モビリティ関連など幅広い企業とのプロジェクト経験を有する。 20ヶ国以上でのプロジェクト経験や5年にわたる東南アジア駐在経験を活かして日本目線と非日本目線の融合、グローバル本社目線と現地法人目線の融合を図り、長年続く価値ある変革を世界中で実現させる事を目指して、日々の業務に取り組んでいる。 著書に『モビリティー革命2030 自動車産業の破壊と創造』(共著:日経BP社)、『自動車産業ASEAN攻略』(共著:日経BP社)がある。 関連サービス ・コンシューマー ・自動車 >>オンラインフォームよりお問い合わせ