ステークホールダー資本主義実現のため日本が活かすべき『実践知』 ブックマークが追加されました
ポストコロナの世界経済を表すキーワードの1つにステークホールダー資本主義がある。株主への配当を優先する株主資本主義とは異なり、企業は従業員、顧客、地域社会、環境などの幅広いステークホールダーに貢献すべきという概念だ。コロナ禍で経済格差や人種差別などの問題が国際的に顕著化し、世界経済の在り方そのものが問われるなか、株主資本主義からステークホールダー資本主義への変革が求められている。
世界経済フォーラム(WEF)はステークホールダー資本主義推進のため、「グレート・リセット」イニシアチブを各地域で進めている。今年1月には、私が作成に関わった、WEF・デロイト共同報告書「日本の視点:『実践知』を活かす新たな成長モデルの構築に向けて」が発表され、日本が今後推進すべき「グレート・リセット」のあり方が提言された。
その提言の中心となるのが「実践知」(Practical Wisdom)という概念だ。同報告書の作成にあたり、私を含むプロジェクトメンバーはWEFの日本リージョナルアクショングループに参加するビジネスリーダーをインタビューした。そこで聞かれたのは、日本企業は長年ステークホールダー資本主義を実践してきた、という声だ。日本には、三方よしや利他の精神等の理念の下、従業員、顧客、地域社会に配慮した中長期的経営を実践する知恵がある、というわけだ。
このような意見を基に、同報告書は、日本企業がこうした「実践知」を活かし、ステークホールダー資本主義をさらに推進するべきと提唱している。具体的には、サステナビリティや気候変動といった地球課題の解決を軸に据えたパーパス経営等が提言されている。
一方で、日本の「実践知」の対外発信という課題も挙げられた。三方よしのような暗黙知化した日本人にとっての当たり前を、どう形式知化して国際社会に伝えれば、日本の国際的プレゼンスが高まるのか。私はその答えが「近代日本資本主義の父」と評される渋沢栄一の教え(ドクトリン)の普及にあると考えている。(次回に続く)
※デロイト トーマツは世界経済フォーラムと協働し4つの柱からなる日本の「グレート・リセット」を発表しました。4つの柱とは意識のリセット、企業文化のリセット、経済のリセット、グローバルな連携・協力のフレームワークのリセットであり、詳細はこちらからご覧ください。