Posted: 29 Jan. 2021 3 min. read

ステークホールダー資本主義実現のため日本が活かすべき『実践知』

【シリーズ】日本のグレート・リセットを考える(1)

岐路に立つ世界経済

ポストコロナの世界経済を表すキーワードの1つにステークホールダー資本主義がある。株主への配当を優先する株主資本主義とは異なり、企業は従業員、顧客、地域社会、環境などの幅広いステークホールダーに貢献すべきという概念だ。コロナ禍で経済格差や人種差別などの問題が国際的に顕著化し、世界経済の在り方そのものが問われるなか、株主資本主義からステークホールダー資本主義への変革が求められている。

世界経済フォーラム(WEF)はステークホールダー資本主義推進のため、「グレート・リセット」イニシアチブを各地域で進めている。今年1月には、私が作成に関わった、WEF・デロイト共同報告書「日本の視点:『実践知』を活かす新たな成長モデルの構築に向けて」が発表され、日本が今後推進すべき「グレート・リセット」のあり方が提言された。

日本の「実践知」に基づくステークホールダー資本主義の推進

その提言の中心となるのが「実践知」(Practical Wisdom)という概念だ。同報告書の作成にあたり、私を含むプロジェクトメンバーはWEFの日本リージョナルアクショングループに参加するビジネスリーダーをインタビューした。そこで聞かれたのは、日本企業は長年ステークホールダー資本主義を実践してきた、という声だ。日本には、三方よしや利他の精神等の理念の下、従業員、顧客、地域社会に配慮した中長期的経営を実践する知恵がある、というわけだ。

このような意見を基に、同報告書は、日本企業がこうした「実践知」を活かし、ステークホールダー資本主義をさらに推進するべきと提唱している。具体的には、サステナビリティや気候変動といった地球課題の解決を軸に据えたパーパス経営等が提言されている。

一方で、日本の「実践知」の対外発信という課題も挙げられた。三方よしのような暗黙知化した日本人にとっての当たり前を、どう形式知化して国際社会に伝えれば、日本の国際的プレゼンスが高まるのか。私はその答えが「近代日本資本主義の父」と評される渋沢栄一の教え(ドクトリン)の普及にあると考えている。(次回に続く

 

※デロイト トーマツは世界経済フォーラムと協働し4つの柱からなる日本の「グレート・リセット」を発表しました。4つの柱とは意識のリセット、企業文化のリセット、経済のリセット、グローバルな連携・協力のフレームワークのリセットであり、詳細はこちらからご覧ください。

World Economic Forumレポート

4つの柱からなる日本の「グレート・リセット」を発表しました。4つの柱とは意識のリセット、企業文化のリセット、経済のリセット、グローバルな連携・協力のフレームワークのリセットです。

プロフェッショナル

南 大祐/Daisuke Minami

南 大祐/Daisuke Minami

デロイト トーマツ グループ

デロイトトーマツコンサルティング シニアコンサルタント ジョージワシントン大学ガストン・シガーアジア研究センター、アメリカンエンタープライズ研究所、キャノングローバル戦略研究所、早稲田大学にて、外交・安全保障政策、東アジア政治、日米中関係等の分析に従事。ジョージワシントン大学にて政治博士号を習得した後、デロイト トーマツ コンサルティングに参画。地政学的リスク分析、経済動向調査、サイバーセキュリティ戦略立案案件等を担当。 世界経済フォーラムのフェローとして、日本リージョナルアクショングループの活動を支援。世界経済フォーラム‐デロイトトーマツ共同報告書「日本の視点:『実践知』を活かす新たな成長モデルの構築に向けて」(2021年1月21日)の執筆に貢献。 The Japan Times、The Diplomat 、European Journal of International Relations等での執筆や、ジョージワシントン大学エリオットスクール国際関係大学院、米国務省外交官養成局等での講義多数。 代表的な執筆記事 "Why a ‘Phase One’ Deal Won’t Solve the US-China Trade War" The Diplomat(2019年12月13日) "Is Populism Finally Coming to Japan?" The Diplomat(2019年7月31日)(The Japan Timesに再掲載) "Abe and Modi: Nationalist Leaders versus Nationalist Leadership" the Rising Powers Initiative, the Sigur Center for Asian Studies(2014年12月)