Posted: 12 Apr. 2022 4 min. read

GX(グリーントランスフォーメーション):気候変動対応でみえてきた日本の勝ち筋

デロイト トーマツの唱えるGX(グリーン・トランスフォーメーション)=資源・エネルギーの循環によるレジリエンスの向上の必要性が現実のものに

昨年10月に「グリーン・トランスフォーメーション戦略(GX戦略)」を弊グループが発行して半年がたった。コンセプトは、「サーキュラーエコノミーを語らずして気候変動語るべからず」つまり、自給率に劣る日本において、気候変動問題を愚直に対応することはコスト負担でしかならず、経済成長を目指すには、資源の循環、つまりエネルギー・資源の自給率を上げ、国内にGDPを還元する仕組みの構築をうたったものである。

そのGX戦略は、日本のエネルギー・資源の自給率を上げ、レジリエンシーを高める取り組みになり国際競争力にも繋がるというコンセプトであった。それなりに好意的に受け止められたが、サーキュラーエコノミーが気候変動に必須であるという提唱は半信半疑でもあったと記憶している。

 

しかしながら、この半年の間で、気候変動を取り巻くグローバル環境は劇的に変化し、上述した、GX戦略の必要性が再認識された。

つまり、日本のエネルギー・資源の自給率を上げなければ、直近の資源エネルギー価格の不安定さから脱却できず、カーボンニュートラルの達成は不可能(どころではない)という認識が高まっているのである。

  • COP26にて各国のNDCの見直しにより1.5℃/カーボンニュートラルが更に近づく。脱化石燃料が鮮明化(2021年10月~11月)
  • 年度末からのウクライナ情勢の変化を踏まえて、資源エネルギー価格のボラティリティが高まり、それが社会の不安定さを生む状況に(2021年末~現在)
  • 非財務情報の開示が劇的に推進(米証券取引委員会(SEC)が上場企業への気候変動情報の開示の義務化のルール案を提案。国際会計基準の策定を推進するIFRS財団が非財務情報の開示案を発表)(2022年3月~)

社会への誠実性を図る気候変動に

また、社会の不安定さが高い環境の中で、世界全体で1.5℃目標を目指す気候変動対応が、優先順位の低下も想定された。

しかしながら、非財務情報の開示が推進つまり、社会は「よりESG等の“誠実性の高い”企業」を選ぶ仕組みの構築を推進した。この「気候変動が企業の“誠実性”をはかる指標の一つである」という流れは続くと考えている。

  Social Justice(社会正義) といった概念で示されるような、社会格差への強い対応も今後想定される中で、企業は社会に誠実に対応していくかがより強く問われる。

 

国内に目を向けてみると、この4月1日で複数の法律が施行された。一つは「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」であり、プラスチックの多量排出事業者への報告義務や、再資源化計画の認定制度が開始される。また、「地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律」も施行され、再エネの自治体での導入の推進や、算定・報告・公表制度の見直しが行われる。

このような日本の脱炭素の政策が法律から変化すると同時に、グローバル環境の劇的な変化の中で企業はどうあるべきか。

今までのように自社のカーボンニュートラルに向けて邁進するのも一つの方向性であるが、より視点を広く持ち社会に目を向け、社会の変化に適切に企業を適応・移行させていく、そのことで不安定で不確実性の高い社会の中で社会全体でのレジリエンスへの移行へ貢献し、企業の評価とレジリエンスを高めていくことが有益ではないか。

その一つが、GX戦略であり、サーキュラーエコノミーであり、企業の誠実性を図る気候変動開示の流れである。

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プロフェッショナル

丹羽 弘善/Hiroyoshi Niwa

丹羽 弘善/Hiroyoshi Niwa

デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員

気候変動、及び中央官庁業務に従事。製造業向けコンサルティング、環境ベンチャー、商社との排出権取引に関するジョイントベンチャーの立ち上げ、取締役を経て現職。 システム工学・金融工学を専門とし、政策提言、排出量取引スキームの構築、気候変動経営戦略業務に高度な専門性を有す。気候変動及び社会アジェンダの政策と経営戦略を基軸とした解決を目指し官民双方へのソリューションを提示している。   関連するサービス: ・ 政府・公共サービス ・ クライメート(気候変動)&サステナビリティ 関連記事: ・ 地球はこのままでは守れない──デロイト トーマツが考える「環境と経済の好循環」とは >> オンラインフォームよりお問い合わせ