Posted: 10 Jun. 2022 2 min. read

メタバースの可能性を広げる5つのビジネスシナリオ

企業のメタバースへの参入

メタバースが注目されています。それは他の先端技術との掛け合わせにより、新しい社会活動、経済活動の基盤になりうることが背景にあります。仮想世界では現実世界とは同じ所有の概念や権利を実現できないという指摘が従前からありました。デジタル空間においてオブジェクト(対象)は単なるデータであり、プログラムであり、物理空間のモノとは違ってその複製が容易であるからです。しかし、ブロックチェーンやそれに基づくNFTを用いて、ユーザーの購入や所得の証明をもたせることで、ユーザーの所有権を実世界と同じように保証し、仮想世界のリアリティを高めるという動き(=Web3)が起きています。これによりメタバースは幅広い領域から熱視線を受け、連日、国内外を問わず様々な企業が参入を表明しています。


ビジネスにおけるメタバースの活用

メタバースのビジネスへの適用やそこから得るベネフィットには、いくつかのパターンが考えられます。イメージしやすいものから紹介します。
 

一つ目は、メタバースのエンドユーザーに端末やサービスを提供するケースです。従来のヘッドマウントディスプレイ型以外のタイプが開発され、オンラインゲームやエンターテイメントコンテンツの盛り上がりにより広がる、ゲーム産業の知見が生かせる分野であろうと思います。


二つ目は、企業がメタバース上で商業活動をしたり、マーケティングや営業の場として利用したりするケースです。VRやAR技術を用いた没入型ショッピングや音楽や映像などのデジタルコンテンツの提供、コンサートデリバリーなどに加え、現実におけるテストマーケティングの代替として活用されることも考えられます。新車の試乗、新しいモデル住宅の内覧をメタバース上で行ったり、さらにB2C領域だけでなく、B2Bの営業のフィールドとしての活用もあります。展示会のメタバース化はイメージしやすい応用です。


三つ目は、企業が研修の場として活用するケースです。イベントやキャンペーンのオペレーションの確認、地震や火事における救急活動の訓練等があります。メタバース上で多人数が参加して行うことで効率も効果も高まることが考えられます。

これらのメタバースの活用パターンを踏襲しつつ、さらに産業における大規模な適用シナリオとして四つ目、五つ目を紹介します。


四つ目は、メタバース上で、新しい製品開発を行っていくケースです。例えば、オートノマスカー(自動運転車)を実現するAIの開発です。安全かつ高性能なオートノマスカーの開発においては、AIに安全な自律制御を学習してもらう必要があります。これには大量の走行データに加えて、大量の事故データも必要となってきます。しかし、そのデータを作るために実際に車を走らせて沢山の事故を起こすとしたらそのコストは計り知れないものになります。そこで、精巧なシミュレーション環境で自動車を走行させ、多様な事故を起こし、AIが学習するためのデータを収集します。現在、オートノマスカーに限らず、ドローンやUGV、また様々なロボットに搭載するAIの開発においては、シミュレーションにてデータを生成・収集することが基本となっています。メタバースの現在のブームは、企業が様々な製品開発においてシミュレーション環境を活用していく起爆剤になる可能性があります。


五つ目は、四つ目の発展型です。大規模なデジタルツイン・環境シミュレーションを実現するためのツール、プラットフォームとしてのメタバースの活用です。自動車、飛行機、工場、ビル、橋、都市の複製をメタバース上に構築し、実際に物理的な変更を加える前にデジタルツインでの最適な変更をシミュレーションすることで、開発や変更、リソースの再配置にかかるコストを下げ、効率性および品質を向上させます。スケールを大きくして、都市の交通やエネルギーの最適化、地域における災害対策、さらには地球環境そのもののデジタルツインを実現して気候変動に対するアクションを考えていくことも視野に入ります。

メタバースの広がりとガバナンス・倫理

このようにメタバースによるビジネス機会は幅広く捉えていくことが大切です。その実現にはまだまだ様々な技術的進化やチャレンジが必要になると思われますが、すでに多くの試みは動き出しています。多様なユースケースの準備や関連サービスを推進して、今後の戦略に資するアクションをとっていくことが重要です。それと同時に、メタバースにおける安心・安全の確保が重要になってきます。例えば、特定の企業やサービスに依存しないアイデンティティ管理の実現やNFTも含めたシステムのガバナンス、現実空間と紐づくプライバシーの保護、そして表現力の豊富さからの差別や倫理的問題の懸念等の課題が指摘されています。ガバナンスや倫理フレームワークの有り様に関してはメタバースのトレンドの拡大とともにより議論されていくことになるでしょう。

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森 正弥/Masaya Mori

森 正弥/Masaya Mori

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デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員 外資系コンサルティング会社、グローバルインターネット企業を経て現職。 ECや金融における先端技術を活用した新規事業創出、大規模組織マネジメントに従事。世界各国の研究開発を指揮していた経験からDX立案・遂行、ビッグデータ、AI、IoT、5Gのビジネス活用に強みを持つ。CDO直下の1200人規模のDX組織構築・推進の実績を有する。2019年に翻訳AI の開発で日経ディープラーニングビジネス活用アワード 優秀賞を受賞。 東北大学 特任教授。日本ディープラーニング協会 顧問、企業情報化協会 AI&ロボティクス研究会委員長。過去に、情報処理学会アドバイザリーボード、経済産業省技術開発プロジェクト評価委員、CIO育成委員会委員等を歴任。 著書に『クラウド大全』(共著:日経BP社)、『ウェブ大変化 パワーシフトの始まり』(近代セールス社)、『大前研一 AI&フィンテック大全』(共著:プレジデント社)がある。 記事:デロイトデジタル「新しい世界へのマーケティングは、人とAIのコラボレーションによりもたらされる」 関連サービス ・ カスタマー・マーケティング(ナレッジ・サービス一覧はこちら) >> オンラインフォームよりお問い合わせ