Posted: 31 Jul. 2023 3 min. read

SDGs教育の潮流と、子ども達に必要な力「エージェンシー」

2023年7月、日本に住む三人の子ども達が米ニューヨークの国連本部を訪れ、キッズアンバサダーとして世界平和の実現に向けて発表を行った。

これは、一般財団法人が運営する「国連を支える世界こども未来会議」の発表イベント*1だ。今年3月に日本で開催した会議において、子ども達が「平和な世界を実現するために何が必要か?」を話し合い、その結論をまとめたアイデアブックを国連に提出した。



このプロジェクトは、子ども達のSDGs教育の実践機会としてとても良い経験だ。

 

日本はSDGs教育について比較的早くから始めており、2002年にESD(Education for Sustainable Development:持続可能な社会の創り手を育む教育)を世界首脳会議で初めて提唱して以来、環境教育に取り組み、更に2020年度の学習指導要領では「持続可能な社会の創り手の育成」が明記され、既に公教育に取り入れられている。

実際に、小学1~6年生を対象にした調査*2 では、SDGsの認知度は学年が上がるほど高く(例えば6年生で75%が認識)、更に「地球の未来に危機感を持っている」と答えた子どもは全体の85%にのぼり確実に意識は高まっている。

 

SDGsのターゲット年は2030年だが、これから未来をリードしていく子ども達に必要な力はどのようなものだろうか。

最近、教育関係者の間で注目されている概念として、「エージェンシー」がある。「エージェンシー」とは、OECDが2019年に提唱*3 したもので、「変化を起こすために、自分で主体的に目標を設定し、責任をもって行動する能力」のことを指す。日本では「主体性」や「当事者意識」と言い換えられることもある。

実際に日本の公立学校でも、主体性を重視した教育は実践されており、ある公立小学校(杉並区立西田小学校)では、卒業生、教職員、地域住民等の外部の人を巻き込み児童と一緒に議論する機会を作り、その中で児童が考案したSDGsアイデアを企業が商品化する成功例も生まれている。

実は、そうした取り組みの過程で、小学生から衝撃的な意見が挙がった事実がある。それは「社会課題を作った大人の側は何をしているのか」という声だ。このことは、子どもが課題解決の力を養うほど大人側の責任がより浮かび上がってくることを示唆している。

 

これから、子ども達のSDGs教育の効果を挙げるには、子どもの意見を受け止められる“大人側のエージェンシー”をより高めてゆく必要がある。

そのためには、大人が社会課題解決の主体となって子ども達との接点を積極的に作ること、更にそれを積極的に評価する社会の仕組みをつくっていくことが大事だ。

具体的には、一部の企業では従業員がSDGs教材開発や出張授業を行う例や、SDGs教育を行う約100校に対して金銭面で支援する銀行の例も出始めている。こうした企業を増やすと共に、資本市場も取り組む企業を評価する仕組みを作ることも必要だ。

 

大人が率先して課題解決に取り組み、その姿を見て子どもが学ぶ―この好循環を作ることで、日本の教育の質が上がり子どもの未来が開ける展開になることを期待する。

 

※本稿は、2023年7月21日のフジテレビ系列「FNN Live News α」出演時のコメントを基に再構成しています。

 

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松江 英夫/Hideo Matsue

松江 英夫/Hideo Matsue

デロイト トーマツ グループ CETL(Chief Executive Thought Leader)、デロイト トーマツ インスティテュート(DTI)代表

デロイト トーマツ合同会社 デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 パートナー 中央大学ビジネススクール 客員教授 事業構想大学院大学 客員教授 経済同友会 幹事 国際戦略経営研究学会 常任理事 フジテレビ系列 報道番組「Live News α」コメンテーター(金曜日) 経済産業省 「成長志向型の資源自律経済デザイン研究会」 委員 経営戦略及び組織変革、経済政策が専門、産官学メディアにおいて多様な経験を有する。 (主な著書) 「「脱・自前」の日本成長戦略」(新潮社・新潮新書 2022年5月) 『両極化時代のデジタル経営—共著:ポストコロナを生き抜くビジネスの未来図』(ダイヤモンド社.2020年) 「自己変革の経営戦略」(ダイヤモンド社.2015年) 「ポストM&A成功戦略」(ダイヤモンド社.2008年) 「クロスボーダーM&A成功戦略」(ダイヤモンド社 2012年: 共著) など多数。 (職歴) 1995年4月 トーマツ コンサルティング株式会社(現デロイト トーマツ コンサルティング合同会社)入社 2004年4月 同社 業務執行社員(パートナー)就任 2018年6月 デロイト トーマツ グループ CSO 就任 2018年10月 デロイト トーマツ インスティテュート(DTI)代表 就任(現任) 2022年6月 デロイト トーマツ グループ CETL 就任(現任) 2012年4月 中央大学ビジネススクール客員教授就任(現任) 2015年4月 事業構想大学院大学客員教授就任(現任) 2021年1月 特定非営利活動法人アイ・エス・エル(ISL) ファカルティ就任(現任) 2018年10月 フジテレビ「Live News α」 コメンテーター(現任) (公歴) 2022年10月 経済産業省 「成長志向型の資源自律経済デザイン研究会」 委員就任(現任) 2020年12月 経済産業省 「スマートかつ強靱な地域経済社会の実現に向けた研究会」委員就任 2018年1月 経済産業省 「我が国企業による海外M&A研究会」委員就任 2019年5月 経済同友会幹事(現任) 2022年10月 国際経営戦略学会 常任理事(現任)